Mail Magazine for L.S. students issued by JELF
______________________________________________________________________
_____________________________________________________________________

■□■ ECO Tama ■□■ vol.4        2005.3〜4月
______________________________________________________________________

*JELF は、法的手段によって環境保護運動を進める、全国約500名 の
弁護士によって構成されている環境保護団体です。
 ECO Tama=「エコ たま」とは、エコロジー・ロイヤーのたまごたちという
 意味。環境問題に対する関心を共通項として集まった仲間の情報交流
 メルマガです。 ECO Tamaは、ロースクール生の皆さんに有用な情報を提供
 するため、JELFから無料でお届けします。

*ECO Tama は、隔月間でお届けします。

*ECO Tamaの購読申し込み、JELFへの連絡・お問い合わせは後掲の
メールアドレスまでお願いします。
______________________________________________________________________
□■□ CONTENTS □■□
□沖縄ジュゴンNHPA訴訟中間判決勝訴!
 ECO Tama 1号でも紹介しましたが、JELFをはじめ日米の環境保護活動家
 が 、辺野古(米軍普天間飛行場代替施設の建設予定地)の藻場を重要な
 えさ場としている沖縄ジュゴンの保護を求めた裁判の中間判決で勝訴しま
 した。(3月2日)

□諫早湾自然の権利(ムツゴロウ)訴訟却下

□法科大学院生のための環境法シンポジウム
〜環境法って何だろう?環境問題の先端からのメッセージ
(05年3月12日東京にて実施)
    報告           東京大学法科大学院 丹治 日子太 
LS生有志で結成されておられる「環境法研究会」とJELFの共催で、立教大学
淡路剛久教授をお招きし、環境法シンポジウムを開催しました。
当日は、60名余のLS生のご参加をいただき、盛会となりました。

□LS紹介     久留米大学法科大学院  標準履修者 1年 岡野 英克

□ JELF からのお知らせ
・日本弁護士連合会編「ケースメソッド 環境法」(日本評論社)発行
実際にその事件を担当した弁護士が環境事件を解説。JELF所属の弁護士も執
筆しています。環境法の演習書におすすめ。

・あなたの街、あなたのLSで「環境法勉強会」を開きませんか?
〜実務家講師を紹介いたします

______________________________________________________________________
□■□沖縄ジュゴンNHPA訴訟中間判決勝訴!□■□

米軍普天間飛行場代替施設の建設予定地、辺野古沖の藻場を重要なえさ場と
している沖縄ジュゴンは、現在ではわずか数十頭はど生息しているだけであ
り、IUCN(国際自然保護連合)も2度にわたって保護勧告(2000年、2
004年)を出している。
JELF、Earthjustice をはじめとする、日米の環境保護活動家たちは、20
03年9月、米国防総省長官を被告とし、普天間飛行場の辺野古海域への移
転の見直し。少なくとも、ジュゴンを保護するための方策がとられるまでの
延期を求めて米連邦裁判所に提訴していた。
サンフランシスコ米連邦地裁は、3月2日、被告の国防総省から出されてい
た訴え却下の申し立てを退け、実体審理に入ることになった。
この訴訟は、米国国家史跡法(National Historic Preservation Act, NHPA)
に基づくものであり、日本の文化財保護法で天然記念物として保護されてい
る沖縄ジュゴンがNHPAでも域外適用として保護の対象となるかが争点となっ
ていた。今後訴訟は、代替施設の建設がジュゴンに重大な影響を及ぼすのか
という点が争われる事になる。

□被告側の主張
 (1)NHPAの対象は歴史的に価値のある場所や建造物などで、ジュゴンの
 ような動物は対象にならない。則ちNHPAの域外適用の要件である「同質性
 」 を充たしていない。 
 (2)仮に適用対象となるにしても、米国政府は代替施設の建設に係る予
 定地の選定・資金調達・建築工事に関与していない。代替施設はあくまで
 も日本政府が作るのであるから、NHPAは適用されない。

□本判決の概要
 (1)どのような形式によって、どのような対象を保護するかは、その国
 によって様々であり、NHPAとの同質性の判断をするに当たっては、その国
 の法律の趣旨・目的の共通性を考慮すべきである。ジュゴンは沖縄の人々
 の文化と生活に重要な意義を有しているがゆえに、文化財保護法によって
 保護されているのである。従って、ジュゴンはNHPAの保護対象となる物
 (property)に該当する。
 (2)96年SACO合意、97年ORの策定、その前後の国防総省の数億円に
 およぶ予算措置などは、米国政府の関与と指示に基づいてなされている。
 従ってNHPAの域外適用のための連邦行為性の要件も充たされる。

□本判決の全体的評価   関根孝道弁護士
  @原告の完全な勝訴である。
 ANHPA(米国文化財保護法)の域外適用されるかどうかの法律判断だ
 けでなく、その前提となる事実関係にもかなり踏み込んだ実体的な判断を
 おこなっている。
 B日本の文化財だけでなく、全世界の文化財にもNHPA適用の途をひら
 く射程の広い判断をしている。
 C米軍・米国防省といえども、法の支配の下にあり、NHPAの適用をま
 ぬかれない
 D結論として、
 (1)沖縄ジュゴンは日本の文化財保護法で保護されている以上、
 NHPAによっても保護されている。
 (2)96年SACO合意、97年ORの策定、その前後の国防省の数億
 円におよぶ予算措置などで、米国の関与が認められ、NHPAの域外適用
 のための連邦行為性の要件も充足される。
 (3)横須賀NEPA訴訟の射程は、本件NHPAの域外適用訴訟には及
 ばない。
 (4)日本の国家主権との関係では、本件訴訟は、米国国防省の行為を対
 象とし、それへの米国法の適用を米国裁判所にもとめるもので、米国裁判
 所の管轄権のものである。
 それゆえ、裁判所は、NHPAの域外適用如何に関する訴状却下の申立に
 対する法律判断を示すという当初の申立範囲をことを超えて、NHPAの
 域外適用の前提となる法律的・事実的な事項一般についても判断を示す、
 中間判決をおこなう。
 その中間判決は、上記のように、原告側の完全勝利で、今後は、原告の求
 める情報開示手続を経て、実体審理に入り、最終的な判断に入ることにな
 った。
■ National Historic Preservation Act
Section 402

Prior to the approval of any Federal undertaking outside the
United States which may directly and adversely affect
a property which is on thet World Heritage List
or on the applicable country's equivalent of the National
Register, the head of a Federal agency having direct or indirect
jurisdiction over such undertaking shall take into account
the effect of the undertaking on such property for purposes of
avoiding or mitigating any adverse effects.

_____________________________________________________________________

□■□諫早湾自然の権利第一陣訴訟 一審敗訴 □■□

諌早湾干拓事業に対しては、現在本訴訟を含め5件が提訴されています。本
件はそのうち「自然の権利」を争う訴訟の「一陣」とされ、湾が潮受け堤防
で締め切られる前の1996年7月に、干拓工事の差し止めを請求して提訴
されました。
2005年3月15日の長崎地裁判決では、「人格的利益に対する侵害の事
実や侵害が切迫している事実を具体的に主張しておらず、十分な立証もして
いない」と訴えを棄却。また、「自然の権利」についても「現行法上の根拠
がなく、自然物に当事者能力を認められない」として、生物からの訴えは
却下しました。
この、自然の権利第一陣訴訟についての概説を「自然の権利」HPより抜粋。

『原告 諫早湾(干潟と泉水海)・ムツゴロウ・ハイガイ・ズグロカモメ・
ハマシギ・シオマネキ
 諌早湾とそこに住む野生生物、そしてその代弁者として諌早湾周辺に住ん
でいる人々が、法務大臣を訴えました。自然原告としては、自然の権利訴訟
で初めて、海そのものが原告に加わりました。1996年7月16日提訴。

 諌早の干潟を国営事業として大規模に埋め立てて、田んぼを作り米を作ろ
 う、という計画は以前からあり、当初は漁師さんや干潟に面 した地域の
 農家の人たちが反対運動をしていました。そのおかげで、計画面積が縮小
 されたりはしたのですが、やっぱりなにがなんでもやらにゃならんのが、
 公共事業。さすがに減反が世の流れであっては「米を作ります」では通
 じなくなったので「防災のため」という名目を前面に出しながら着々と海
 を仕切る潮受け堤防工事が進み、1997年4月14日には、「ギロチン」と呼
 ばれる潮止め工事が実行され、干潟と海が切り分けられました。このとて
 もインパクトある映像のおかげで、ようやく全国の人々に知られるように
 なりました。この間のことは盛んに報道されているので、ここでは省略し
 ます。
 この裁判を最初に決意したのは、干潟で育った原田敬一郎さんです。お父
 さんは諌早湾で海運業を営み、地先干拓(昔から行われていた自然の力を
 利用した干拓)のための石材を運んだりしたそうで、原田さんも5歳まで、
 船の上で暮らしたそうです。お父さんは今は引退し、干潟でムツゴロウな
 どを取るのを楽しみにしてきました。原田さんも、最近干潟がみんなから
 忘れられ、ごみ捨て場と化しているのが気になって、干潟清掃をしていま
 した。そんなときに縁あって奄美自然の権利訴訟を担当している籠橋弁護
 士の話を聞き、干潟やムツゴロウの代弁を思い立ったそうです。それを、
 干潟保護でならした山下弘文さんに相談したところから、本当に裁判をす
 ることになりました。原田さんはムツゴロウを、山下さんは干潟そのもの
 の代弁者として裁判に臨んでいます。
 「ムツゴロウを守れ」ではなく、「ムツゴロウがとれ、渡り鳥たちがやっ
 てくる干潟をいつまでも干潟のまま残してくれ」というのが、原告たちの
 願いです。諌早湾そのもの(生き物ではない、自然物そのもの、というこ
 と)を原告にした点も、この裁判の特徴です。』
http://homepage3.nifty.com/sizennokenri/soshou.html

諫早湾干拓事業に関しては、2004年8月26日に、佐賀地裁において、
工事続行禁止の仮処分命令が出されています。他にも下記の裁判等が進行中
であり、また、一陣原告は福岡高裁への控訴申し立ても検討しています。
環境保全のための、ねばり強い闘いによって有明海が再生することを祈って
止みません。

現在進行中の訴訟等
 よみがえれ!有明海訴訟 本訴
http://www.h5.dion.ne.jp/~n-ariake/index.htm
 諫早干拓事業同意・漁業権放棄等基本契約無効確認請求事件(長崎地裁)
http://homepage3.nifty.com/sizennokenri/soshou.html  参照
 「自然の権利」訴訟 第二陣
 干拓事業と漁業被害の因果関係の存在を求める原因裁定

いさはやひがたネット
http://www2s.biglobe.ne.jp/~isahaya/
______________________________________________________________________
□■□法科大学院生のための環境法シンポジウム
〜環境法って何だろう? □■□

2005年3月12日 東京茅場町・商事法務研究会会議室にて開催

□プログラム
 第一部 基調報告 「環境法の過去・現在・未来」
     淡路剛久教授(立教大学法務研究科)
 第二部 講演 「環境法って面白い!環境弁護士からの報告」
     講演1「環境弁護士として生きる」
     籠橋隆明弁護士(日本環境法律家連盟事務局長)
     講演2「弁護士から見た都市環境〜マンション問題から
         街づくりまで〜」
     日置雅晴弁護士(日弁連公害対策・環境保全委員会委員)

□「法科大学院生のための環境法シンポジウム」感想
  東京大学法科大学院    丹治 日子太

 環境弁護士になるべきか、ならざるべきか、それが問題だ、と悩めるハム
 レットな日々に光明がもたらされたようなシンポジウムでした。会場は大
 入り満員。これだけの方々のネットワークが構築可能ならば、知恵も、人
 手も、お金も、協力しあえると心強い限り。勿論、淡路先生の学術、籠橋
 先生の自然環境、日置先生の都市環境、それぞれの分野のお話はとても参
 考になる内容で、中でも、環境法は意外と「論点」が少ないということ、
 環境弁護士も結構「食っていける」という件は、切実に心に響いたのでし
 た。

□質疑応答より 
Q.新司法試験で環境法を選択するのは得策か?
A. 環境法は、憲法・行政法と重なる部分が多いので効率的に勉強できる。
 また新司法試験では出題範囲が絞られたので、負担が少なくなっている。
 環境法に興味・関心があるのなら、ぜひ選択すべき。
←JELFでは、LS実務家教員会員のご協力を得て、新司法試験用環境法論点表
を作成予定です。

Q.環境弁護士として生計を立てていけるのか?
A.現在多いパターンは、一般の事件で稼ぎ、環境事件はプロボノ的にやって
いるケース。今後は、弁護士数も増加することから、経営戦略上も自分の得
意分野を持つことが重要になってくる。やり方によっては、環境事件だけで
も十分やっていける可能性はある。
←日本にも、Earth Justiceのような環境法律事務所が開設される日が近い?

______________________________________________________________________
□■□久留米大学法科大学院  
              標準履修者 1年 岡野 英克  □■□


 久留米大学法科大学院(以下「久留米ロー」と言う)の最大の特徴は、小人
 数制と教員1人あたりの学生数の少なさです。現在、学生41人に対して教
 員が16人、実に学生2.5人に教員が1人という数字です。このことは統計上
 の数字とは異なった次元において、学生・教員間及び学生・学生間のアク
 セスが効率よく行われるという現実として感じることができます。また、
 久留米ローでは、学生4〜6人に一つの研究室と各学生に勉強机及びロッ
 カーが割り当てられており、教科書や参考書の他、身の回りのものを置け
 るようになっています。したがって、授業と授業の合間に自分の研究室で
 前の授業の復習をしたり、次の授業の予習をしたりということが計画的に
 でき、この結果、学生も教員も余計なストレスを溜めずに学習・研究に集
 中することができます。
 さらに、学期中・休暇中を問わず補講が行われており、授業で理解できな
 かった部分や授業で行った講義をさらに応用する問題について小人数で議
 論するということも行われています。これらの補講は、基本的にはいわゆ
 る純粋未収者を対象としたものですが、その他の学生にも門戸は開かれて
 おり、とくに応用編の補講には既習者も参加したりして議論を共有するこ
 とによって全体のレベルアップに成功しています。これらの補講のうち、
 実務家(主に弁護士)の教員や外部講師の補講はその内容も実務的でレベ
 ルが高くかつ興味深いものが多いので、多くの学生に人気があります。
 最後に是非宣伝しておかなければならないのは、文武両道を是とする我が
 久留米ローにはサッカー部があるということです。男子学生の半数以上、
 さらにマネージャーやサポーターとして女子学生が参加しており、大学の
 職員チームや福岡県の弁護士会チームと交流試合を行うなど積極的な活動
 を行っています。近々九大ローとの練習試合を計画しており、部長の僕と
 してはこの交流試合を制度的なものとして全県に広げたいと目論んでいる
 ところです。


______________________________________________________________________
□■□JELFからのお知らせ□■□

□ 日本弁護士連合会編「ケースメソッド 環境法」(日本評論社)が発行
 されました。
 実際にその事件を担当した弁護士が環境事件を解説するという、超実践的
 な本です。(籠橋先生もアマミノクロウサギ訴訟について執筆されていま
 す! 訴状や証拠・現場写真を収録した資料版CD-ROMがおまけ(?)につ
 いていま す。「コラムも役に立つよ」とのことです。 環境法の演習書
 におすすめし ます。ちなみに日本評論社から宣伝料はもらってませんの
 で、念のため^-^
□ JELFでは、各地でLS生対象の勉強会を主催・学生と共催しています。
あなたの街、あなたのLSで「環境法勉強会」を開きませんか?
 勉強会のグループでお申し込みいただければ、 実務家講師を紹介いたし
 ますので、ご相談下さい。
 また、環境法に関する相談は随時受け付けておりますので、お気軽にメー
 ルにてお問い合わせ下さい。

□ ECO Tama は、ロースクール学生の皆さんとの双方向マガジンを
  目指しています。ぜひ、ご意見ご感想、実務家への質問等、また、
  自主ゼミ・勉強会等の案内等お知らせ下さい。

□ 購読者募集中!お友達にもECO Tama をご紹介下さい!
  購読の申し込みは、
jelf-osaka@green-justice.com
  まで、お名前、学校名、学年をお知らせ下さい。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━