Mail Magazine for L.S. students issued by JELF
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■□■ ECO Tama ■□■ vol.7         2005. 10月
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*JELF は、法的手段によって環境保護運動を進める、全国約500名 の
弁護士によって構成されている環境保護団体です。
 ECO Tama=「エコ たま」とは、エコロジー・ロイヤーのたまごたちという
 意味。環境問題に対する関心を共通項として集まった仲間の情報交流
 メルマガです。 ECO Tamaは、ロースクール生の皆さんに有用な情報を提供
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□■□ CONTENTS □■□

□新司法試験環境法対策第1弾
 環境法をどう勉強するかープレテスト問題を参考に
 弁護士・関西学院大学教授 池田 直樹

□最新環境事件・判例 CLIP

□第2回韓日公害・環境問題交流シンポ報告
〜ソウル 清渓川復元事業

□ JELF からのお知らせ
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□■□ 環境法をどう勉強するかープレテスト問題を参考に
    弁護士・関西学院大学教授 池田 直樹         □■□

 日本評論社からの依頼で、プレテストを「受験」した(もちろん実際に会
場 で受けたわけではない)。法学セミナーに私の解説が出ているが、その
後の「出題意図」などを見ると論点を落としていたりして、「何をどこまで
書くのか」ということの難しさを痛感する。悩んでいるのは受験生だけでは
ない。教員も同じである。
<求められているもの>
 基礎的知識が問われていることは間違いない。では基礎とは何か?
一つには、環境法を貫く巨視的な観点を持つことである。それは環境法の
理念や歴史の理解である。産業優先から未然防止、環境負荷の軽減そして
予防原則、自然保護から環境の再生、大量生産・消費・廃棄社会から循環型
社会、地球環境の保全といった大きなテーマを歴史的文脈において捉える
ことである。
 二つには、環境政策の手法(規制的手法、経済的手法、情報的手法など)
とその法制度への具体化について理解することである。
 第三には、環境法であるから、条文を見てその制度趣旨を説明できること
である。
 そして最後に、その制度のもとで、具体的な問題や紛争がどう処理・解決
されるのかという法の社会での運用や適用場面の理解が問われる。
<Why&For What?>
 最初の歴史的視点とは、今、何がなぜそれが問題となり、環境法は何を
目指そうとしているのかという意味付けを十分に理解することである。水質
二法と水濁防止法の歴史的展開を問うたサンプル問題の1番が典型問題であ
る。環境法の教科書の最初の章や各法制度の総論部分、あるいは法律の目的
規定や定義、責務の部分を疎かにしてはならない。もちろん、大学受験の
歴史のように細かい環境法的出来事を覚えろという趣旨ではない。
<How?>
 環境政策手法とは、環境法が目指す目的を、どのように実現しようとして
いるのか、という「工夫」である。環境を破壊してはいけない、という禁止
条項だけで自然は守れない。環境を守ればご褒美がもらえる制度(経済的
手法)や誰が環境に大きな負荷を与えているのかを公表すること(情報的
手法)で自主的な対応を促したり、これらを総合的に組み合わせるなど、
立法に隠された意図と工夫について理解してほしい。ただし、教科書によっ
てはかなり詳細に書かれた政策手法を網羅的に覚えたり、分析することは求
められていない。
<Where?>
 環境法の目的をある手法をもって実現しようとするとき、その意図が具体
的に各法律のどこに具体化されているのかを適格に知っておく必要がある。
土壌汚染対策法であれば、どこに所有者の状態責任の具体化がどう書かれ、
どこに情報的手法を具体化した汚染地の登録制度が書かれているのかを環境
六法の中で特定し、説明できなければならない。今回のプレテストの第2問
は、廃棄物処理法における施設設置における許可制度や環境影響評価制度
(ミニアセス)の概要を指摘すればよい。政令が添付されていたことから、
政令レベルの細かい知識が問われると誤解してはならない。
<What kind?>
最後に、環境法上、どのような種類の紛争が生じ、それに対してどのような
救済手法が用意されているのか(あるいはされていないのか)を見る必要が
ある。公害から始まった我が国の環境法の歴史を受けて、環境私法(不法
行為法)における判例は多いが、今後は環境公法や公害調停などのADRも
含めた横断的なチェックが必要である。大気汚染事例での救済手法について
の今回のプレテストの第1問がこれに該当する。
<目次や見出しによる学習>
 大塚直教授の「環境法」は網羅的だが、詳細にすぎて2単位の環境法学習
や見出しを活用し、要点を絞っていくような学習法をお薦めする。
 同時に、上記の4つの視点で各法制度をまとめてみてはどうだろうか。
たとえば、環境影響評価制度について、何の目的でなぜこの制度が生まれ、
そこにはその目的達成のためにどのような政策的手法が用いられて、その
具体的な制度がどう条文上実現しているのか、そして環境影響評価制度の
もとでの環境紛争にはどのようなものがありうるのか?一通り、それら
の回答が出来れば、基礎力あり、と言えよう。


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□■□最新環境事件・判例 CLIP □■□

1.諫早湾干拓 最高裁が工事差し止め仮処分申請の許可抗告を棄却
  (平成17年9月30日 最高裁第3小法廷)


 国営諫早湾干拓事業を巡り、有明海沿岸の漁民が、漁業権を侵害されたと
して工事差し止めを求めていた抗告審で、最高裁は「残る工事の大部分は
陸上工事で差し止めの必要性がない」と抗告を棄却。  工事再開を認めた
福岡高裁決定(平成17年5月16日)が確定しました。
 同事業に関しては、平成17年8月30日に、公害調整委員会が、因果
関係を確信をもって認定できないとして、漁業被害原因裁定申請を棄却して
います。

2.川辺川ダム、事実上白紙に〜国土交通省漁業権収用申請を取り下げ
  (平成17年9月15日)

 国土交通省は、同省が治水・利水目的で計画する川辺川ダム建設に伴い、
熊本県収用委員会に提出していた漁業権などの強制収容採決申請を取り下げ
ました。これにより、ダム本体の着工は不可能になり、構想発表から39年
経った九州最大級のダム計画は白紙に戻りました。
 本ダムの建設目的の一つである「利水」に関しては、平成15年5月福岡
高裁判決で、土地改良法が要求する対象農家の2/3の同意を得ておらず、
利水事業は違法であるとされました。しかし、その後、農林水産省から新た
な利水計画が示されておらず、国交省は新利水計画に基づく、ダム変更計画
を示すことができなかったため、県収用委から収用申請の取り下げを勧告さ
れていました。
 国は今後、ダム計画を見直し再び収用手続きに入る方針。熊本県は、
「川辺川ダム総合対策会議」(議長・潮谷義子知事)を立ち上げ、課題の整
理と考えをまとめることになりました。


3.ポンポン山ゴルフ場事件〜京都市前市長に対し、京都市の被った損害の
賠償として26億円余の返還を命じた判決(平成15年2月 大阪高裁)
確定
 (平成17年9月15日)

 京都市と大阪府高槻市の境に位置するポンポン山でのゴルフ場開発をめぐ
って、開発業者に対し、不許可処分による46億円(適正価格は21億円と
される)もの高額の損害金が京都市より支払われたことに対する住民訴訟に
つき、最高裁は前市長側の上告を受理しない決定をし、高裁判決が確定しま
した。
 高裁判決では、行政の「裁量権が問題になるとしても、それは責任原因の
有無を判断するに当たって考慮されるべきものであって、損害の範囲を画す
るものではない」とし、適正価格を超える26億円余を損害と認めていまし
た。



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□■□第2回韓日公害・環境問題交流シンポ報告
〜ソウル 清渓川復元事業                   □■□

 平成17年10月1日、ソウル市を東西に流れる清渓川(チョンゲチョン)
は、コンクリートの蓋とその上を通っていた高速道路が撤去され、「自然の
ある都市河川」として復元された。10月1日からは、工事完成を祝うさま
ざまな行事が行われている。
 8月25日〜グリーン・コリア、韓国環境運動連合、民主社会のための弁
護士の集まりとの共催で行われた第2回韓日公害・環境問題交流シンポでは
、完成間近の清渓川復元工事の現地視察が行われた。
 撤去前には、川の上の一般道・高速道路を1日平均16万台もの自動車が
通行していたそうである。川縁約5.8kmの区間を通る道路の渋滞はひどか
ったが、工事自体はほぼ完成し、復元対象区間に22カ所架けられた橋も水
辺の散歩道も完成していた。 都心部の高速道路を撤去し、河川を復元する
という本事業には、下記のような目的があるとされる。
(1)コンクリートで覆われていた灰色のソウルのイメージを、きれいな
水が流れ緑豊かな美しい都市へと変え、人間中心の環境都市へと変貌させる
(2)清渓川には朝鮮時代の代表的な橋等が埋まっており、このような歴
史的遺跡を探し、復元・保存する文化事業でもある
(3)清渓川にふたをした道路とその上の高架道路は老朽化しており、また
河川の底は鉛等の重金属に汚染されていた。コンクリートの蓋・高速道の
撤去は市民の安全のため不可避であった
(4)清渓側の周辺地域は老朽建造物が多く、常住人口も急減していた。
沿道の再開発によって、江北の経済を活性化し、ソウル市南北の均衡のとれ
た発展を目指す。
 車中心・開発重視から都市環境を重視したまちづくりに向かって、ソウル
は一歩先んじているようである。
 ちなみに復元工事の際に発生する撤去残滓のうち、鉄類は全部リサイクル
され、 アスファルト・コンクリートは約95%がリサイクルされたそうで
ある。


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□■□JELFからのお知らせ□■□

□ 全国景観問題交流シンポジウム
「都市景観の創造とコミュニテイの復権」にご参加下さい!

  景観問題に取り組む3名のパネリストとともに、全国の事例報告を織り
  交ぜながら、まちづくりについて考えます。
  シンポジウム
  05年10月29日(土)15時〜
  日本出版クラブ会館 中会議室
  (東京都新宿区袋町6 tel 03-3267-6111)

<シンポジウム・パネリスト プロフィール>

五十嵐敬喜(いがらしたかよし)法政大学法学部教授 

1944年山形生まれ。早稲田大学法学部卒業。弁護士。
専門は立法学。「公共事業チェック機構を実現する議員
の会」オブザーバー。東京都臨海副都心開発懇談会委員。
自宅にて、住民法律センターを開設。1955年より大学教授。
都市計画の専門家であったが、近年は公共事ついても最も
多くインタビューをうける研究者となっている。
著書に、「都市計画 利権の構図を超えて」「議会 官僚支配
を超えて」「公共事業をどうするか」「市民版 行政改革」(以上
共著、岩波書店)「図解公共事業のしくみ」(共著、東洋経済
新報社)「破綻と再生」(立法学ゼミとの共著、日本評論社)ほか


小川 明雄(おがわあきお)さん

1938年 東京生まれ。1961年東京学芸大学英語科卒業。
同年AP通信社入社。その後、朝日新聞社に移り、アジア
総局、アメリカ総局勤務を経て、外報部次長、論税委員、
国際本部編集委員。現在は、ジャーナリストとして活躍中。
著者に、 「都市計画 利権の構図を超えて」「議会 官僚
支配を超えて」「公共事業をどうするか」「市民版 行政改革」
(以上共著、岩波書店)図解公共事業のしくみ」(共著、東洋
経済新報社)「いまアメリカを読むキーワード」(共著、ダイヤ
モンド社)ほか。五十嵐敬喜氏との共著『公共事業は止まる
か』など、多数出版。
都立大跡地の景観をめぐる訴訟の原告でもある。


山下 馨(やましたかおる)さん

一級建築士 No,153417
(有)山下馨建築アトリエ :東京都新宿区
1952年東京生まれ、東京大学工学部建築学科卒業。
大手コンサルタント会社にて海外都市建築プロジェクトを経験
後、1985年現在のアトリエを設立。
日本建築家協会会員、都市住宅学会会員、神楽坂地区まち
づくりの会会員、サスティナブルコミュニティ研究会主宰、宇宙
建築ラボ主宰、共栄学園短期大学講師

現地視察
   05年10月30日(日)10時〜

   詳細はJELF HPをご覧下さい
http://jelf-justice.org/

   申し込み・問い合わせは
jelf@green-justice.com 担当 三石

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全国景観問題交流シンポジウム(10/29) 
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景観シンポ後の懇親会 (10/29)
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現地視察 (10/30)
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□ ECO Tama8号は、05年12月にお届けします。
次号は、来年度の司法試験環境法対策特集第2弾(重要論点チェックリスト)EC
をお送りします!