Mail Magazine for L.S. students issued by JELF
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■□■ ECO Tama ■□■ vol.2        2004.11〜12月
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*JELF は、法的手段によって環境保護運動を進める、全国約480名 の
弁護士によって構成されている環境保護団体です。
 ECO Tama=「エコ たま」とは、エコロジー・ロイヤーのたまごたちという
 意味。環境問題に対する関心を共通項として集まった仲間の情報交流
 メルマガです。 ECO Tamaは、ロースクール生の皆さんに有用な情報を提供
 するため、JELFから無料でお届けします。

*ECO Tama は、隔月間でお届けします。

*ECO Tamaの購読申し込み、JELFへの連絡・お問い合わせは後掲の
メールアドレスまでお願いします。
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□■□ CONTENTS □■□

□やんばる訴訟控訴審 住民側が逆転敗訴
 JELF会員弁護士も弁護団に参加している「やんばる訴訟」。一審では、
 住民側がほぼ全面勝訴をおさめましたが、控訴審では、手続き上の違法
 を認めながらも損害は無いとして、原告側の請求を棄却しました。

□政府開発援助(ODA)と環境社会配慮     58期修習生 乾 由布子
 2004年10月に日本のODAは50周年を迎えました。ODA受け取り国の
 環境や住民の人権を十分に尊重する開発援助が求められています。

□環境弁護士紹介      大阪弁護士会所属    弁護士 小林邦子
 環境弁護士は今や「絶滅危惧種」?

□LS紹介         名古屋大学法科大学院 3年コース 吉川 澄子
 名大LSは、体育会系だった?!。

□ JELF からのお知らせ

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□■□やんばる訴訟控訴審 住民側が逆転敗訴 □■□


国の天然記念物のヤンバルクイナなど希少生物が生息する沖縄本島北部の「
やんばる(山原)」と呼ばれる山間部で進められていた林道・農地開発工事
が森林法・土地改良法に違反するとして、住民らが太田昌秀前知事に両事業
に支出した約3億7千万円余の損害賠償などを求めた訴訟の控訴審判決が1
0月14日、福岡高裁那覇支部(窪田正彦裁判長)であった。
控訴審では、原告の主張を支持し太田前知事に損害賠償を命じた一審判決
を取り消し、原告側の請求を棄却するという、住民逆転敗訴の判決が言い渡
された。

1.訴えの背景  沖縄県では、本土復帰以後、沖縄振興開発特別措置法に
より、ダム、河川改修、林道設置・改良工事、土地改良工事などの公共事業
が次々に実施され、各地で工事による赤土が大量に海に流れ込み珊瑚礁に壊
滅的被害を与えていた。
また、本件で問題となった奥与那線に先だって建設された大国林道では、U
字溝に落下したヤンバルクイナのヒナの死がいが何度もメディアにとりあげ
られるなど 、やんばるに生息する希少種への影響は深刻であった。

2.一審判決について(那覇地裁 平成15年6月6日判決)

(1) 林道奥与那線の建設について
・保安林解除の手続きを一切取らずに、流木伐採や土地の形質の変更行を行
ったのは、森林法の保安林制度の趣旨に著しく反して違法
・保安林内の工事の違法性は公金支出についてはその全体に及ぶ
←本件事業は始点から終点まで一本の広域基幹林道を整備するもので、違法
区間を除いた残区間のみの工事は無意味
・知事個人の損害賠償責任についても具体的判断基準を示したうえで、これ
を認める。

(2) 辺野喜地区土地改良事業について
・当初計画の内容と異なる工事がなされたのに、その実施に先立つ事業計画
の変更手続きがなく、県知事の認可を得ていない違法がある。
・本件事業につき、変更手続き、認可を経ずに実施しているという明白な違
法が存するにも関わらず、知事が是正を命ずることなく補助金支出をなした
ことは、財務会計法規上の義務に違反し違法
・知事個人の損害賠償責任についても具体的判断基準を示したうえで、これ
を認める。

3.控訴審判決について(福岡高裁那覇支部 平成16年10月14日判決)

(1) 林道奥与那線の建設について
・森林法に違反し、財務会計行為である工事請負契約と支出命令も違法
・しかし、支出額に見合う費用対効果があり県側に損害はない

(2)辺野喜地区土地改良事業について
・補助金支出に手続き上の瑕疵はあったが、当該の手続上の瑕疵は軽微なも
のである。しかも、事後的に手続がなされ手続上の瑕疵は治癒されているか
ら違法性はない。

参考文献; 「やんばる住民訴訟第一審判決 住民側ほぼ全面勝訴」
       大西裕子弁護団長 (高知弁護士会)
       環境と正義 2003年10月号

       琉球新報 2004年10月15日

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□■□政府開発援助(ODA)と環境社会配慮
58期修習生   乾 由布子 □■□


 日本から政府開発援助(ODA)として途上国へ流れる金額は毎年約1兆円と
莫大な額にのぼる。そのお金で道路や鉄道が建設され,あるいは発電所が 
建設されるなどしてその国の経済発展に役立つわけだが,その一方で,日本
のODAは,海外に場所を移した体の良い公共事業に過ぎない,途上国に環境問
題や社会問題を引き起こしたとして,これまでに度々国内外のマスコミやNGO
の批判に晒されてきた。
 JBICは,このような批判に応え,現在では,貸付に際しての行動規範とも
いうべき環境社会配慮ガイドラインを設けている。具体的には,融資要請の
あった案件を、環境社会配慮の必要性―あるいは潜在的な問題の大きさと言
い換えてもよい―によってランク分けし、要注意度の高い案件については、
事業が始まる前に,相手国から環境アセスメント報告書を提出させたり、追
加調査を命じたり、場合によっては日本から専門家を派遣するなどして調査
する。この段階で、適切な環境社会配慮が行われていないか,あるいは将来
的にそのおそれのある事業には、日本政府は融資しないということになる。
また、事業が開始されてからも,相手国から提出されるモニタリング・レポ
ート等を通じて,当該事業の環境社会配慮が適切に行われているかどうかを
継続的に確認する。問題点が発見された場合には改善を求め,もし改善され
ない場合には融資を中止する。
このようなJBICのガイドラインにおける最大の特徴は,@積極的な情報公開
,Aステークホルダーとの対話の重視,B相手国の制度の尊重,の3つであ
ろう。とくにBは,世界銀行やアジア開発銀行などのスタンスと大きく異な
る点であり,自己流を押し付けずに相手国の自主性を重んじるやり方だとし
て諸外国から評価される反面,いざ問題が発生した場合には,問題を解決す
るのはその国の責任だという建前論に終始し,結果的に問題の解決を遅らせ
るとして批判される部分でもある。諸刃の剣ということであろう。
一昔前であれば,事業に金を出すだけの融資者に,事業の中身・結果につい
てまで責任を持てという議論はあまりなかったかもしれない。しかし,経済
活動には社会的責任を伴うという考え方が浸透してきた今,JBICは,そうし
た意味で,新しい風に晒されている。2003年の秋からは,JBICがガイドライ
ン違反の行為を行った場合には,異議の申立てができるようになった。この
手続きが実際にどのように運用されるのか,私自身,とても興味を持ってい
るところである。


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□■□「絶滅危惧種」なんて言わせない!
           大阪弁護士会所属   弁護士 小林邦子 □■□


 今年3月、フィリピンで開催されたアジア公益環境法律家会議に参加して
きました。アジア10数カ国から法律家、NPOメンバーが参加しており、
大変いい刺激になりました。
ところで、雑談している中で聞かれた質問です。「日本では環境法律家は
"endangered species(絶滅危惧種)と聞いたが本当か?」一瞬、虚をつか
れましたが、「いやいや、そんなことはない、環境法律家連盟という組織も
あるし、活動は拡大していると思う。」と答えました。畳み掛けるように
「あなたは環境事件だけのfulltime workerか?それとも他の事件もやって
いるのか?」という質問。「普段は破産と離婚ばっかりやっているよ、環境
事件では食べていけない。」というと、相手もニッコリ。「どこの国でも大
変だね。わかっているよ」といいたげな表情でした。
 私が身をおく法曹界もここ数年のうちに大きく方向を変えようとしていま
す。弁護士の数は格段に増えてきており、いずれ『食うには困らない』とい
う保証はなくなっていくでしょう。しかし、そんなシビアな状況だからこそ
、「余裕のある弁護士の道楽」なんて言わせないよう、自分自身も仕事とし
ての責任を果たしていきたいと思いますし、環境問題を魅力的な分野と感じ
て目指してくれる若手も後に続いてほしいと思います。
そのためには一人でも多くの市民の方に自然の価値を実感して共有してもら
うことがとても大切です。このニュースレターを手にしてくださっている方
々のように、活動を支えてくれる方がいなければ、環境問題に取り組む弁護
士は、いずれは「絶滅危惧種」に、そしてついには「絶滅種」になってしま
うでしょう。
次にアジアの友人に会うときには、「環境弁護士は『絶滅危惧』なんかじゃ
ない、かつてのメダカのように日本全国津々浦々どこでも元気に泳ぎまわっ
ているよ。」と胸を張って言えるよう、がんばりたいと思います。どうか変
わらぬご支援を!


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□■□名古屋大学ロースクール紹介
      名古屋大学法科大学院 3年コース 吉川 澄子 □■□



私は名古屋大学ロースクールの未修者コースに所属しています。私達のクラ
スは、法律を学ぶのは初めての人が多いこともあって、前期は慣れない六法
を片手に四苦八苦でした。そんな中で何か息抜きをしたいと思い始まったの
が、週に一度のバレーボールです。最初のころは数人で円陣パスをやるくら
いでしたが、最近では試合ができるほどになり、アタックもたくさん繰り出
され、かなり本格的です。こうやって日々の勉強でたまったストレスを発散
し、運動不足を解消して、健康的なロースクールライフを送っています。
クラスには社会人として様々な分野で活躍されていた方も多く、そんな人々
と共に机を並べて学べるのは、新卒の私にとってはとても刺激的です。後期
も既に課題が出始め、忙しくなりつつありますが、たまにはバレーで息抜き
&体力づくりをしながら、法律の勉強に励んでいきたいと思います。

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□■□JELFからのお知らせ□■□

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  第3号は、 LS生の皆さんのお役にたつような記事を掲載し
  2005年1月上旬に発行の予定です。

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  目指しています。ぜひ、ご意見ご感想、実務家への質問等、また、
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