一般社団法人JELF(日本環境法律家連盟)は、2023年3月2日、FoE Japanが呼びかけておられる【要請書】日本の「ゼロエミッション」戦略はまやかし – 日本は「誤った気候変動対策」ではなく、化石燃料からの公正かつ公平な移行を支援すべき。に、団体賛同しました。
水素アンモニア混焼など、「誤った」気候変動対策の推進を止めるよう、JELFを含む世界18カ国140団体からの要請書(原文英語)が、岸田文雄首相に(原文英語)を提出しました。
提出された要請文の日本語訳版を添付します。この要請書に関する詳しい情報は、こちらのHPをご確認ください。
→ 日本語:https://foejapan.org/issue/20230302/11703/
→ 英 語:https://foejapan.org/en/issue/20230301/11708/
【要請書】日本の「ゼロエミッション」戦略はまやかし – 日本は「誤った気候変動対策」ではなく、化石燃料からの公正かつ公平な移行を支援すべき
内閣総理大臣 岸田文雄様
私たちは、3月4日に東京で開催されるアジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)閣僚会合で、日本政府が化石燃料の利用を促進・拡大しようとしていることに深い懸念を抱いています。このイニシアティブは、アジア各国における脱炭素化を推進し、エネルギー移行に協力することを目的としています。脱炭素化とは、化石燃料を段階的に削減することでなければなりません。しかし、日本は毎年100億ドル以上を海外における新規の化石燃料事業の開発に投じ、化石燃料の寿命を遠い先の未来まで延ばすような誤った気候変動対策を推進しています。
パキスタンでの大洪水からフィリピンでの超大型台風まで、異常気象が地球を襲い続けています。気候危機が日々深刻化する中、私たちは迅速に、公正に、そして公平に化石燃料から移行しなければなりません。世界で最も裕福な国のひとつであり、気候危機をもたらした責任が最も大きい国の一つである日本には、化石燃料への支援をやめ、各国がクリーンなエネルギーに移行するのを支援する責任があります。
したがって、私たちは岸田総理に対し、アジア地域における有意義で公正かつ公平なエネルギー移行を確保するため、以下の点を約束するよう求めます。
1.まずは日本から、石炭の使用を完全に廃止する
日本は、2030年までに石炭の使用を全廃することを約束しなければなりません。気候科学によれば、パリ協定の目標を達成するためには先進国は2030年までに、その他の国は2040年までに石炭の使用を廃止する必要があります。しかし、日本は未だに国内で新規石炭火力発電所を建設、計画しています。日本が海外の新規石炭火力発電事業への投融資を停止したのはごく最近のことであり、未だに建設中で2040年以降も稼働する見込みの発電所もあります。日本は、2030年までに石炭の使用を全廃することを約束すべきです。
2. G7での合意を守り、化石燃料への国際的な公的融資を停止する
石油・ガスの拡張はエネルギーセクターのネットゼロ経路と整合しません。2022年、G7首脳は「2022年末までに排出削減対策の講じられていない化石燃料エネルギーセクターへの政府による新規の国際的な直接支援を終了することを約束する」と合意しました。 しかし、日本政府はこの約束の実行に向けた取り組みにおいて全くと言っていいほど進捗を見せておらず、世界有数の化石燃料融資国であり続け、ガスを移行燃料として推進さえしています。日本が石炭、ガス、石油への融資を止めるよう、私たちは強く求めます。
さらに、日本は化石燃料に大きく依存した「脱炭素化」計画を策定することで他国のエネルギー移行を妨げようとしていますが、これは止めるべきです。例えば国際協力機構(JICA)は、技術協力の一環としてバングラデシュ等の国の電力マスタープランを作成中です。このような公的支援を通じて、日本はカーボンニュートラルを支援するという名目で、他のアジア諸国に対して化石燃料を使った技術を推進しているのです。こうした日本の策略は、1.5℃目標に沿うものではなく、各国の化石燃料依存が深まるだけです。
3. 誤った気候変動対策の推進をやめる
アジアの脱炭素化に関して日本政府が強力に推進しているのは、火力発電所におけるアンモニア、水素、バイオマス混焼です。現在、アンモニアと水素の大部分は化石燃料に由来し、多大な温室効果ガスを排出しています。日本は2030年までに国内の石炭火力発電所でアンモニアを20%混焼することを目標にしていますが、その場合、通常のガス火力発電所に比べて温室効果ガス排出量が2倍近くになります。また、アンモニア混焼率が50%でも、ガス火力発電と同程度の排出量となります。さらに専門家は、ブルー水素混焼が従来のガス火力発電よりも多くの温室効果ガスを排出すると指摘しています。日本はまた、炭素回収・貯留技術(CCS)に多額の投資を行っていますが、これはコストが高く技術的に困難で、温室効果ガス排出の削減にも効果的でないと評価されています。こうした二酸化炭素排出量も多くリスクも高い技術は、化石燃料の延命を図るものに過ぎません。
4. 再生可能エネルギーへの公正かつ公平な移行のための支援を強化する
日本が化石燃料に毎年平均100億ドル以上を費やす一方で、再生可能エネルギー事業にはその8分の1にあたる年間平均13億ドルしか投じられていません。私たちは日本政府に対し、化石燃料への投融資や誤った気候変動対策の推進をやめ、コミュニティのニーズを満たし、人権を尊重する、またパリ協定の目標に沿ったクリーンエネルギーへの支援を強化することを求めます。
以 上
賛同団体 18か国140団体