2022年6月207日、JELFも賛同したNGO共同要請書「(仮称)石垣リゾート&コミュニティ計画」に対する緊急要請書」が、提出されました。
この取り組みの詳細は、以下のリンクをご参照下さい。
https://www.wwf.or.jp/activities/statement/5062.html
以下、この取り組みを取りまとめてくださったWWFジャパンのHPから文章を転載します。
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沖縄県知事 玉城 康裕 殿
石垣市長 中山 義隆 殿
株式会社ユニマットプレシャス 代表取締役社長 髙橋 洋二 殿
(同報)環境大臣 山口 壯 殿
(同報)経済産業大臣 萩生田 光一 殿
(同報)農林水産大臣 金子 原二郎 殿
石垣島エコツーリズム協会 会長 谷崎 樹生
一般社団法人JELF(日本環境法律家連盟) 理事長 弁護士 池田 直樹
いのちと暮らしを守るオバーたちの会 代表 山里 節子
カンムリワシ・リサーチ 代表 小林 孝
公益財団法人世界自然保護基金(WWF)ジャパン 会長 末吉 竹二郎
公益財団法人日本自然保護協会 理事長 亀山 章
公益財団法人日本野鳥の会 理事長 遠藤 孝一
日本湿地ネットワーク(JAWAN ) 代表 牛野 くみ子
八重山ネイチャーエージェンシー 代表 高木 理恵
ラムサール・ネットワーク日本 共同代表 金井 裕・永井 光弘
我がーやいまの自然環境を考える会 会長 宮城 信博
(以上、五十音順。団体印省略。)
2021年12月16日付け11団体による「『(仮称)石垣リゾート&コミュニティ計画』に関する要請書」で必要な環境保全策が講じられること等を要請しておりました標記計画(以下「本件計画」)に関して、沖縄県は、地域経済牽引事業の促進による地域の成長発展の基盤強化に関する法律(以下「地域未来投資促進法」)に基づき株式会社ユニマットプレシャス(以下「ユニマット社」)が提出した「地域経済牽引事業計画」を2022年3月22日付けで承認しました(以下「本件承認」)。
本件計画の用地は、亜熱帯性の貴重な自然景観である前勢岳やバンナ岳に隣接し、日本最南端のラムサール条約湿地である名蔵アンパル及び名蔵湾の上流に位置し水系を通じて強い連関性があり、カンムリワシ、ヤエヤマセマルハコガメ、サキシマキノボリトカゲ、 キバラヨシノボリ、ヒョウモンドジョウ等絶滅が危惧されている希少な野生生物の生息地になっていることから、本件計画に対しては生物多様性への配慮が特に強く求められています。
本件承認後に情報公開請求により開示された公文書によれば、沖縄県は、地域住民等から特に懸念が示されている「名蔵アンパル」「名蔵湾」「カンムリワシ」「地下水」への影響に関して、ユニマット社は「一部未対応」と評価しており、また「農薬」「赤土等の流出」に関しても今後の状況を踏まえて「計画の見直し」等を求めていくことを示していました。かかる沖縄県の評価にもかかわらず、本件承認が行われたことは極めて遺憾といわざるを得ません。
加えて、本件承認には、環境保全に関する沖縄県の「意見」が付されており、石垣市及びユニマット社側には、本件計画を実施するためには、この「意見」で指摘されている森林法及び農地法の手続きを適正に履践していくことが求められています。
さらに本件計画の用地には、石垣市が所有する土地が含まれており、これがユニマット社へ提供されるに至った経緯や手続きが不透明な状況です。また、この石垣市所有地のユニマット社への供与や本件計画で建設が予定されているリゾート施設からの光害によって、石垣市民の自然体験や憩いの場として親しまれている市民の森、ヤエヤマホタル観察地、星空観察会が行われている石垣天文台の利用に対しても深刻な影響が懸念されています。また本件計画は、石垣島の伝統的な景観を大規模かつ本質的に改変するものであり、景観保全の観点からも容認できるものではありません。
本件計画への対応では、世界自然遺産の登録地として南西諸島の自然の価値が国際的にも注目される中で、日本としての貴重な自然環境の保全とその持続可能な利用に取り組む姿勢が問われていることを、官民全ての関係者が強く認識すべきであると考えます。
本件承認後、本件計画に関する諸手続きが急速に進行している状況を受け、下記の事項を緊急に要請いたします。ご高配を賜りますようよろしくお願い申し上げます。
沖縄県に対しては、
1. 地域住民等による本件承認に対する行政不服申立について、慎重に審理を行い、本件承諾の取り消しを含む適切な措置を早急に講じること
2. 本件計画に関して、石垣市及びユニマット社に対し、次の項目に関する必要な調査及び環境配慮策が実施されるように、具体的で実効性のある指示監督を行うこと
① カンムリワシへの影響
本件計画の用地内及びその周辺地域では、国の特別天然記念物で種の保存法の国内希少野生動植物種であるカンムリワシの採餌及び繁殖行動が確認されている。沖縄県は、カンムリワシの生息地に関するユニマット社の「調査が対象事業実施区域及びその周辺を網羅したものとなっているか疑義が残る。求愛期における工事の中止がなされない」と評価しており、カンムリワシの生息・繁殖への影響に関して、環境省の猛禽類保護の進め方に準じて適切な科学的調査及び評価を早急に実施し、それを踏まえて工事および施設共用によるカンムリワシの生息地の改変及び影響の回避・低減策を講じる必要がある。
② 名蔵アンパル・名蔵湾への影響
本件計画による水系を通じた名蔵アンパル及び名蔵湾への影響に関して、沖縄県は「名蔵アンパルの動植物・生態系について調査がなされておらず、事後調査も実施されない。」「名蔵湾の海域生物に係る事後調査が実施されない」点でユニマット社は「一部未対応」と評価している。これらの調査が科学的根拠に基づき適正に実施されるように、具体的な調査計画の提出等をユニマット社に求めることが必要である。
③ 地下水の利用
本件計画では、1日約1000トンの水を消費し、その約7割を地下水で賄うとされているところ、かかる大量かつ継続的な地下水の利用による名蔵アンパル及び周辺地域の農地、地域社会、生態系に対する深刻な影響があることが見込まれる。沖縄県は、ユニマット社が「地下水の塩水化に係る予測・評価」を実施していないと評価しており、これらの影響に関する事前のシミュレーションを含む慎重な調査・予測が必要である。
④ 農薬・赤土等の流出の影響
本件計画では、ゴルフ場の維持管理のためネオニコチノイド系の農薬を含む複数種類の農薬を継続的に使用するとされているが、農薬の流出への具体的対策が不十分である。赤土等の流出に対しても、予防措置に関する慎重な確認が求められる。
3. 本件承認がされたユニマット社作成の地域経済牽引事業計画に対して、情報公開請求による公文書開示が行われたが、本件承認の要件である地域への「経済効果」の内容及び算定根拠に係る数値が非開示とされたことから、これらを検証できない状況である。地域への「経済効果」の有無は、本件計画に地域未来投資促進法が適用される要件として市民に開示するべき重要な情報であり、この非開示決定に対する行政不服審査請求について、早急に審査を行い、石垣市民に帰属する利益の内容、金額及びその算定根拠に関する情報の開示が早急に行われる必要がある。
4. 本件計画を実施する際に必要となる農地法に基づく沖縄県の審査を慎重に行い、上記2.で述べた必要な環境保全措置及び地下水の利用等による周辺農地への影響がないことが確認できない場合は、本件計画に係る農業振興地域変更(農振除外)及び農地転用をいずれも許可しないこと
5. これらの要請事項に対して可及的速やかに回答すること
を要請する。
石垣市に対しては、
1. 上記沖縄県に対する要請2.①から④の各項目の調査及び環境保全措置の実施をユニマット社に指示し、その実施を監督し、これらの指示及び監督の具体的内容を市民に開示・説明すること
2. 本件計画の用地に含まれる農地に関する農地法に基づく農業振興地域変更(農振除外)及び農地転用の審査において、地下水の利用や排水等による周辺農地に対する影響を慎重に確認すること
3. 上記2.に係る市農業委員会における審議の際は、本要請書の内容を含む関連情報を農業委員に提供することとともに、農業委員の欠員を補充した上で適正な意見のとりまとめを行うこと
4. 本件計画の用地に含まれる市所有地の取扱いについて地域住民に対し説明すること
5. 本件計画では10階建ての宿泊棟を含む高層建造物を建設するなど石垣市の伝統的な景観を大規模かつ本質的に改変するものであることから、石垣市景観条例に基づく景観審議会の意見・提言内容を十分に反映し、景観保全の観点から必要な計画変更をユニマット社に指示すること
6. これらの要請事項に対し可及的速やかに回答すること
を要請する。
株式会社ユニマットプレシャスに対しては、
1. 上記沖縄県に対する要請2.①から④の各項目の調査及び環境保全措置について速やかに実施すること
2. 本件計画に含まれる石垣市所有地の取得及び利用について市民に対し説明を行うこと
3. これらの要請事項に対し可及的速やかに回答すること
を要請する。
本件に関する問い合わせ先:
(公財)日本野鳥の会 自然保護室 葉山政治 電話03-5436-2633 eメールhayama@wbsj.org
(公財)世界自然保護基金ジャパン 森林・野生生物室 野生生物グループ
小田倫子 電話03-3769-1716 eメール oda@wwf.or.jp