Mail Magazine for L.S. students issued by JELF
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■□■ ECO Tama ■□■ vol.5         2005. 6月
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*JELF は、法的手段によって環境保護運動を進める、全国約500名 の
弁護士によって構成されている環境保護団体です。
 ECO Tama=「エコ たま」とは、エコロジー・ロイヤーのたまごたちという
 意味。環境問題に対する関心を共通項として集まった仲間の情報交流
 メルマガです。 ECO Tamaは、ロースクール生の皆さんに有用な情報を提供
 するため、JELFから無料でお届けします。

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jelf-osaka@green-justice.com
までお願いします。
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□■□ CONTENTS □■□

□もんじゅ訴訟、住民側逆転敗訴 05年5月30日 最高裁第1小法廷

□諫早湾干拓差し止め取り消し 05年5月16日 福岡高裁 
ECO Tama 4号に、諫早湾自然の権利第一陣訴訟敗訴
(2005年3月15日長崎地裁判決)の記事を掲載しましたが、
今回は、干拓差し止め取り消しの決定が下されました

□八ッ場(やんば)ダム建設予定地訪問記
        日本環境法律家連盟(JELF)事務局 三石朱美 
脱ダムの流れに反するかのように、03年、事業費が4600億円と
全国一に大幅引き上げとなった首都圏の「水瓶」。04年には、6都県の住民
が公金支出の差し止めを求めて住民訴訟を起こしました。
 
□環境法      弁護士・名古屋大学法科大学院講師 籠橋 隆明
環境法律家連盟事務局長でもある、籠橋先生が、LS生のための
「環境法」を書き下ろし。連載第1回

□LS紹介   上智大学法科大学院   1年  橋本 征紘 
  
□ JELF からのお知らせ
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□■□もんじゅ訴訟、住民側逆転敗訴 
               05年5月30日 最高裁第1小法廷□■□
               
 核燃料サイクル開発機構(旧動燃)の高速増殖炉「もんじゅ」を巡り、周
辺住民32人が、国による原子炉設置許可処分の無効確認を求めた行政訴訟
で、最高裁は、「83年の内閣総理大臣による『もんじゅ』に関する原子炉
設置許可処分は、原子力安全委員会および原子炉安全専門審査会による安全
審査の調査審議や判断過程に看過し難い過誤・欠落があると言うことはでき
ない。従って、許可処分が無効であると言うこともできない。」と判示。
原発訴訟で初めて住民勝訴とした名古屋高裁判決を破棄し、住民側の請求を
棄却しました 
 判決は、「原子炉設置許可の安全審査は、安全性にかかわるすべてを対象
とするものではなく、基本設計の安全性に関する事項のみを対象とする 解
するのが相当である。」また、「どのような事項が、原子炉設置の許可段階
で安全審査の対象となるべき基本設計の安全性にかかわる事項に該当するの
かという点も」主務大臣の合理的な判断に委ねられていると、行政の判断領
域を広く認めました。
 

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□■□諫早湾干拓差し止め取り消し
                   05年5月16日 福岡高裁□■□
                    
 佐賀地裁の決定した干拓工事差し止め仮処分(2004年8月26日)を
不服とし、農林水産省が申し立てていた保全抗告に対し、福岡高裁は、工事
差し止めを取り消し、国の抗告を認める決定を下しました。

□決定内容
 ・原告らの非保全権利の有無に関し
  原告漁民らは、いずれも有明海海域に漁業行使権を有している。漁業行
使権を第三者から侵害されたときは、直接その第三者に対し、妨害排除ない
し妨害予防の物権的請求権を行使できる。ただ、漁業環境が悪化したからと
いって、すぐにこれらの物権的請求権が発生するものではない。漁業環境の
悪化の内容や程度、人為的事象の内容や態様、人為的事象と漁業環境の悪化
との関連性、ひいては損害との関連性の有無や程度等を総合考慮してはじめ
て、物権的請求権の成否・内容が決定される。
 これらの事由の疎明の程度としては、一般の場合に比べて高くなる、いわ
ゆる証明に近いものが要求される。
 
 ・諫早湾干拓工事による原告らの被保全権利に対する侵害の有無に関し
 ノリ養殖の不作・タイラギ及びアサリの漁獲量の減少傾向について、
 諫早湾干拓工事と有明海の漁業環境の悪化との関連性を否定できないが、
 その割合・程度という定量的関連性が疎明されるまでに至っていない。
諫早干拓工事は、種々の複合的な原因の一つとして、有明海の漁業環境に対
して影響を及ぼすことを通じて、原告らに対して漁業被害を真垂らす可能性
が考えられるに止まる。
 九州農政局は、中・長期の開門調査を含めた、有明海の漁業環境の悪化に
対する調査・研究を今後も実施すべき責務を有明海の漁民に対して一般的に
負っている。干拓工事による計画農業粗生産額は、約2460億円という巨
費の2%にも満たない年間約45億円である。費用対効果という面からも、
調査・研究の必要性は大きい。
 
 ・諫早干拓工事と漁業被害との関連性があるという疎明、ひいては、諫早
干拓工事により原告らの漁業行使権を侵害されたという疎明があるとは未だ
いいがたい。結局、本件仮処分申し立ては、その被保全権利について疎明が
ないから、理由がない。


□諫早干拓工事を巡って現在進行中の訴訟等
 ・「自然の権利」訴訟 第二陣
 ・ よみがえれ!有明海訴訟 
 ・ 干拓事業と漁業被害の因果関係の存在を求める原因裁定
 
□高裁決定についての有明海弁護団のコメント 
→いさはやひがたネット
http://www2s.biglobe.ne.jp/~isahaya/


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□■□環境法
         弁護士 籠橋隆明(名古屋大学法科大学院講師)□■□

1. 環境法って何だろう。
 環境法が司法試験科目となりました。環境法は範囲がわかりにくいため選
択しないという声がしばしば聞かれます。しかし、環境法は他の科目に比較
すると、範囲はけっして広いわけでもありませんし、漠然としているわけ
でもありません。環境法は@環境法形成の歴史的経緯、A環境法の理念、B
環境法の分野3つの視点から考えることができますから、それに沿って、環境
法の体系について簡単に概略をお話しします。

2. 環境法形成の歴史的経緯
 環境法は不法行為など民法等に関する環境私法とも呼ぶべき分野、行政事
件などに関する環境公法とも呼ぶべき分野、刑事事件に関する環境刑法とも
呼ぶべき分野、さらに地球環境問題に関連する国際環境法とも呼ぶべき分野
に別れます。
 我が国の環境法は言うまでもなく公害事件を中心に展開してきました。悲
惨な公害事件に対して企業に対する不法行為責任の追及に始まり、公害防止
、救済措置についても国家の責任も追及するようになりました。さらに最近
では騒音、大気汚染、などを理由にした差し止め請求事件も原告側が勝訴す
るようになっています。
 公害の抑制、事前の防止は国や自治体の責任であることが意識されるにつ
れて、国や自治体の行政のあり方も問題されました。特に住環境の保全、道
路や緑地の配置といった都市政策、河川、森林、海岸といった自然物の有り
様などは国土政策そのものと言ってよいと思います。都市環境や自然環境の
保護は国土に対する行政のあり方が問われてきたのです。そのため、環境問
題は行政法の分野での発展も遂げてきました。
 こうして、民事、行政の両分野で環境法は発展してきました。さらに、グ
ローバリゼーションの進展により地球全体の視点から環境保護問題が取り上
げられるに及んで国際法の分野でも活発に論議されています。
  
  
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□■□八ッ場(やんば)ダム建設予定地訪問記
        日本環境法律家連盟(JELF)事務局 三石朱美 □■□
 
4月2日〜3日、群馬県の川原湯温泉でJELF総会がありました。ここは
、八ッ場ダムが建設されたらダムに水没してしまうという温泉地です。
東京・上野から特急草津号に乗って約2時間半、右に左に現れる山々と谷底
の川を眺めながらの旅を終え、川原湯温泉駅に到着しました。駅から続く道
筋のそこかしこに、 かつて家が建っていた痕跡の残る広場があり、長期にわ
たるダム建設計画の中で、だんだん元気を失ってきた、静かな温泉街があり
ました。
参加者約25名の弁護士たちは、まず、八ッ場ダム問題を中心としたダム弁
護団会議を行い、夜には旅館の窓から出会えるムササビの食事風景を楽しみ
ました。
翌3日は、一同、バスに乗って元気に?現地視察を行い、強酸性の水を農作
業や飲料水として使うため、水質改善を目的として建設され、そのため、湖
面が不思議な色をたたえる品木ダムや、草津中和工場、ダムサイト建設予定
地となる吾妻渓谷をずんずん歩き、最後にダム湖水没予定地の全体像を見ま
した。
道中、「お昼ご飯に食べようと思っていたうどんを誰が食べちゃったんだ事
件」や、「花粉症がひどくてつらいよ、何にも見れないよ(T_T)事件」など
、いくつかの事件が発生しましたが、視察最後に出会えた野生のカモシカが
、水を飲んで立ち去る前に、じっと私たちのバスを見つめていた姿に「先生
たち、よろしくね」という声が聞こえた のは、きっと、私だけではなかった
と思います。

八ッ場ダムを考える会 HP:http://www.yamba-net.org/
ダム予定地と川原湯温泉 HP:http://www.kawarayu.jp/dam/dam.htm
川原湯温泉 HP:http://www.kawarayu.jp/

参考文献 「八ッ場ダムは止まるか〜首都圏最後の巨大ダム計画」
      八ッ場ダムを考える会 編
      岩波ブックレットNo.644

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□■□上智大学法科大学院  
               1年  橋本 征紘  □■□
              

上智大学に本年度、新たに大きなビルが完成しました。
中央線の車窓からも見える、そのビルの二階が、上智大学法科大学院専用
フロアとなっています。
そこには通常の講義室はもちろん、模擬法廷教室、図書室、ラウンジ、自習
室、個人ロッカーなどが備えられ、快適な学習環境が整えられています。
また、学生間の交流も、メーリングリストを使った情報のやりとりやサッカ
ーのメンバー集めなど、盛んに行われています。ちなみにサッカーは 、他校
のロースクールとの交流試合が行われており、忙しいこの期間をできるだけ
楽しく、有意義に過ごそうという雰囲気を味わえます。
また、講師陣は、研究、実務において第一線で活躍されておられる方ばかり
で、特に実務に携わっておられる先生の講義は、未来への想像力をかき立て
ます。
ここで学ぶことは、人間としても、大きく成長するチャンスであると、感じ
ずにはいられません。

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□■□JELFからのお知らせ□■□
 
    
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