Mail Magazine for L.S. students issued by JELF

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━2010/12/24 配信━━
                             
■□■ ECO Tama ■□■ 23号   
2010.10月〜2010.12月

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*JELFは、法的手段によって環境保護運動を進める、全国約550名 の弁
  護士によって構成されている環境保護団体です。
  ECO Tama=「エコ たま」とは、エコロジー・ロイヤーのたまごたちという
  意味。環境問題に対する関心を共通項として集まった仲間の情報交流メルマ
  ガです。 ECO Tamaは、ロースクール生の皆さんに有用な情報を提供するため
? JELFから無料でお届けします。

*ECO Tama は、3ヶ月ごとにお届けします。

*ECO Tamaの購読申し込み・お問い合わせは、JELF大阪支部
  jelf-osaka@green-justice.com
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*ECO Tama のバックナンバーは、JELFホームページにてご覧いただけます。  
  URL: http://www.jelf-justice.org

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┃ C ┃ O ┃ N ┃ T ┃ E ┃ N ┃ T ┃ S ┃
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┃◆ 「よみがえれ!有明」訴訟・開門訴訟で国側が上告断念! 

┃◆ 大阪・泉南アスベスト国賠訴訟 勝訴判決とその後

┃◆ 信託法・相続法を使って環境NGOを応援しよう!
┃ 
┃◆ 司法試験合格祝賀講演会を開催しました
┃  〜東京・名古屋・大阪同時開催
┃ 
┃◆ JELFからのお知らせ

┃◆ あとがき


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  ◇◆◇「よみがえれ!有明」訴訟・開門訴訟で国側が上告断念!◇◆◇     
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★有明訴訟とは?★

国営諫早湾土地改良事業(諫早湾干拓事業)は、有明海最大の肢湾である諫早湾
の湾奥部約35.4平方キロメートルを、全長約7キロメートルの潮受堤防によって
締め切り、調整池と農地を造成する事業です。
1989年の工事開始時から水質の悪化等が指摘され、さまざまな反対運動が展開
されてきましたが、1997年4月、高さ7メートルの鉄板293枚が落とされ、潮受堤防
の水門が閉じられてしまいました。これにより、日本最大の干潟であった諫早湾干潟
とその前面浅海域に有明海の海水が届かなくなり、魚介類をはじめそこに生息して
いた生物は死滅し、それらを餌とする渡り鳥も姿を消しました。干潟の消滅により、
諫早湾だけでなく有明海全体の漁業が壊滅的な打撃を受け、かっては「豊穣の海」
「宝の海」とも呼ばれた有明海は、「死の海」になりつつあります。
この状況をなんとしても変えるべく、工事の差止め、堤防の撤去、開門調査、公金
支出の差止め等、多くの訴訟が提起されました。「よみがえれ!有明」訴訟とは、
これら一連の裁判の総称です。

★開門訴訟で国側が上告断念!★

事業の一時凍結をはかるべく、2002年から2005年にかけて、堤防工事の差止め、

堤防の撤去、排水門の開門と開門を前提とした調査等を求めて複数の訴訟が提起
され、最終的に原告は2,500名を超えました。
そして、2008年6月27日、佐賀地方裁判所において「判決確定後3年までに潮受

堤防の排水門を開放し、以後5年間にわたって水門の開放を継続せよ」との、原告
の請求を一部認容する画期的な判決が言い渡されました。
これに対して原告・被告の双方が控訴していましたが、本年12月6日、福岡高裁で
控訴は棄却され、国側が上告するか否かが注目されていました。
そして、上告期限目前の今月15日、菅直人首相は上告断念を表明し、判決は確定
することになりました。
判決確定により、中・長期の開門調査が実施され、大型公共工事の根本的な見直
しが実現することが期待されています。

▼リンク:「よみがえれ!有明」訴訟について
  http://www.f-rn.org/images/pdf/ariake-gaiyo.pdf

▼リンク:福岡高裁判決骨子
http://www.jelf-justice.org/prefecture-map/documents/201012isahaya-highcourt1.pdf


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  ◇◆◇大阪・泉南アスベスト国賠訴訟 勝訴判決とその後
                    −早期解決へ向けて ◇◆◇
    大阪じん肺アスベスト弁護団 弁護士 伊藤 明子(兵庫県弁護士会)      
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※前号でお伝えしたとおり、本年5月19日、大阪地方裁判所は、大阪泉南地
  域の元労働者ら26名のアスベスト被害に対する国の不作為責任を認め、総
  額4億3505万円の支払を命じる判決を言い渡しました。
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★判決後2週間の闘い〜控訴断念表明から一転、控訴へ★

判決後、原告団、弁護団、支援団体は、国に対して控訴断念と早期解決を求め
る大きな運動を展開した。
正に、控訴断念は世論であった。
5月28日。ついに、早朝の閣僚会議で、主務大臣である長妻厚生大臣が控訴
断念の意向を表明し、小沢環境大臣も同調した。しかし、鳩山首相が仙石国家
戦略担当大臣に対応を一任し、6月1日、国は、控訴断念を判断するには時間
的に短すぎるなどとして、控訴した。
(役職名は、いずれも当時のものです)

★早期解決に向けて、この秋第2ステージへ★

泉南アスベスト被害は、公式確認後実に70年以上、裁判所の違法判断時から
もすでに50年以上が経過し、何よりも被害者の早期救済、とりわけ国による
救済が不可欠・急務である。国の控訴は、司法判断を踏みにじり、また原告ら
の期待と信頼を裏切り、いたずらに被害者の苦しみを引き延ばす極めて不当な
ものである。提訴後4年を経過し、判決を聞くことなく無念の死を遂げた被害
者原告は3名。生存原告も、高齢化と病気の重篤化が進んでいる。
7月29日には第2陣訴訟第3次提訴を行い、泉南アスベスト国賠原告団は第
1陣・第2陣あわせて原告61名・被害者47名となった。今秋11月からは
控訴審の審理がはじまる。
私たちは、早期解決に向けて、控訴審裁判所に対しては11月17日の第1回
期日で和解勧告を行うことを、国に対しては一刻も早い解決を決断することを
強く求めていく。
水俣病は、国が上訴を繰り返したため、国の責任を認めた司法判断から23年
が経過した現在も完全に解決していない。国に、同じ過ちを繰り返えさせては
いけない。泉南アスベスト被害の早期解決を目指す私たち原告団・弁護団を、
どうか応援していただきたい。

▼リンク:大阪じん肺アスベスト弁護団
  http://www.asbestos-osaka1.sakura.ne.jp/


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  ◇◆◇信託法・相続法を使って環境NGOを応援しよう!◇◆◇
                 弁護士 室谷 悠子(大阪弁護士会)      

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★思いをかたちにする相続・思いをかたちにする信託★

〜例えば、こんなケース〜

『Aさん75歳は、長年に渡り、たくさんの生き物の棲む美しい干潟を開発から
守るため、自然保護団体をつくって運動をしてきました。
Aさんは、自分が亡くなっても、この運動が続いていくように、自分の資産
を、死後、この団体に寄附したいと考えています。
Aさんには子どもはおらず、妻は既に亡くなりましたが、資産の一部は80歳
になる兄の老後の介護のために残してあげたいと考えています。』

干潟を守りたい、自然環境を守りたい、というAさんの思いは、遺言書を書き、
遺贈をすることで、ある程度実現することができます。しかし、遺言書は、自
分の死んだ時点での財産の帰属を決めることはできますが、自分が死んだ後に
生じた事態に合わせて財産の帰属を指定する効力はありません。
ここに、遺言の限界があります。
このようなAさんの思いは、実は、信託を使うと実現をすることができます。
信託では、委託者が、自分の資産を信託契約により受託者に移転させ、受託者
は、委託者の意思である信託契約に沿った形で資産の管理をすることになりま
す。信託財産の利益を受ける人を受益者といい、信託終了後の財産の帰属者を
帰属権利者といいます。信託は遺言によってもすることができます。

信託法の改正により、信託は、より使いやすく、応用力のあるものになりまし
た。環境を思う人はたくさんいますが、その思いは千差万別です。一人一人の
思いに合わせた、環境活動への寄付を実現する環境が整いつつあります。

★環境問題に真剣に取り組むNGOの支援こそ環境問題の解決につながる★

美しい自然を守りたい、豊かな環境を残したいという強い思いとともに地道な活
動を続けてきた環境NGO・NPOの活動こそ、環境問題解決への原動力です。
しかし、これらの団体の多くは、財源にも乏しく、継続的に質の高い環境保護
活動を続けて行くのは大変難しい状況にあるのも事実です。
環境NGO・NPOがもっと大きく、強くなることが環境問題の解決への近道。
そのために、これまで環境問題に携わってきた専門家として、環境弁護士にで
きることはたくさんある!このような信念のもとに、JELF大阪では、NP
O・NGOや社会起業家との連携を強化し、ネットワーク作りに力を入れてい
きたいと思っています。

▼リンク:JELF大阪の相続・信託プロジェクト
  http://www.jelf-osaka.com/activity


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  ◇◆◇司法試験合格祝賀講演会を開催しました◇◆◇
         〜東京・名古屋・大阪同時開催   
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2010年司法試験合格発表を記念して、合格された方や、合格を目指して
勉強中の法科大学院生等を対象に、環境問題に関わっている弁護士が参加して、
実務家として環境事件に取り組む際の醍醐味や経験をお話しする講演会を実施
しました。環境に関心を持つ多く方のご参加を得て、いずれの会場も盛況のうち
に無事終了しました。
 
◆2010年JELF司法試験合格祝賀講演会◆

日時:10月10日(日) 14:00〜

<東京会場>
テーマ:都市景観訴訟の現状とまちづくり政策について
講師:日置 雅晴弁護士(第2東京弁護士会)
会場:エコギャラリー新宿
内容:映画『崖の上のポニョ』の舞台となった広島県・福山市の鞆の浦景観訴訟
    弁護団事務局長や、東京都内の浅草浅草寺や都立大跡地訴訟などをはじめ、
    数多くの都市環境・景観問題に幅広く取り組む都市環境問題の第一人者で
    あり、神楽坂などのまち作りNPOなどにも多く関わっている実務家を講
    師に迎え、現在の都市問題訴訟の現状とまちづくり政策の課題や、住民の
    取り組みについてお聞きしました。

<名古屋会場>
テーマ:名古屋市・平針トトロの森訴訟
講師:藤川 誠二弁護士(愛知県弁護士会)
会場:ウィルあいち 会議室1
内容:10月に生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)が開かれた
    名古屋市は、昨年12月に、「平針の里山(トトロの森)」に開発許可を
    出しました。COP10で議長国を勤める日本は「里山イニシアティブ」
    を掲げて、里山の価値を世界にアピールしていますが、開催地の名古屋で
    里山が破壊される矛盾に名古屋市政は目を向けていません。2010年
    8月、名古屋市を相手に、開発許可申請取消請求訴訟を提訴した弁護団
    の弁護士を講師に迎え、訴訟の現状、名古屋市の環境保護政策、COP
    10に向けた住民の皆さんの取り組みなどお話し頂きました。

<大阪会場>
テーマ:@アスベスト国賠訴訟 地裁判決から国側の控訴まで
     A関西の環境訴訟の紹介等
講師:遠地 靖志 弁護士(大阪弁護士会)ほか
会場:あすなろ法律事務所 大会議室
内容:泉南アスベスト国家賠償請求訴訟において、大阪地裁は初めて国の責任を
    認め、国に対して賠償金の支払いを命じる判決を言い渡しました。国は
    一旦、控訴断念の意向を示しましたが、6月1日、国側は控訴することと
    なりました(→上記記事参照)。「被害者が生きているうちに救済を!」
    との原告の切実な思いをうけた弁護団の取り組みについて、判決から控訴
    にかけての運動を中心にお話し頂きました。
    そして引き続き、大阪弁護士会所属の弁護士より,関西地区の環境訴訟
    の現状についての紹介が行われました。

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  ◇◆◇JELFからのお知らせ(予告)◇◆◇     
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□■□気候変動シンポジウム□■□

気候変動の被害を最小化するため、温暖化対策の強化が緊急の課題となっていま
すが、現状はその目標達成の効果的な施策はありません。
気候変動問題は今や深刻な人権問題になりつつあります。大気からの恩恵はあら
ゆる人々に享受されなければなりません。電力部門は大気の恩恵を破壊し、地球
全体の持続的発展を阻害しています。そこで、JELFでは、気候変動と人権、
環境的正義をテーマに、シンポジウムを開催します。

◆日時  2011年1月22日(土)15:00〜17:00

◇場所  エコギャラリー新宿 展示室
        (東京都新宿区西新宿2-11-4 新宿中央公園内)
  アクセス:http://www.shinjuku-ecocenter.jp/facilities/access.html

◆内容
  1. 記念講演:「気候変動と正義の課題」
    講師:マーチン・ワグナー弁護士(アースジャスティス)
      米国では多数の気候変動訴訟が提訴されており、中でもマサチュー
      セッツ訴訟は、米国の温暖化製作に大きな影響を与えました。
      イヌイットの代理人を務め気候変動訴訟に取り組む弁護士を迎えて、
      「気候変動と正義」をテーマに御講演いただきます。
  
  2. 報告「我が国における気候変動訴訟の準備状況」
????????? JELFでは温暖化問題プロジェクトを結成し、気候変動問題に取
      り組んでいます。シンポジウムではプロジェクトの到達点を報告し、
      我が国における気候変動訴訟、公害調停の可能性について議論します。

  3.温暖化問題に取り組む環境NGOからの報告

■主催・問い合わせ
  日本環境法律家連盟(JELF)事務局(担当;三石)
? TEL:052-459-1753  /  FAX:052-459-1751
? mail : jelf@green-justice.com 

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□■□相続信託勉強会特別編・社会起業家による講演会(2月予定)□■□ 

JELF大阪支部では、相続や信託を通じてNGOやNPOをサポートする勉強
会を定期的に開催しています。
今回は、相続信託勉強会の特別編として、NGO・NPOと同じく様々な社会問
題に第一線で取り組む社会起業家を講師に迎え、環境法律家団体であるJELF
に求められる支援とは何かを考えます。
 
詳細については、決まり次第、ECO Tama臨時号にてお知らせします。

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□■□2011年環境法勉強会(3月予定)□■□

今年もやります、大好評の学習支援企画!
単なる受験対策にとどまらず、JELFならではの、合格後の実務も意識した
勉強会は、昨年は各会場とも満員御礼の盛況でした。
また、演習編で取り扱ったテーマが本試験でも出題されて話題になりました。

詳細については、決まり次第、ECO Tama臨時号にてお知らせします!


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             ・‥… あとがき …‥・
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秋の司法試験合格発表が終わると、JELFも世代交代のシーズンです。
今年も、多くの新64期の皆さんに、環境法論点集作成メンバーに加わって
いただきました。

メンバーには、環境法で受験された方だけでなく、他の科目で受験したが、
合格後は環境問題に携わりたくて、参加された方がたくさんおられます。
その経歴も実に多種多様で、様々な経験を持つ方が、それぞれの問題意識を
持ち寄ってくださることは、心強い限りです。
今後の学習支援企画に、どうぞご期待ください。

今年も残りわずかとなり、ロースクール生の皆さんは、後期試験やレポートで
忙しくされていることと思いますが、環境法選択かどうかにかかわらず、環境
問題に関心があれば、卒業後に思わぬご縁ができるかもしれませんね。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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? □ ECO Tamaは、ロースクール学生の皆さんとの双方向マガジンを
   目指しています。ぜひ、ご意見ご感想、実務家への質問等、また、
   自主ゼミ・勉強会等の案内等お知らせ下さい。
   jelf-osaka@green-justice.com

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  発行: 日本環境法律家連盟(JELF)大阪支部事務局
     大阪市中央区淡路町3丁目3番10号 チクマビル3階
     弁護士法人あすなろ あすなろ法律事務所内
  E-mail: jelf-osaka@green-justice.com
  URL :? http://www.jelf-osaka.com/
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