Mail Magazine for L.S. students issued by JELF
______________________________________________________________________
_____________________________________________________________________
■□■ ECO Tama ■□■ 8号 2006.3〜4月
______________________________________________________________________
*JELF は、法的手段によって環境保護運動を進める、全国約500名 の弁護
士によって構成されている環境保護団体です。
ECO Tama=「エコ たま」とは、エコロジー・ロイヤーのたまごたちという
意味。環境問題に対する関心を共通項として集まった仲間の情報交流メルマ
ガです。 ECO Tamaは、ロースクール生の皆さんに有用な情報を提供するため
JELFから無料でお届けします。
*ECO Tama は、隔月間でお届けします。
*ECO Tamaの購読申し込み、JELFへの連絡・お問い合わせは
jelf-osaka@green-justice.com
までお願いします。
*ECO Tama のバックナンバーは、JELFのホームページにてご覧いただけます。
URL: http://jelf-justice.org
______________________________________________________________________
□■□ CONTENTS □■□
□ 新司法試験直前 お役立ち情報 その1
大変お待たせいたしました!いよいよ実施される新司法試験。
今年度受験される方も、来年度以降受験予定の方にも必ず役に立つ環境法
「論点表」をお届けします。
□ ECO Tama 環境法セミナー(新)
環境法を選択するのは、受験上、得策なのか?環境(派)弁護士になって
やっていけるのか?LS生の皆様の疑問にお答えします。
□ JELF からのお知らせ
______________________________________________________________________
□■□ 環境法・基本の確認の観点と対象□■□
弁護士・関西学院大学教授 池田 直樹
新司法試験まであと2ヶ月弱となった。追い込み時期の学習方法は、@時間内
での答案作成(野球でいえば紅白戦)と、A基本的知識の確認(同じく基本フ
ォームの再確認)に重点を置くべきである。
ただ、特に旧司法試験になかった環境法については、@を行うための問題集も
なければ、Aを効率的に行うための参考書も整備されていない。かといって、
今さら、あの分厚い大塚環境法を読み直す暇もない。そこで、本稿ではAの一
助として、基本の確認の観点と対象について述べたい。
論点表とまではいかないが、復習の際の手がかりになれば幸いである。
1 基本的な観点
私の前回のエコタマ記事で、環境法を学習するうえでは、What(たとえばア
セスメントとは何かという概念の理解)、Why(なぜアセスが必要なのか、その
制度趣旨(目的)と歴史的な沿革)、Where(アセス制度が実定法や計画等のど
こに位置づけられているのか、法律や条文の特定)、How(アセスの目的を実現
するために、どのような政策的配慮=手法が用いられているのか)、When(ど
んなとき(場面)でアセスについてのどのような利害対立や紛争が生じるのか)
という観点を持ってほしい、と述べた。
環境法は「環境への負荷を防止・低減することを目的とする法の総体」だと
されている(大塚32頁)。民法の基本的価値が対等な私人間の私的自治の尊重
にあり、労働法の基本的目的が非対等の労使間における労働者保護にあるとす
れば、環境法の目標は、人類の生存の基盤としての環境の保護にある。
ただ、一口で環境といっても、自分の居住地の日照から始まって(近隣問題)、
地域の水・空気・土壌(公害問題)、自然環境の悪化(森林破壊、生態系の破
壊)、地球全体の問題(気候変動、資源枯渇、有害物質拡散など)など、対象
が広い。そこで、それぞれの保護の対象ごとに、その保護のための具体的制度
が考えられ、さまざまな手法を折り込んだうえで実定法化され、しかしその不
十分さや限界ゆえに、絶えざる摩擦や環境の悪化が生じているのである。分野
ごとに5W1Hの正確な理解が必要とされるゆえんである。
2 環境法の基本理念の復習
上記5W1Hの学習の出発点として、環境法の基本理念をもう一度、しっか
りと理解しなおすことを強調しておきたい。
破産法選択者にとっては、「破産」「破産債権」「財団債権」「否認権」と
いうような破産法上、不可欠の法的概念を理解すべきことは自明の理である。
破産法が学習しやすいのは、破産法という一つの法律に、順序立ててそういっ
た基本概念が定義付けされ、その概念をめぐる具体的争いについての先例や判
例や学説が積み上げられている点にある。
ところが、環境法にはそういった統一され、順序立てられた法体系が確立さ
れていない。そのため、大気汚染防止法の排出基準とか、環境影響評価法の環
境影響評価制度といった個別法上の制度の理解のために目がいきがちである。
しかし、環境法が独自性を持った分野であることのアイデンティティは、環境
法独自の理念に各法が支えられ、貫かれている点にある。
また、特定の分野(たとえば廃棄物処理法)にしぼった出題だけではヤマの
当たりはずれに左右され、相当しぼりこみやすいという特質もあるので、出題
者意図としては環境法の総合性というその本質に沿って、出来る限り横断的な
出題も工夫したいはずである。
とはいっても、一行問題で、「環境法における持続可能な発展の理念とは何
か」とか、「我が国における汚染者負担主義(PPPの原則)の特徴は何か」
「予防原則とは何か、その意義と限界は何か」といった出題は考えにくい。
しかし、土壌汚染対策法の所有者責任(状態責任)と原因者責任(汚染者負担
主義)の併存のように、既成の制度の中に組み込まれた環境法の基本理念を再
抽出させる作業を行わせるような出題は十分に考えられる(サンプル問題1番
の水質2法と水濁法の比較に近いような出題)。そのためにも、環境法の教科
書の総論部分において、環境法の基本理念をチェックするとともに、それが具
体的な法制度として、どこに、どのように、現実化されているのかを点検して
欲しい。
3 環境政策の手法を意識せよ
ところで、実務家として環境法を教えるときに、環境紛争が主体となりやす
いが、環境法の独自性という点で、今後の復習において力を入れるべきは、環
境政策の手法の部分である。環境保護という目的の達成のため、環境政策では
さまざまな手法を駆使せざるを得ない(ポリシーミックス)。民法でもなく、
行政法でもない、環境法の独自領域は、環境政策部分にあるのである。ただし、
誤解をして欲しくないのは、何もISOの環境マネージメントシステムについ
て覚えよということではない。規制的手法、経済的手法、情報的手法、自主的
手法、合意的手法など、その基本を理解したうえで、それが各環境保護の制度
の中に具体的にどう反映しているか、具体的に述べられるようにしてほしいの
である。水質二法と水濁防止法との比較を求めたサンプル問題1番はこの系列
にあたる。
たとえば資源循環社会の実現のための各リサイクル法が採用している手法の
比較などは十分理解しておく必要がある。
4 環境紛争について
また、新司法試験の性質からすれば、具体的な事実をもとにした事例分析能
力を問う問題が多用されうる。
出題の方式として、環境破壊や公害の被害主体、加害主体を複数あげて、多
様な救済のあり方を問う複合的問題(環境私法、環境行政法の全体的理解を問
う)は出題者としてはもっとも出題しやすく、かつ学生の全体的理解度を試し
やすい。土壌汚染とその浄化(サンプル問題2番)、大気汚染とその救済(プ
レテスト問題1番)などがこれに該当する。
それに対して、もう少し基本的な問いの立て方として、ある主体が環境に影響
を与える行為を設定して、環境法的観点から何が問題になるか、法律相談を受
けた弁護士の回答を問うような問題もありうる。プレテスト2番は、廃棄物を
めぐる法制度の概要の理解を、このような形式で問うたものだった。
同様の問題は、自然環境の豊かなある地域において、一定の開発行為を行お
うとする者にとって検討すべき課題は何かというような問いで、環境影響評価
法や条例、自然公園法その他のゾーニング規制や特定種の保護など、自然保護
と開発との調整のための制度全体を概観させるような問題として出すことが考
えられる。
また、環境法においては「地域環境」の保護のためのローカルルールが重要
である。
したがって、条例と法律との二重規制や矛盾を前提として、地方自治体職員と
して、どのような環境保護条例案を策定すればよいか、といった主題も十分あ
りうる。
5 さいごに
時間がない中での学習法として、自分が使ってきた教科書を左に、環境法規
が掲載されている六法を右において、目次と六法だけを見ながら、目次のうち
試験対象範囲における項目の意味を、声を出しながらあるいはメモを取りなが
ら確認していく学習方法もありうるだろう。試験直前に細かい知識を頭に詰め
込んでもあまり意味はない。特に選択科目では基本が問われることを信じて、
鳥瞰的な学習をお勧めする次第である。
______________________________________________________________________
□■□ECO Tama 環境法セミナー □■□
☆このコーナーは、皆様からのご質問に弁護士(LS実務か教員含む)が回答さ
せていただきます。
質問はメールにて jelf-osaka@green-justice.com
宛お送り下さい。
本コーナーにて、回答させていただきます。なお、質問者の氏名等は掲載いた
しませんので、ご安心ください。
☆環境法について、司法試験対策について、環境弁護士の実態(?)、また、
気になる就職状況について等、皆様からのご質問をお待ちしております。
______________________________________________________________________
□■□JELFからのお知らせ□■□
□ 59期(東海)修習生企画(LS生も参加可)
韓国の環境訴訟の現状〜韓国とWEBでつないで、講演・交流します。
講師 Oh Soon,Park 弁護士
韓国でも、ゴミ問題・公共事業による環境破壊が深刻化しています。
また、韓国のセマングム干拓事業は、有明海干拓と類似点も多く、両国弁
護団は交流を続けています。今後、中国の経済発展が進めば、大気汚染な
ど日本・韓国双方が協力しあう必要が強まることでしょう。
韓国のNGO、韓国環境訴訟センターの代表で、民弁の中にあるいくつか
の委員会のなかの、環境委員会の議長でもあるOh Soon,Park弁護士のお話
を伺います。
4月3日(月)18:00〜
名古屋第一法律事務所 会議室
愛知県名古屋市中区丸の内2−18−22 三博ビル5階
修習生対象の企画ですが、LS生の方もご参加いただけます。
お手数ですが、3月31日(金)までに下記までメールにて事前申し込みを
お願いします。
Email: jelf@green-justice.com
□ ECO Tama 8号 ご購読ありがとうございました。
8号の発行が大変遅れましたことお詫び申し上げます。
次号以降は、隔月にお届け致します。
(9号は5月下旬の発行となります。)
□ ECO Tama は、ロースクール学生の皆さんとの双方向マガジンを
目指しています。ぜひ、ご意見ご感想、実務家への質問等、また、
自主ゼミ・勉強会等の案内等お知らせ下さい。
jelf-osaka@green-justice.com
□ 購読者募集中!お友達にもECO Tama をご紹介下さい!
購読の申し込みは、
jelf-osaka@green-justice.com
まで、お名前、学校名、学年をお知らせ下さい。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━