2018年08月02日

2018年8月2日 辺野古、埋立工事に関するジュゴン訴訟原告の抗議声明

2018年8月2日、JELFは米国連邦裁判所に係属している沖縄ジュゴンNHPA訴訟の原告として、個人原告3名の方々と連名で、安倍晋三内閣総理大臣と小野寺五典防衛大臣にあてて、以下の声明文を提出いたしました。

提出した意見書は、PDFファイルでも掲載しています。ご確認ください。

___________

内閣総理大臣 安倍 晋三 殿
防衛大臣   小野寺五典 殿

声  明  文

2018年8月2日
一般社団法人 JELF(日本環境法律家連盟)
名古屋市中村区椿町15-19 学校法人秋田学園名駅ビル2階
理事長 弁護士 池田直樹

米国ジュゴン訴訟原告 真喜志好一
東恩納琢磨
島袋 安奈

 沖縄県名護市辺野古において新基地建設を強行する沖縄防衛局は、2018年6月12日、辺野古の海への土砂投入を2018年8月17日以降に行うことを県に通知した。これに対し、既に翁長雄志沖縄県知事は、前知事による埋め立て承認を撤回する旨を表明しているが、現実に土砂投入が行われるようなことがあれば、日本国内法のみならず米国のNational Historic Preservation Act(NHPA/国家歴史保全法)に反する暴挙であり、国際社会が追求していきた法的正義に反するものである。私たちジュゴン訴訟原告は、日本政府に対し厳重に抗議する。

1. 米国法であるNHPAは、沖縄ジュゴンを保護対象としていること、辺野古基地建設は米国の協力なしには行えないことから、私たち(JELF(日本環境法律家連盟)、真喜志好一、東恩納琢磨、島袋杏奈)は、ジュゴンの文化的価値と辺野古の自然環境を守るため、米国国防総省を被告としてサンフランシスコ連邦地方裁判所において提訴した。15年間に及ぶジュゴン訴訟の審理の中で、国防総省が、沖縄のジュゴンの文化的価値を保全するための適正な手続きを履行していない旨の中間判決が発せられるなど、米国政府によるNHPAの履行状況は極めて不十分であることが明らかにされた。
 現在、国防総省がNHPA義務を履行していないことの確認と、義務を履行するまで、提供区域への日本政府の立入の許可を与えないことを要求した裁判は、その判決を待つばかりの状況にある。

2. 日本政府は、辺野古新基地建設区域の使用権限を米国政府に委ねているのであるから、本水域について米国法が定める手続きならびに米国の司法判断を最大限尊重すべきである。ここで、日本政府が、辺野古新基地建設のための土砂投入を断行するとすれば、沖縄ジュゴンの文化的価値を保全するための協議の相手方であるべき沖縄の地域住民・県・ジュゴン研究者・その他多数の利害関係を持つ者が、米国法上認められた協議の機会を奪われるとともに、米国の司法判断に対する敬意を欠くものであるから、厳重に抗議する。

3. ジュゴン訴訟では、2017年12月、国防総省から裁判所に行政記録が提出され、米国国防総省が自らの主張の根拠とする「改訂報告書 沖縄の文化におけるジュゴンの重要性の人類学的調査」(Welch2010報告)や、専門家らのメールのやり取りが公開された。これら文書において、日本の環境アセスメントは、「準備書に基づいてジュゴンへの影響を評価することは不可能である」、「科学的検証に耐えられない」、「殆ど価値がない」と極めて低い評価を受けている。JELFを含めた日本国内の多くの団体や専門家が指摘してきた、科学的根拠を欠くずさんな沖縄防衛局の環境アセスの問題が、米国政府の行政文書からも裏付けられることになったといえる。このような環境アセスメントに基づき、辺野古新基地建設を強行することは、到底許されない。

4. ジュゴンは、生物学的に貴重な種であるとともに、沖縄の人々にとってかけがえのない文化的価値を持つ。これまで、ジュゴンへの生物学的影響については、ずさんな日本政府の環境アセスメントのもとに「ジュゴンへの悪影響はない」との一方的な結論が下されてきた。そしていま、国防総省と沖縄の地域住民ら利害関係者との間で、ジュゴンの文化的価値の保護についてNHPAが定める協議手続きが行われないまま、土砂が投入され、基地建設が強行されるという危機的局面を迎えている。工事の強行は、日米双方の法治国家の理念を幾重にも踏みにじるものであり、国際社会が追求してきた法的正義に反するものである。

 私たちは、来るべきNHPA訴訟の米国連邦地方裁判所の判決を待たずに、辺野古新基地建設のための土砂投入を行うという暴挙に対して、連帯して強く抗議する。

以上