Mail Magazine for L.S. students issued by JELF
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■□■ ECO Tama ■□■ vol.3        2005.1〜2月
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*JELF は、法的手段によって環境保護運動を進める、全国約500名 の
弁護士によって構成されている環境保護団体です。
 ECO Tama=「エコ たま」とは、エコロジー・ロイヤーのたまごたちという
 意味。環境問題に対する関心を共通項として集まった仲間の情報交流
 メルマガです。 ECO Tamaは、ロースクール生の皆さんに有用な情報を提供
 するため、JELFから無料でお届けします。

*ECO Tama は、隔月間でお届けします。

*ECO Tamaの購読申し込み、JELFへの連絡・お問い合わせは後掲の
メールアドレスまでお願いします。
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□■□ CONTENTS □■□

□馬毛島の採石事業差し止め訴訟、請求棄却
 鹿児島県西表市沖の馬毛島での採石事業を巡り、地元の漁業関係者や住民
 ・ 自然保護団体が、島の大半を所有する「馬毛島開発」に事業差し止め
 を求めた訴訟で、鹿児島地裁は2004年12月14日、事業を禁止した
 仮処分(2002年)から一転、原告の訴を棄却しました。

□第3回法科大学院生のための環境法学習会(05年1月9日実施)報告
                 一橋大学法科大学院 佐藤 穂貴 
 本学習会は、東京在住のLS生の皆さんが企画・実施されています。
 将来弁護士として環境問題に取り組みたいと考えている法科大学院生向け
 に、現在環境訴訟に携わっている弁護士の方などをお呼びして、具体的な
 環境紛争についてお話を伺う学習会です。
 今回は、樋渡俊一弁護士を講師にお招きし、日の出の森関連訴訟について
 、またごみ問題の解決のために必要なことなどについて伺いました。

□LS紹介         鹿児島大学法科大学院  徳永 晶子

□ JELF からのお知らせ

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□■□馬毛島の採石事業差し止め訴訟、請求棄却 □■□


 馬毛島(まげしま)は、種子島西沖合12kmに浮かぶ周囲12km、
 面積8.5平方キロメートルの日本で2番目に大きい無人島です。平坦
 (最高標高71.1m)ではあるが、黒潮と北西季節風の影響で寒暖差
 が大きく、場所によって大きく異なる環境とそれに由来する豊かな陸上
 生態系を有しています。現在約500頭ほど生息するマゲシカは、同島
 だけに生息するニホンジカの亜種で、馬毛島での生活に適した独特の生態
 を有していることが明らかにされています。また、小島であるにも関わら
 ず複数の河川が流れ、天然記念物のオオヤドカリや在来種のめだかが生息
 しています。これらの河川は、有機物やミネラルを周辺海域へ供給し、
 豊かな漁場を育んでもいるのです。
 このような豊かな自然も、現在では島の99%を所有する馬毛島開発
 (西表市)によって急激にその姿を変えつつあります。同社による開発
 事業を巡っては、軽飛行機離着陸場の建設・砂利採取の禁止を求める仮処
 分申請など7件の訴訟が起こされています(04年12月現在)。本判決
 は、一連の訴訟では初めての判決となりましたが、「土砂流出による漁業
 被害の可能性がある」などとして工事差し止めを命じた仮処分(2002
 年2月)とは一転。「汚濁水が流出する危険は認められず、漁業権を侵害
 していない」などとして原告の訴えを退けました。

本判決の概要
(1) 漁業権の侵害 2002年2月の仮処分決定後に汚濁水が流出しな
いような措置が講じられていると指摘。開発区域から汚濁水が流出する具体
的・現実的危険があるとは認められない。
(2) 自然享有権・自然の権利 自然享有権・自然の権利の、実定法上の
根拠となる規定は見い出し難い。これらの権利の効果として、私人を相手に
差し止め請求を認めるのは困難

参考文献
 「馬毛島裁判報告 馬毛島訴訟弁護団代表 菅野 庄一」
  (環境と正義 43号)
 「馬毛島保全の根拠と方策ー生態学の立場から
          京都大学理学部動物生態学研究室 立澤 史郎」
  (環境と正義 53号 54号)
馬毛島の情報はこちら
http://magenshima.web.infoseek.co.jp

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□■□日の出の森 ごみ処理場問題をめぐって(環境法学習会報告)
           一橋大学法科大学院  佐藤 穂貴 □■□

 法科大学院生のための環境法学習会も第3回を数えることができ、今回は樋
渡弁護士にお越しいただき、日の出処分場問題を取り上げた。元々森林に恵
まれ豊かな土地であった日の出町になぜ廃棄物処分場、さらにはエコセメン
ト施設までが集中して建設されているのかといった問題背景の解説の後、こ
れまで住民と処分組合等の間で争われてきた紛争ごとに、その経緯をお話い
ただいた。公害防止協定に基づく汚染データの情報開示請求を巡る議論が、
廃棄物処理法の改正にも影響を与えたことや、処分場の建設差止請求におい
ては、環境問題特有の因果関係の証明の困難さや、その立証についての最近
の議論など、広がりのある内容について興味深く伺うことができた。更には
、これまで経済活動を阻害しない範囲でのみ進められてきた日本の廃棄物政
策に対し、今後目指すべき循環型社会像についての示唆も頂けたのではない
かと思う。
 質疑応答では、一部事業組合になんとか情報開示させる手立てはないのか
、民主的コントロールをいかに及ぼすか質問がなされ、情報公開条例の必要
性が確認された他、廃棄物問題を巡っては住民の意見が統一されることは必
ずしも容易ではないことや、弁護士としての関わり方などについて伺うこと
ができた。
 廃棄物を巡る多様な紛争形態とその対応手法、現状の壁と必要な理念など
、今回の学習会を通して、学生にとって学ぶべきことが多く明らかになった
のではないかと思う。


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□■□鹿児島大学法科大学院紹介  
                児島大学法科大学院 徳永 晶子□■□



鹿児島大学法科大学院は、1学年定員30名、未修コースのみの大変小さな
法科大学院です。私達第1期生は、31名。新卒と社会人出身が、約半々。
小規模ながら、年齢も20代から40代までおり、これまでの経験等も多彩
ななかなかおもしろい人材の揃った大学院です。
鹿児島大学法科大学院が位置する南九州という地は、多くの離島を抱え、い
わゆる司法過疎と呼ばれる地域です。この司法過疎と呼ばれる地域に位置す
る法科大学院の法曹養成の一つの大きな特色として、離島屋久島における「
リーガルクリニック」実習があります。
屋久島というのは、皆さんよくご存知の世界遺産の島です!ここは、自然は
世界第1級ですが、法律という世界ではまさに司法過疎地域です。司法過疎
地域では、住民は法律上の悩みがあっても法律相談をする場がない。権利が
あっても行使する方法を知らずに権利を放棄せざるを得ず、権利侵害がなさ
れても除去する術を知らずに泣き寝入りをしてしまう。更に未然に防げる法
的紛争も予防措置を採れずに放置することになってしまうという状況があり
ます。この屋久島で、私たち鹿児島大学法科大学院生は、2年次、全員必修
科目として、法律相談を中心とする実習を受けるのです。法曹としての責任
、難しさ、やりがい、様々なものを経験できる良い機会を得られるのではな
いかと、2年次を楽しみにしているところです。
また鹿児島大学法科大学院では、小規模校だけに生徒はもちろん、教員との
コニュニケーションが非常に密です。それがとても嬉しいですね。24時間
年中無休の自習室や一人1台貸与のPCなど学習環境もとても恵まれています

さらに鹿児島大学法科大学院では、少人数大学院のデメリットを補う為に、
九州大学法科大学院・熊本大学法科大学院と教育連携が結ばれています。そ
れぞれの大学院間で高速通信回線が敷設され、テレビ会議システムを使った
双方向遠隔授業などが行われています。1年前期には、九州大学法科大学院
の方々と合同で授業などがあり、後期の今は九州大学法科大学院長による授
業を受けたりなどをしています。大変楽しいです。
九州の南端から、大いに活躍できる法曹めざして、皆日々頑張っています。
どうぞよろしくお願いします!



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□■□JELFからのお知らせ□■□

□ 本年もよろしくお願いいたします。
  JELFでは、各地でLS生対象の勉強会を主催・学生と共催しています。
  3月には、東京で法科大学院生対象の環境法シンポジウムを共催予定で
  す。詳細は、次号(3月上旬発送予定)でお知らせいたします。
  また、環境法・環境問題の勉強会も全国展開していきたいと考えており
  ますのでご期待下さい。 
□ ECO Tama は、ロースクール学生の皆さんとの双方向マガジンを
  目指しています。ぜひ、ご意見ご感想、実務家への質問等、また、
  自主ゼミ・勉強会等の案内等お知らせ下さい。

□ 購読者募集中!お友達にもECO Tama をご紹介下さい!
  購読の申し込みは、
jelf-osaka@green-justice.com
  まで、お名前、学校名、学年をお知らせ下さい。


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