2021年11月04日

2021年11月4日 環境省「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律施行令案」等に対するパブリックコメントを提出しました。

 2021年11月4日、JELFは環境省による「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律の施行に伴う施行令案」等に対するパブリックコメントを提出しました。
 以下、JELFが提出した意見を掲載します。

 パブコメの詳細は、以下のリンクをご参照下さい。
 http://www.env.go.jp/press/110005.html

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<意見>

「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律施行令案」等に対する意見

2021(令和3)年11月4日

一般社団法人JELF(日本環境法律家連盟)
Japan Environmental Lawyers for Future
理事長:弁護士 池田 直樹
所在:〒453-0015
愛知県名古屋市中村区椿町15番19号 学校法人秋田学園名駅ビル2階(本部)
Tel:052-459-1753
Mail:jelf@green-justice.com

 

 一般社団法人JELF(以下「JELF」といいます)は日本全国の弁護士約450名で構成される環境保護団体であり、弁護士で構成される環境保護団体としては我が国最大規模のものです。

 プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律(以下「本法」といいます。)についての「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律施行令案」等(以下、「本施行令案」といいます。)に対する意見募集に際し、JELFとして以下の通り意見を提出します。

第1 リデュースの徹底について 

1 意見の要約

 循環型社会形成推進基本法(以下「循環基本法」)の基本原則にのっとり、リサイクル等に先立ち、まずは可能な限りプラスチックの発生抑制(リデュース)が目指されるべきであり、特にワンウェイのプラスチックの排出をできる限り早くゼロとすべきという観点から本施行令案も規定されるべきである。

2 意見の該当箇所(訂正すべき箇所)

  1. 別紙8プラスチックに係る資源循環の促進等を総合的かつ計画的に推進するための基本的な方針(以下、「別紙8基本方針」という)三の4「事業者の取組」について、「事業者は、」との記載に続けて冒頭に「プラスチック使用製品の使用を可能な限り回避すること、やむを得ず事業活動においてプラスチック使用製品を使用する場合においても、」との記載を追加すべきである。
  2. 別紙5特定プラスチック使用製品提供事業者の使用の合理化によるプラスチック使用製品廃棄物の排出の抑制に関する判断の基準となるべき事項を定める省令案(以下、「別紙5省令案」)1条につき、恣意的な基準年度の設定を許さないため、基準年度を明示するか、「目標を定めた日から遡って●年以内の任意の年度」といった制限を課すべきである。
  3. 別紙8基本方針三の5「特定プラスチック使用製品提供事業者の取組」イ(2)について、「商品の販売又は役務の提供に際しては」の直後、冒頭に「特定プラスチック使用製品を提供しないこと、」との記載を追加すべきである。また、末尾に「以上の使用の合理化のための取り組みを行った上でやむを得ず特定プラスチック使用製品を使用する場合においても、プラスチック使用製品設計指針に即して設計されたプラスチック使用製品を使うこと」との記載を追加すべきである。
  4. 別紙5省令案第二条第一号につき、「商品の販売又は役務の提供に際しては」の直後、冒頭に「特定プラスチック使用製品を提供しないこと、」との記載を追加すべきである。
  5. 別紙5省令案第二条につき、三号として「本条1号及び2号の合理化のための取り組みを行った上でやむを得ず特定プラスチック使用製品を使用する場合においても、プラスチック使用製品設計指針に即して設計されたプラスチック使用製品を使うこと」との記載を追加すべきである。
  6. 別紙6排出事業者のプラスチック使用製品産業廃棄物等の排出の抑制及び再資源化等の促進に関する判断の基準となるべき事項を定める省令案(以下、「別紙6省令案」)の第二条第三号について、プラスチック使用製品の使用の合理化の例として、「プラスチック使用製品の使用を可能な限り回避すること、やむを得ず事業活動においてプラスチック使用製品を使用する場合においても、」との記載を追加すべきである。
  7. 別紙8基本方針の三2について、第一文を「国は、自ら率先して、特定プラスチック製品を使用しないこと、会議等の場で容器包装を含むプラスチック使用製品を極力使用しないよう努めること等のプラスチック使用製品の使用の合理化の取り組みを行い、プラスチック使用製品廃棄物の排出に取り組むこととする。」との文章に変更すべきである。
  8. 別紙5第六条について、特定プラスチック使用製品提供事業者に対する指導及び助言(本法29条)、勧告及び命令(本法30条)を実効性のあるものとするため、末尾「情報を公開するよう努めるものとする」との記載を「情報を公開しなければならない」と変更すべきである。
  9. 別紙8基本方針三の5「特定プラスチック使用製品提供事業者の取組」イ(6)について、同様の観点から末尾「情報を公開するよう努めるものとする」との記載を「情報を公開しなければならない」と変更すべきである。
  10. 別紙6省令案第四条2項について、排出事業者に対する指導及び助言(本法45条)、勧告及び命令(本法46条)を実効性のあるものとするため、末尾「公表するよう努めるものとする」との記載を「公表しなければならない」と変更すべきである。
    同じく別紙6省令案第五条2項末尾「公表するよう努めるものとする」との記載を「公表しなければならない」と変更すべきである。
  11. 別紙8基本方針六の1イ(5)について、同様の観点から「情報の提供に努めること」との記載を「情報の提供を行うこと」との記載に変更すべきである。
  12. 別紙8基本方針二の2について、同4第2段落のような輸入プラスチックについて、輸入・販売業者に対して、「プラスチック使用製品設計指針に即して設計されたプラスチック使用製品を輸入・販売することが期待される」という程度の取組を促す政策では、リデュース(発生抑制)の徹底について全く効果がなく、国内業者が競争上不利となるため、国内業者の自主取組も阻害してしまう危険性が高い。従って、同2について、末尾に「更に、国はプラスチック使用製品設計指針に即して設計されていないプラスチック使用製品を輸入・販売することが国内事業者の自主的取組を阻害する可能性があることに鑑み、輸入・販売事業者に対して適切な措置を講じるものとする。」との一文を追記すべきである。 

3 意見の理由

 2021年(令和3年)3月18日付け日本弁護士連合会による「今後のプラスチック資源循環政策についての意見書」[1](以下「日弁連2021年意見書」という。)は、今後のプラスチック資源循環政策として、「リデュース(発生抑制)の徹底を図ること」を掲げてその内容及び理由を詳述している。当団体としては同意見書の内容は同じく弁護士による団体である日弁連が取りまとめた意見であるので参考にされるべきであると考え、以下同意見書も適宜引用しつつ意見を述べる。 
 本法自体、リデュース(発生抑制)の徹底という観点からは事業者が取り組むべき事項の多くが努力義務及び自主取組にとどめられており、実効性に欠ける面は否めないが、他方で本法が特定プラスチック使用製品を提供する事業者に対して特定プラスチック使用製品の使用の合理化を求め、プラスチック使用製品廃棄物の排出を抑制するために取り組むべき措置に関する「判断の基準となるべき事項」を定めるものとした(本法28条1項)ことや、プラスチック使用製品産業廃棄物等の排出の抑制及び再資源化等の促進に関する排出事業者の「判断の基準となるべき事項」を定めるものとした(本法44条1項、46条2項)こと等は一定評価されるべきものである。
 そこで、これら法の規定を受けた省令は日弁連2021年意見書で述べる通り、「リデュース(発生抑制)の徹底を図るという観点から定められねばならない。
 すなわち、本法も循環基本法の基本原則にのっとり解釈・運用されるべきところ、循環基本法は、処理の「優先順位」を明文で①発生抑制(リデュース)、②再使用(リユース)、③再生利用(リサイクル)、④熱回収、⑤適正処分と定めている(第2条・第5条・第7条)。
 従って、リサイクル等に先立ち、まずは可能な限りの発生抑制(リデュース)が目指されるべきであり、特にワンウェイのプラスチックの排出をできる限り早くゼロとする政策が求められる。上記はその観点から訂正をすべきと考える箇所である。

 

第2 バイオプラスチックの利用について

1 意見の要約

 プラスチック使用製品設計指針に関し、バイオプラスチックの利用については、プラスチック以外の素材への代替等に比して優先順位において劣後することを明示すると共に、自然環境中に流出する可能性を有する製品については、例えその可能性が一般的に低いと考えられたとしても安易にバイオマスプラスチックを許容すべきではないことを明示すべきである。

2 意見の該当箇所(訂正すべき箇所) 

  1. 別紙9プラスチック使用製品設計指針(案)(以下、「別紙9設計指針」)2.(2)①については、末尾に「但し、代替品が過剰生産されることによる新たな環境破壊の危険性についても配慮すること。」との一文を追加すべきである。
  2. 同2.(2)④「バイオプラスチックの利用」については、冒頭に「上記①②③による方法が困難な場合において」との文言を追加すべきである。
  3. 同④「バイオプラスチックの利用」について「また、 やむを得ず自然環境中に流出することの多い製品については、生分解の機能が発揮される条件を考慮した上で、生分解性プラスチックの利用について検討すること」との記載については、「また、製品の製造後、やむを得ず自然環境中に流出する可能性を有する製品については、生分解の機能が発揮される条件を考慮した上で、生分解性プラスチックの利用について検討すること」との文言に変更すべきである。

3 意見の理由 

 日弁連2021年意見書において指摘されている通り、バイオマスプラスチック[2]は、温室効果ガスの排出抑制という点で気候危機には資するとしても、必ずしも生分解性[3]を有しないため、年間約2~6万トンと推計される日本の陸上から海洋に流出する[4]プラスチックごみの削減に直結しないし、生分解性を有するバイオプラスチックであっても、海水中において当然に分解されるもの(海洋分解性プラスチック)は限られており[5]、マイクロプラスチックを含む海洋プラスチック問題の解決にはつながらない。
 このような観点から、(2)材料に関して、④バイオプラスチックの利用を過度に推進すべきとはいえず、同①②③等の他の方法に優先順位として劣後することを明記すべきである。
 但し、日弁連2021年意見書において述べられている通り、④バイオプラスチック以外の代替品であっても、その利用促進に過度に政策が偏り、代替品が過剰生産されることになれば、原材料栽培地への転化による原生林の伐採、土壌の流出、貯蔵炭素の放出など、新たな環境問題を発生させる可能性も指摘されている[6]ことにも留意が必要であり、その点についての注意喚起がなされるべきである。
 また、別紙9設計指針では、「やむを得ず自然環境中に流出することの多い製品については」(傍点は意見者)生分解性プラスチックの利用について検討すること、とされているが、このような規定は自然環境中への流出が通常少ないと事業者が想定する製品については、生分解性を有しないバイオマスプラスチックの利用が広く許容されるとの誤解を事業者に与えかねない。
 日弁連2021年意見書にもある通り、日本の沿岸海域においてもマイクロプラスチックは存在しており、海中密度は、1地点を除いた調査地点で0.1~1.4個/㎥であったとの調査結果[7]や、日本全国の河川の約9割でマイクロプラスチックが発見され、市街化して人口密度が高い河川ほどマイクロプラスチック濃度が高かったとする調査結果[8]もあるのであって、陸域においてプラスチックが河川に流出しマイクロプラスチックとなっている機序は必ずしも明らかでない。安易に生分解性を有しないバイオマスプラスチック製品を広く許容してしまえば、河川中におけるマイクロプラスチックが更に増加する危険性がある。
 また、自然環境中への流出が少ない製品についても、バイオプラスチックとバイオプラスチック以外のプラスチックを混合させた製品についてはリサイクルが困難であると思われ、そうすると焼却処分(熱回収)が前提となってしまう可能性がある。上述の通り、環境基本法の下に位置する廃棄物・リサイクル関連の基本法である循環基本法は、処理の「優先順位」を明文で①発生抑制(リデュース)、②再使用(リユース)、③再生利用(リサイクル)、④熱回収、⑤適正処分と定めている(第2条・第5条・第7条)のであって、安易に熱回収を前提とすることは循環基本法の趣旨に反するものと言わざるを得ない。
 以上から、プラスチック使用製品設計指針に関し、バイオプラスチックの利用については、プラスチック以外の素材への代替等に比して優先順位において劣後することを明示すると共に、自然環境中に流出する可能性を有する製品については、例えその可能性が一般的に低いと考えられたとしても安易にバイオマスプラスチックを許容すべきではないことを明示すべきである。

 

第3 有害化学物質規制について

1 意見の要約

 プラスチックに使用される有害化学物質を規制するために、有害化学物質及び添加剤について使用を削減するとともに、その成分を表示に関する記載をすることを義務化すべきである。

2 意見の該当箇所(訂正すべき箇所) 

  1. 別紙8基本方針の八(7)について、「有害化学物質に関する表示義務、含有規制等の実施、添加剤のポジティブリスト制の導入を早期に検討、実施すること」との記載を追加すべきである。
  2. 別紙9設計指針の2.(1)「構造」について、「⑨有害化学物質・添加物の使用削減・表示」の項を追加し、「有害化学物質及び添加剤について使用を削減するとともに、表示を行うこと」との記載を追加すべきである。
  3. 別紙9設計指針の2.(2)「材料」について②「再生利用が容易な材料の使用」について、「また、再生利用を阻害する添加剤等の使用を避けることを検討すること」との記載を、「有害化学物質及び添加剤について、使用を削減するとともに、表示を行うこと」に変更すべきである。
  4. 別紙9設計指針の2.(4)「情報発信及び体制の整備」について、「⑨有害化学物質及び添加剤の成分に関する情報等」の項を追加すること。
    また、「次のような情報を記載することが望ましい」及び「その情報の開示を積極的に行うことが望ましい」との記載について、「が望ましい」との記載を削除すべきである。

3 意見の理由 

 日弁連2021年意見書が述べる通り、プラスチックに使用される有害化学物質による環境汚染を回避するために、添加剤等のポジティブリスト制の導入などプラスチックの生産段階からの規制を実施すべきである。
 別紙9設計指針においても、「安全性の確保された材料を使用すること」の記載はあるが、有害化学物質規制については、別紙8基本方針の八「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する重要事項」の項目において、有害化学物質に関する影響について調査研究を進めることという内容にとどまるものであり、ポジティブリスト制の導入などの実効性のある有害化学物質規制が行われていない。
 また、別紙9設計指針案において、「再生利用を阻害する添加剤等の使用を避けることについて検討すること」とされているが、「検討する」との内容では安全性確保のための実効性に欠ける。
 再生利用を前提として、安全性を確保するためには、プラスチック使用製品における化学物質の成分の種類及びそれぞれの含有率の情報が、国、地方公共団体、関係事業者及び消費者に対して提供されることが必要である。
 したがって、有害化学物質の規制及びそのための成分表示に関する内容として、以上の通りの修正をすべきである。

以上

 

[1] https://www.nichibenren.or.jp/document/opinion/year/2021/210318_5.html 

[2] 環境省・経済産業省・農林水産省・文部科学省「バイオプラスチック導入ロードマップ~持続可能なプラスチックの利用に向けて~」(2021年1月)では、「原料として植物などの再生可能な有機資源を使用するプラスチック」と定義されている。

[3] ある一定の条件の下で自然界に豊富に存在する微生物などの働きによって分解し最終的には二酸化炭素と水にまで変化する性質。

[4] 環境省「プラスチックを取り巻く国内外の状況」(2018年8月)17頁

[5] 経済産業省産業技術環境局・製造産業局「海洋生分解性プラスチック開発・導入普及ロードマップ」(2019年5月7日)によれば「国内プラスチック生産量(年間1千万トン程度)のうち、国内で流通している生分解性プラスチックは 2、300トン程度と国内市場に占める割合は小さく、しかも陸域の土壌又はコンポストでの分解を前提とした生分解性プラスチックが主流であり、海洋生分解性を有するプラスチックはわずかな種類しか存在しないのが現状である」とされている。

[6] 減プラスチック社会を実現するNGOネットワーク「『今後のプラスチック資源循環施策の基本的方向性』への共同提言」(2020年10月13日)

[7] 環境省「平成29年度海洋ごみ調査の結果について」

[8] 東京理科大学・愛媛大学プレスリリース「全国の河川における深刻なマイクロプラスチック汚染の実態を解明」(2018年10月31日)によれば、日本全国の29河川36地点における大規模調査の結果、29河川中26河川(全体の9割)においてマイクロプラスチックが発見された。