2017年5月2日、JELFは「辺野古新基地建設に係る埋立て工事の強行に対する抗議声明」を提出いたしました。この声明に関し52団体からの賛同がありました。
賛同団体一覧を添付した意見書は、文末PDFファイルよりご確認下さい。
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内閣総理大臣 安倍 晋三 殿
防衛大臣 稲田 朋美 殿
国土交通大臣 石井 啓一 殿
辺野古新基地建設に係る埋立工事の強行に対する抗議声明
2017年5月2日
日本環境法律家連盟(JELF)
名古屋市中村区椿町15-19 学校法人秋田学園名駅ビル2階
代表理事 弁護士 池田直樹
1 2017年4月25日,沖縄防衛局,沖縄県名護市辺野古の新基地建設に向け,沿岸部を埋め立てる護岸工事に着手した。いったん工事が開始され,大量の石材や土砂などが海に投下されれば,ジュゴンやウミガメをはじめとする辺野古・大浦湾周辺の貴重な生態系及び自然環境は破滅的な損害を受け,その原状回復は困難となる。当連盟は,かかる埋立工事の強行に対し強く抗議する。
2 辺野古の公有水面埋立申請に関して国が行った環境影響評価手続の問題点や,新基地建設が沖縄の民意に反し地方自治を破壊するものであることは,当連盟が2016年2月17日に発表した「辺野古新基地建設に係る沖縄県知事の埋立承認の取消しを強く支持し,これに対する国の対抗手段に抗議する意見書」で指摘したとおりであり,その趣旨は現在でも当てはまる。
2017年4月に行われた世論調査でも新基地建設に対して反対の立場が60%を超えており,新基地建設は明らかに沖縄県民の民意に反する。それにもかかわらず,また,現在,翁長知事が国に対して協議を呼びかけているにもかかわらず,これらを殊更に無視し,周辺住民が様々な被害を被る基地の建設を住民の同意なく国が一方的に強行することは,民主国家としてあるまじき暴挙といわざるを得ない。
2017年3月には,沖縄本島の沿岸で,国内の生息は3頭だけと考えられている絶滅危惧種ジュゴンの新たな個体の目撃情報があった。当該情報が正しければ,沖縄で繁殖した可能性が高く,絶滅回避に大きな意味を持つことになる。この点について何ら調査を行わず,不可逆的にその生息地を破壊することになる本件埋立工事を進めることは,到底許されるものではない。
3 米国政府を被告としてサンフランシスコ連邦地裁に提訴された沖縄ジュゴン米国訴訟においては,辺野古新基地建設が,National Historic Preservation Act(NHPA 国家歴史保存法)と同等の内容をもつ日本の文化財保護法において天然記念物に指定されている沖縄ジュゴンに影響するため,NHPA違反となるか否かが争点となっている。そして,同地裁は,2008年1月,ジュゴンへの影響を適切に配慮せずに辺野古新基地建設を進めることはNHPA上の配慮手続を遵守しておらず,NHPAに違反するとして,米国政府に対しNHPAの遵守を命じている。
その後,同地裁は,裁判官の交代を経て,原告の請求を却下する判決を下したものの,現在係属中の米国第9巡回控訴裁判所は,2017年3月に開かれた口頭弁論(Hearing)において,辺野古新基地建設にあたってジュゴンへの影響が適切に配慮されているかについて本案審理の対象とすべきとの積極的な態度を示している。したがって,今後,改めて,米国政府が辺野古新基地建設にあたってジュゴンへの影響を適切に配慮しているか,NHPA上の配慮手続を遵守しているかについて審理される予定である。
米国の裁判所において上記のような審理がなされている状況であるにもかかわらず,辺野古新基地建設に係る埋立工事を強行することは,NHPAの趣旨である文化財保護の見地からも許されるものではない。
4 以上のように,いったん埋立工事が開始され,大量の石材や土砂などが海に投下されれば,辺野古・大浦湾周辺の貴重な生態系及び自然環境は破滅的な損害を受け,その原状回復は困難となる。それにもかかわらず,辺野古新基地建設に向け,埋立工事を強行する日本政府に対し,当連盟は,強く抗議する。
以上