Mail Magazine for L.S. students issued by JELF
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■□■ ECO Tama ■□■ vol.6         2005. 8月
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*JELF は、法的手段によって環境保護運動を進める、全国約500名 の
弁護士によって構成されている環境保護団体です。
 ECO Tama=「エコ たま」とは、エコロジー・ロイヤーのたまごたちという
 意味。環境問題に対する関心を共通項として集まった仲間の情報交流
 メルマガです。 ECO Tamaは、ロースクール生の皆さんに有用な情報を提供
 するため、JELFから無料でお届けします。

*ECO Tama は、隔月間でお届けします。

*ECO Tamaの購読申し込み、JELFへの連絡・お問い合わせは
jelf-osaka@green-justice.com
までお願いします。
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□■□ CONTENTS □■□

□泡瀬(あわせ)干潟埋立公金支出差止等請求訴訟第1回期日報告 
               岐阜県弁護士会   弁護士 かな口崇

西南諸島最大の干潟といわれる沖縄県泡瀬干潟埋立の中止を目的とし、05年
5月に提訴された、沖縄県初の自然の権利訴訟の第一回期日が、7月20日那
覇地方裁判所で行われました。

□JELF環境サマーセミナー報告
                     59期修習生 吉江仁子

去る7月16日(土)および17(日)神奈川県鎌倉市において、修習生および
弁護士の方々を対象にサマーセミナーを開催しました。日本環境法律家連盟
(JELF)・公害弁連・ゴミ弁連共催で、今年で六回目を迎えるこのサマー
セミナーは、公害・環境問題の第一人者を講師に迎え充実した内容と自然と
の触れ合いで、例年、好評を頂いています。

□環境弁護士への質問
> お忙しいところ恐縮なのですが、環境に関する仕事をしている弁護士の
>方に、お伺いしたいことがあり、メールさせていただきました。
 との法学部生からのメールに、JELF事務局長の籠橋弁護士が回答

□自然の権利基金とは

□ JELF からのお知らせ
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□■□泡瀬干潟埋立公金支出差止等請求訴訟第1回期日報告
岐阜県弁護士会 弁護士 かな口崇□■□

 平成17年7月20日,我々は,泡瀬干潟埋立の中止を目的として上記訴
訟の第一回期日が那覇地方裁判所で行われました。(平成17年5月20日提起)
当日,10時から口頭弁論に先立って裁判所前の広場にて事前集会を開催し
,泡瀬干潟埋立の不当性を社会に訴えました。11時からは口頭弁論が開か
れ,原告席には代理人3人の外,22名の原告が着席し,傍聴席には報道陣
も多くみられました。本件裁判の関心の高さを伺わせるもので,代理人とし
ては身の引き締まる思いがしました。裁判では,原告らの訴状陳述,被告ら
の答弁書陳述があり,その後,原告ら本人の意見陳述がなされました。陳述
したのは,「泡瀬干潟こと小橋川共男」「ムナグロこと漆谷克秀」であり,
自然原告を代弁する形となっています。ちなみにムナグロとは泡瀬干潟を日
本最大の越冬地とする渡り鳥の一種です。即ち,今回の訴えは,県民・市民
としての権利を通じて泡瀬干潟及びそこに生息する動植物等を代弁し,泡瀬
干潟という自然環境の保全を訴える「自然の権利」訴訟なのです。この訴
訟を通じて,弁護団は,泡瀬干潟の貴重性と重要性を裁判所に訴え,また,
原告団は,その貴重性と重要性を社会に訴えることで泡瀬干潟埋立反対の社
会のコンセンサスを得,最終的には両者相まって泡瀬干潟の埋立が中止され
ることを目指していくことになります。
以上

□泡瀬干潟自然の権利訴訟について

(1)原告 ・沖縄市民、県民 590人 および
  ・泡瀬干潟こと小橋川共男
  ・ムナグロこと漆谷克秀
  ・ニライカナイゴウナこと小橋川共男
  ・ユンタクシジミこと前川菊枝
  ・ホソウミヒルモこと内間秀太郎
  ・リュウキュウズタこと新城恵美子
*ニライカナイゴウナとユンタクシジミは貝、ホソウミヒルモは海草、リュ
ウキュウズタは海藻、ムナグロは鳥の名前です。

(2)被告
   ・沖縄県 および 沖縄市

(3)請求の趣旨
   ・県と市に対し、事業への公金支出や契約締結、債務負担の差し止め
    を求める
   ・県に対し、県知事稲嶺氏個人と国に対し、支出公金20億円の損害賠
    償を請求するよう求める

(4)泡瀬干潟
    砂・れき・泥の広大な干潟(約265ヘクタール)で、沖縄県に残され
    た干潟のうち最大。生物多様性に富み、学術団体などの調査では、
    300種類以上の貝類や11種の海草類、150種類以上の鳥類が生息。
    新種や希少種の発見もあいついでいる、国際的にも大変価値のある
    干潟といえる。

(5)中城湾港泡瀬地区沖合埋め立て事業
    泡瀬沖合の約187ヘクタールを埋め立てて人工島を造り、マリーナ、
   リゾートホテルなどを、2011年頃の使用開始を目標に建設する計画。
    埋め立ての事業主体は国(約178ヘクタール)県(約9.2ヘクタール)
    総事業費は約650億円。
    沖縄市は埋め立て地を購入し整備する費用として約275億円の支出
    を見込んでいる。


□原告団のHPはこちらです
http://save-awasehigata.hp.infoseek.co.jp/index.htm

http://awase.net

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□■□JELF環境サマーセミナー 報告
        59期修習生(名古屋修習)の吉江仁子 □■□

 7月16日(土)〜17日(日)、鎌倉で行われたJELF環境サマーセミナーに
 参加しました。
 1日目の3本の講演は、大変実践的で、目から鱗が落ちっぱなしでした。
 例えば、環境調査の結果をPCを使って視覚的にプレゼンテーションして
 頂いたのですが、非常に説得的でした。これを先生は、法廷でも行われる
 そうです。きっと裁判官の五感に訴えられて、有利な心証を得られるに違
 いありません。
2日目はフィールドワーク。古都保存法制定のきっかけを作った鎌倉の
 住民に守られた美しい町並み、および、住民の運動によって今春保全が
 決定された豊かな里山の散策を、住民の方の案内で、堪能しました。日本
 文化や自然の美しさを体験できることは、JELF企画の楽しみの一つです。
 散策後に山麓のカフェテラスで呑んだビールは格別でした。来年はみなさ
  んも是非!
 〜 目に緑、耳に山鳥、よい心地 〜


□05年度サマーセミナーの概要
 初日は鎌倉市内のウェルハートピア鎌倉、研修所にていずれも環境分野の
第一人者として豊富な経験をお持ちの講師3名による講義が行われました。
翌日は、鎌倉市で景観保全に取り組む市民活動家の皆様のご案内により、
鎌倉市周辺の古都としての景観を守る活動を知るため、鎌倉市内の係争事件
の舞台や湿地などの視察を行い、観光とはちょっと違った視点で古都・鎌倉
の現在を視察しました。
 場所:神奈川県鎌倉市    
 期間:7月16日(土)朝10:00〜 7月17日(日)  
 日程:7月16日 鎌倉市 厚生年金会館「ウェルハートピア鎌倉
 講義:

 (1)廃棄物訴訟と科学者の役割について
              講師:武蔵工業大学教授 青山 貞一 
( 講師紹介)
株式会社環境総合研究所を主催し、各種の環境影響評価などを行ってい
る。 廃棄物処理場や大気汚染などの公害・環境訴訟に鑑定人、専門家
証人として出廷した経験を多数有している。
 多くの公害・環境事件に関与した経験を、科学者の立場から、若手法曹に
 伝えていただいた。

 (2)地球温暖化防止への法的戦略と国際・国内交渉
               講師:浅岡 美恵 弁護士
( 講師紹介)
 京都弁護士会所属。24期。公害問題や消費者問題に取り組んできたパイオ
 ニアとして著名。公害訴訟では水俣訴訟や薬害スモンで活躍。現在では、
 地球温暖化問題に取り組むNGO「気候ネットワーク」代表や中央環境審議会
 臨時委員など広範囲で活躍している。
 多面的な活動を展開する弁護士の魅力を語っていただく。

 (3)公害裁判            講師:馬奈木 昭雄 弁護士

( 講師紹介)
 福岡県弁護士会所属。21期。公害、廃棄物、環境などあらゆる分野で活躍。
 現在は「よみがえれ!有明海訴訟」弁護団長。
 勝利を勝ち取るための執念に充ちた活動のエッセンスをお話しいただく。

□サマーセミナーにはLS生も参加可能です。来年のご参加をご検討下さい

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□■□環境弁護士への質問 
       (ご本人の許可を得た上、匿名にて掲載しています)□■□

籠橋様

7月より購読をしている、A大学法学部3年生のBと申します。
お忙しいところ恐縮なのですが、環境に関する仕事をしている弁護士の方
に、お伺いしたいことがあり、メールさせていただきました。
大学3年という、進路を選択すべき時期にあたり、色々と迷っています。
実際に活動していらっしゃる方にお仕事のことを教えていただけたら、と思
います。
お答えいただけるでしょうか。
具体的には、日々のお仕事の中で、環境に関する仕事以外(民事など)の方
が大部分なのか、司法を通した活動の環境保護への実効性、などをお聞きし
たいです。
「環境を守る」という点でより直接に効果がある仕事、と考えると公務員な
どの方がそれに近いでしょうか。
もしお時間のご都合がつくようでしたら、返信いただけるとうれしいです。
突然のお願いで失礼いたしました 


□籠橋弁護士よりの返事

おたよりありがとうございます。
1. 弁護士の仕事
現状では環境事件だけでは事務所を維持することはできません。それでも私
が環境事件に取り組むのは弁護士生き甲斐や職業としての誇りに関わる
テーマとなっているからです。通常は民事事件を取り扱って事務所を維持し
ています。環境事件も住民からの事件紹介など間接的ながら役立っています
し、環境事件という事件の難しさが弁護士としての基本的な能力を鍛え上げ
ていく点からも役立っています。もっとも、将来的には環境事件によっても
事務所を維持できる体制は作っていきたいと考えています。現在、環境法律
家連盟とは別に「自然の権利」基金というのを運営してます。これは法的手
段によって環境保護を実現しようと言う市民団体です。環境事件のために広
く全国から会費やカンパをいただいています。現在、沖縄ジュゴン事件、
泡瀬干潟事件などいくつかの事件がこの基金によって運営されています。
弁護士の報酬を払うところまではいきませんが、かなりの実費を負担して
います。これがさらに発展して法律事務所を経営できるところまで行けば
成功ということになります。

2. 弁護士の仕事の実効性.
環境事件は公害、廃棄物、公共事業、自然保護、都市問題と多様に分かれま
す。そのうち歴史上輝かしい成果をあげたのはもちろん公害事件です。環境
派弁護士の多くが公害事件にルーツを持っています。廃棄物事件についても
多くの事件が廃棄物処理場差し止めに成功しています。また、ゴルフ場開発
など大規模開発については多くの事件について弁護士がかかわることによっ
て勝利しています。マンション事件などの都市問題については分が悪いので
すが、住民と直接対話し、住民運動とともに弁護士が活動することでどれほ
ど住民が勇気づけられるかわかりません。公共事業、自然保護問題について
も大変困難な事件ですが、大きな成果を上げています。しかし、環境問題と
いうのはきわめて広範です。さまざまな職業の人が、その関わる範囲で必ず
課題を持つことができます。世の中の様々な活動をが総合されて、少しずつ
前進するというのが環境問題です。

環境問題に対して弁護士が果たす役割はきわめて大きいものです。たった一
人の弁護士が関わることによって運動の状況が一変することは少なくありま
せん。また、人々と直接かかわり、ともに悩み、ともに喜ぶことができるや
りがいのある職業です。


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□■□自然の権利」基金とは □■□

日本で唯一の「裁判支援NGO」。日本環境法律家連盟(JELF)と連携し、法的
手段によって環境保護運動を進めるというユニークな活動をしている。19
95年に提訴された奄美「自然の権利」訴訟の支援を契機に設立。
会員は現在約1,100人。代表は動物学者の小原秀雄氏。国際自然保護連合
(IUCN)顧問や女子栄養大学名誉教授などを務める。

自然のために良い弁護士・志の高い弁護士をつけたいと願う人々のために
活動している。全国に応援を求め裁判資金を集める手助けをしている。
「自分たちの周りの自然破壊をなんとか食い止めたい」と切実に願う人々と
「遠くに住んでいるが自然のために何かしたい」と日々思っている人々との
熱い気持ちをつなげている。自然保護訴訟の現場になかなか行くことのでき
ない遠隔地の人でも、「自然の権利」基金への会費や寄付という形で、裁判
を応援することができる。裁判の様子は、年6回の会報や随時発信するメー
ルニュース等で会員に報告している。

※ 「自然の権利」基金は、広く一般市民・学生の方にご支援・入会を呼び
かけています。年会費は3,000円。詳しくは事務局にお問い合わせいただくか
、HPをご覧下さい。

「自然の権利」基金 事務局

 〒451-0031 名古屋市西区城西1-12-12パークサイドビル3階
 TEL052-528-1562 FAX052-528-1561
shizennokenri@green-justice.com
http://homepage3.nifty.com/sizennokenri/


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□■□JELFからのお知らせ□■□

□法科大学院生のための環境法勉強会+LS 環境法担当教員、LS生との交流会
にぜひご参加ください!

環境法に関心のある法科大学院生向けに、勉強会+交流会を開催します。
実際に環境問題に携わる一線の弁護士からのお話を伺ったあと、各LSで
環境法を担当(予定)の実務家教員との交流会を持ちます。

プログラム:
第一部 環境保護訴訟における弁護士の役割 
     〜沖縄ジュゴン・自然の権利訴訟
      講師  籠橋隆明弁護士、関根孝道弁護士、小林邦子弁護士、
          増田尚弁護士
第二部 交流会〜環境法についての質問にお答えします!
      LSにおける 環境法担当実務家教員
      (名大、京大・阪大・神大・関関同立等予定)
(1)関西
日 時:2005年9月9日(金)18:00〜20:00
場 所:大阪弁護士会館5F 修習室
地 図: http://www.osakaben.or.jp/main/02_access/index.html
申 込:お名前・所属法科大学院・電話番号・メールアドレスをご明記の上
9月6日までに, jelf-osaka@green-justice.com
までメールでお申し込みください。無料
 LS教員、弁護士に聞いてみたい質問があれば、同時にお伝え
 ください。
(2)名古屋
日 時:2005年9月3日(土)16:00〜18:00
場 所:愛知大学 車道校舎 1005番教室
   名古屋市東区筒井2丁目10−31
 地下鉄桜通線「車道」駅 1番出口 右折 すぐ
申 込:お名前・所属法科大学院・電話番号・メールアドレスをご明記の上
    8月30日までに,jelf@green-justice.com
 までメールでお申し込みください。無料

□ ECO Tama は、ロースクール学生の皆さんとの双方向マガジンを
  目指しています。ぜひ、ご意見ご感想、実務家への質問等、また、
  自主ゼミ・勉強会等の案内等お知らせ下さい。

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□ ECO Tama7 号は、05年9月下旬にお届けします。ECO Tama