Mail Magazine for L.S. students issued by JELF
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■□■ ECO Tama ■□■ 13号   2008.1月〜2008.3月
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*JELF は、法的手段によって環境保護運動を進める、全国約500名 の弁護
 士によって構成されている環境保護団体です。
 ECO Tama=「エコ たま」とは、エコロジー・ロイヤーのたまごたちという
 意味。環境問題に対する関心を共通項として集まった仲間の情報交流メルマ
 ガです。 ECO Tamaは、ロースクール生の皆さんに有用な情報を提供するため
 JELFから無料でお届けします。

*ECO Tama は、3ヶ月ごとにお届けします。

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□■□ CONTENTS □■□

□ 新司法試験の環境法の論点 − 環境影響評価法について
    新61期司法修習生 木村 夏美

□ 海上町産業廃棄物最終処分場許可処分取消請求事件
              弁護士 及川智志 (千葉県弁護士会)

□ 司法修習生・ロースクール生向けの講演会開催!
参加者の感想     新61期司法修習生 枝川充志
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□■□ 新司法試験の環境法の論点
−環境影響評価法について □■□
                    新61期司法修習生  木村 夏美

 環境影響評価法においては「代替案」というのがキーワードになっている気が
します。環境影響評価法は、環境の保全についての適正な配慮の確保と、国民の
健康で文化的な生活の確保を目的としているので、アセスメントは漫然と行われ
るべきものではなく、環境への影響を抑えるために役立つものでなくてはならな
いと考えられます。そこから、いかに環境負荷の低い「代替案」を考案できるか、
ということを巡って論点が見つかるように思われます。

まず、アセスメントの実施主体は原則として事業主ですが(1条)、ここからそ
もそも事業を行わないというゼロ・オプション、あるいはノー・アクションとい
う代替案を期待できないという問題があります。また、事業主実施の重要な例外
として都市計画特例(39条)がありますが、そこでは実施主体である知事は、ア
セスメント主体と環境保全という利益を代表すべき地域代表という二役を演じな
ければならないことになってしまうという問題点があります。環境保全に最も強
い関心を持つであろう住民の参加の手続は確保されているのかも問題となります。

きめ細かなアセスメント実施のための技術としてスクリーニング(2条)、スコー
ピング(5条〜11条)がありますが、果たして十分なのかが問題になると思います。

代替案に直接関係する問題点として以下のことがいえると思います。準備書につ
いての記載事項である14条1項ロ括弧書きは代替案の検討を義務づけたものといえ
るのか。いえるとした場合、どこまでの代替案を検討すべきなのか。環境影響評
価法のもとでは、事業に大きな変更を加えるような代替案は別の事業とされ方法
書の作成の段階まで手続が戻ることになる(21条1項1号)が、これが障害となる
のではないか。

以上のように、現在の環境影響評価法においては代替案考慮の仕組みが十分では
ないのではないか、という問題意識から戦略的環境アセスメント、という考え方が
注目されています。

また、環境影響評価法は処分性、取消訴訟(33条の横断条項関係で)など行政訴
訟との関係での論点がいくつかあります。小田急高架化最高裁判決(最判2005・12
・7)においての環境影響評価条例と原告適格の関係は当然重要だと思います。


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□■□ 海上町産業廃棄物最終処分場許可処分取消請求事件 □■□
弁護士 及川智志 (千葉県弁護士会)


 産業廃棄物最終処分場に対する千葉県の許可取消しを求めた行政訴訟において、
平成19年8月21日全国発の最終処分場許可処分取消判決が下された(千葉地裁)。
また、これに先立ち本件処分場の建設・操業等の差止を求めた民事訴訟においても
千葉地裁において差止を命じる住民勝訴判決が下されている(平成19年1月31日)。

本件記事と同処分場についての建設・操業差し止め請求事件については・・・
→行政訴訟 :「海上町産業廃棄物最終処分場許可処分取消請求事件」
       (「環境と正義」2007年11月 第104号)
       「1.本件の経緯 平成13年5月、房総半島東部地域に位置する海上町
        (現旭市)に住む住民ら7名が訴訟を提起した。千葉県が設置を許可
         した産業廃棄物最終処分場の許可取消しを求める行政訴訟である。
         ・・・」 つづきはこちら(↓)

http://www.jelf-justice.org/ecotama13-unakami-gyousei.htm

→民事訴訟 :「海上町産業廃棄物最終処分場建設・操業差し止め請求事件」
       (「環境と正義」2007年12月 第105号)
「1.本訴、行訴と連勝 前回の拙稿において、海上町
        (現千葉県旭市)産業廃棄物最終処分場についての行政訴訟
        勝利報告をさせていただいた。全国で初めて最終処分場の設置
        許可取消しを命じた画期的な判決であった。
         実は、この判決に先立つ本年1月31日、本件処分場の建設・
        操業等の差止を命じる住民訴訟判決を出していた。千葉地裁
        では、民訴、行訴の連勝だったのである。・・・」 つづきはこちら(↓)

http://www.jelf-justice.org/ecotama13-unakami-minji.htm

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□■□ 司法修習生・ロースクール生向けの講演会開催! □■□

講演会in 大阪 ==========================

講師:弁護士 村松昭夫(大阪弁護士会所属・公害弁連副幹事長・
             日本環境法律家連盟理事)
「公害環境訴訟と弁護士の役割」

去る2007年10月26日の金曜日、司法修習生・ロースクール生向けに「公害環境裁判と
弁護士の役割」をテーマとした、村松昭夫弁護士の講演が行われました。新・旧修習
生を含む9名が参加し、予定していた2時間の講演が3時間に延長されるほどの盛り
上がりをみせました。

大学教授でもある村松弁護士は、まずご自身が今まで取り扱ってきた公害訴訟を紹介
し、公害訴訟の現状、類型とその特徴などを説明されました。さらに、公害訴訟の歴史
を振り返り、公害訴訟と公害賠償理論の歩みを紹介して、公害問題を見る視点と公害裁
判における弁護士の役割を詳細に解説されました。

講演後の質問時間では、参加者の皆さんが、公害弁護団の形成の経緯や公害訴訟に携
わった理由などについて熱心に質問され、非常に充実した内容となりました。

修習生の皆さんにとっては、公害訴訟弁護士の業務内容にとどまらず、公害訴訟の意
義や仕事と生活の両立についてなど、普段は窺い知ることのできない話が聞けて、満足
度の高い講演会だったようです。

経験豊富な現役弁護士と直接対話できる良い機会ですので、今回の講演会に参加でき
なかった皆さんも、次回の講演会には是非ご参加ください。

JELF大阪事務局


講演会in名古屋 ==========================

講師:弁護士 村田正人(三重県弁護士会・日本環境法律家連盟 代表理事)
  「石原産業フェロシルト不法投棄事件をめぐって企業の環境コンプライアンス
を目指す」

 環境訴訟とは、生きとし生けるものすべての、自らの生存をかけた“権利のための闘争”
である――――。去る10月27日(土)、環境問題をはじめとして幅広いご活躍をされ
ている村田正人弁護士のお話を伺い、私はそんな思いを抱きました。
 村田弁護士のお話は、自らが関与された、ダイオキシン類が発生する焼却施設の操業禁
止の仮処分命令の申立てが認められた事件(津地決平成11年2月24日判時1706.
99、百選掲載)を皮切りに、廃棄物処理法や行政事件訴訟法の活用の仕方を絡めつつ多
岐にわたる事件に及びました。加えてテレビ放映された事件のビデオ上映もなされました。
それは、業者による野焼き、これに続く焼却炉の操業、そこから発生する煙やガスで生活
健康被害を被った夫婦の存在、それぞれへの村田弁護士の対応、そして地域における運動
を通じた問題解決を描くものでした。
 また、企業による食の安全や信頼が揺らいでいる昨今、企業による環境破壊もまた“手
を変え品を変え”顕在化しています。その中で、最近大きな問題となっているフェロシル
ト事件について、企業のコンプライアンスの観点からの株主代表訴訟の活用、産廃業者の
脱法的取引の実態などについてのお話もありました。
 このように、勉強会を通じて弁護士の環境問題への取組み方・視点の一端を垣間見るこ
とができた思いがします。また村田弁護士の淡々とそして老練さを感じさせるお話ぶりか
ら、弁護士は生存をかけた“闘争”を座視しているわけにはいかない、そんな心意気を感
じることができました。そして私自身、引き続き刻苦勉励しつつ、このような境地に一日
でも早く近づければと思った次第です。
新第61期司法修習生 枝川充志



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