Mail Magazine for L.S. students issued by JELF

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2010/9/6
■□■ ECO Tama ■□■ 21号・22号合併号   
2010.4月〜2010.9月
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*JELFは、法的手段によって環境保護運動を進める、全国約500名 の弁
護士によって構成されている環境保護団体です。
ECO Tama=「エコ たま」とは、エコロジー・ロイヤーのたまごたちという
意味。環境問題に対する関心を共通項として集まった仲間の情報交流メルマ
ガです。 ECO Tamaは、ロースクール生の皆さんに有用な情報を提供するため
? JELFから無料でお届けします。

*ECO Tama は、3ヶ月ごとにお届けします。

*ECO Tamaの購読申し込み・お問い合わせは、JELF大阪支部
jelf-osaka@green-justice.com
? までお願いします。

*ECO Tama のバックナンバーは、JELFホームページにてご覧いただけます。
URL: http://www.jelf-justice.org

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┃◆ 泉南アスベスト国家賠償請求訴訟で勝訴判決! 

┃◆ 普天間爆音訴訟控訴審判決下る

┃◆ アセス法改正問題と今後の課題
┃ 
┃◆ 司法修習生・ロースクール生向け環境法勉強会を開催しました
┃  〜東京&大阪同時開催┃
┃ 
┃◆ JELFからのお知らせ

┃◆ あとがき


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◇◆◇泉南アスベスト国家賠償請求訴訟で勝訴判決!◇◆◇     
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100年以上にわたって石綿(アスベスト)紡織業が発展してきた大阪・泉南地
域では、石綿肺や肺がん、中皮腫など、アスベストが原因で健康を害したり、
亡くなったりした方が大勢います。そこで、泉南地域の石綿紡績工場の元従業
員や遺族らが原告となって、適切な規制権限を行使することなく長年放置して
きた国(労働大臣)に対して、国家賠償責任を追及する訴訟を提起してきました。
2010年5月19日、大阪地方裁判所において、アスベスト被害に対する国の不
作為責任を認める画期的な判決が言い渡されました。
判決によれば、アスベスト関連疾患に関する医学的又は疫学的知見は、石綿
肺については昭和34年に、肺がん及び中皮腫については昭和47年におおむね集
積されていたとして、それぞれの時点で何ら規制措置を講じなかった国には、
その不行使が許容される限度を逸脱して著しく合理性を欠き、違法であるとし
ました。
本判決は、首都圏アスベスト訴訟をはじめとするすべてのアスベスト被害者
を力強く励ますものであるとともに、本判決を契機として、アスベスト被害の
責任の明確化とそれをふまえた被害者救済システムの構築、これ以上の被害を
発生させないための万全な規制や対策の強化が求められています。

▼リンク http://www.asbestos-osaka1.sakura.ne.jp/


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◇◆◇普天間爆音訴訟控訴審結審〜移設問題は正念場◇◆◇
弁護士 西川研一(愛知県弁護士会)      
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第1 普天間基地爆音訴訟について
1 普天間基地とは
普天間基地(正式には普天間飛行場)は、人口約9万2000人の宜野湾市の
中心にある。沖縄戦で米軍が上陸し、接収して建設された基地であり、戦後、
収容所から戻ってきた住民が、自分たちの奪われた土地に建設された基地周
辺に住み始めて、現在の宜野湾市が形成された。このため、米基地安全基準
からすれば居住できない滑走路延長線上の基地隣接地区(クリアゾーン)内
には、18の公共施設があり、同地区に約3600人の住民が暮らすことになって
いる。普天間基地は、このように米基地安全基準にも違反する「世界一危険
な基地」であるが、その「危険性」は、そもそも米軍が沖縄の人々の土地を
強制的に接収して建設したという普天間基地の成り立ちに起因するのである。
その危険な基地での年間離着陸は4万5000回以上(推定)、騒音発生は2万
回以上にも上り、周辺住民の被害は極めて深刻である。1972年の施政権返還
以来、普天間基地所属機の墜落事故発生件数は15件にのぼり、2004年8月に
は、やはり基地所属のCH53D大型ヘリが沖縄国際大学に墜落する事故も発生し
ている。
2 普天間基地爆音訴訟
普天間爆音訴訟とは、そのような危険な普天間基地周辺の住民らが、国
(のちに普天間基地司令官も)を相手に騒音被害を訴えて、2002年10月に
第一次訴訟を提訴し、現在原告数396名で争われている爆音訴訟である。
請求内容は、@差止請求として、午後7時から翌午前7時までの航空機離発
着禁止と原告居住地における55ホンを超える騒音禁止、午前7時から午後7時
までの原告居住地における65ホンを超える騒音の禁止、A騒音測定請求、B
損害賠償請求として、過去を含む結審日までの分、結審日翌日から1年後ま
での将来請求分を内容としている(なお、損害賠償額は、控訴審では後述の
第一審判決をふまえ、同判決認容額の3倍を請求)。

▼リンク http://kadena-bakuon.com/index.html

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◆ 2010年7月29日、福岡高等裁判所那覇支部において、普天間基地爆音訴訟
の控訴審判決言渡しがありました。
飛行差止請求は、残念ながら棄却されましたが、クリアゾーンの不備によ
る飛行場の危険性を認め、低周波音による健康被害が初めて認定されたこと
で賠償金額が1審から倍増したことは、大きな前進といえるでしょう。

▼高裁判決はこちら
http://www.jelf-justice.org/documents/100729Futenma-highcourt-summary.pdf


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◇◆◇アセス法改正問題と今後の課題◇◆◇
弁護士 藤原猛爾(大阪弁護士会)      
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法改正をめぐる状況
環境影響評価法(アセス法:1996年制定)の改正検討作業は、2008年6月
から始められたが、2009年8月、環境大臣は中央環境審議会に対して今後の
環境影響評価制度の在り方について諮問をし、2010年2月、審議会は「今後
の環境影響評価制度の在り方について」をまとめて法改正について答申した。
これを受けた政府は、同年3月19日に改正法律案を閣議決定して国会に提出
したが、参議院では可決されたが衆議院での審議中に国会閉会となり継続
審議扱いとなった。
制定後のアセス法の課題
アセス法制定以後、多くの案件についてアセスが実施された。しかし、こ
のアセス実施状況にもかかわらず、各地では、生活環境、自然環境、生物の
多様性をめぐる紛争が発生している。また、司法のレベルからみると、アセ
ス法には、手続全般における事業者の広範な裁量の許容、原告適格の厳格な
認定などの制約があり、環境保護訴訟において機能しているとは言い難い状
況にある。
現行のアセス法については、事業アセスであること、対象事業が限定され
て狭すぎること、事業の細切れ実施などによるアセス逃れがあること、アセ
スが事業者の自主的取組を重視していること、事業者による評価項目の選定
や環境配慮措置に対する広範な裁量の付与、影響評価の客観性の欠如、住民
参加による是正手続が組み込まれていないこと、いわゆる横断条項の運用に
よる事業の許認可判断が不透明であることなど多くの欠陥が指摘できる。
アセス法改正作業が明らかにしたもの
今回のアセス法改正は、アセス法の実効性確保の観点からみるときわめて
消極的な内容になりそうである。改正法案については、今後の国会審議を含
めた改正作業の段階で是正を求めていくことが必要である。
ところで、今回のアセス法改正の検討過程で明らかになったことは、アセ
ス法の限界のみでなく、環境基本法の枠組みとその限界であった。
すなわち、基本法20条は、アセス制度を事業実施段階に限定しており、か
つ、基本的に事業実施者の自主性を重視することとしている。また、同法19
条は、国の環境配慮義務を定めていてSEA法制化の根拠規定となるもので
はあるが、環境面のみからの評価に限定していて、経済的・社会的・文化的
観点からの評価は別のことと位置づけている。総合アセスの実施、実効性を
担保するための争訟手続の導入、アセス手続への住民参加の組み入れ等のア
セス制度、SEA制度をめぐる争点は、いまや環境基本法の改正をも視野に
入れながら議論を展開していくことが必要となっている。

▼改正法案の概要はこちら
http://www.env.go.jp/press/file_view.php?serial=15342&hou_id=12295


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◇◆◇司法修習生・ロースクール生向け環境法勉強会を開催しました◇◆◇ 
??????????????????????????????????? 勉強会in 東京&大阪    
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環境問題への関心が高まる中、JELFでは、ロースクール生・修了生・司
法修習生・環境問題に取り組む若手弁護士が集まって、共に学び、意見交換す
ることで、将来、一緒に環境問題に取り組む仲間をどんどん増やしたい!そん
な思いから、環境法を勉強中、あるいは勉強してみようと考えているロースク
ール生、修了生の皆さん等を対象に勉強会を企画しています。
今回は、非常に多くの参加を得て大好評だった第1回(3月に開催)の続編
として開催されました。

2010年JELF環境法勉強会・第2回

日時 2010年7月3日(土)    

<東京会場>
場所 環境パートナーシップオフィス(EPO)会議室
(内容) 
第1部 環境法ポイント解説 
テーマ:「土壌汚染対策法 改正点の概説」
講師:市野 綾子 弁護士(東京弁護士会)
第2部 環境法実務の最前線情報 
1 首都圏アスベスト弁護団の現在の取組み  
講師:橋澤 加世 弁護士(首都圏アスベスト弁護団)
2 環境アセス法改正に向けた、日弁連のロビーイング活動の取組み
講師:西島 和? 弁護士(愛知県弁護士会)
3 環境行政の実務
講師:清家 裕 氏(慶応大学LS卒)

<大阪会場>
場所 大阪弁護士会館会議室
(内容)
第1部 環境法ポイント解説
1 環境影響評価法(アセス法)概説
2 環境法演習問題の検討・質疑応答
3 合格体験記  
第2部 環境弁護士が語る最前線情報 
1 速報・泉南アスベスト国賠訴訟判決
2 生物からみた環境訴訟
講師:斉藤 聡子 弁護士(温暖化訴訟弁護団)

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◇◆環境法勉強会体験記◇◆
関西学院大学法科大学院 修了生 大竹健太郎

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私は、第1回及び第2回の環境法勉強会両方に参加させていただきました。
環境法は司法試験の選択科目の中ではマイナーな科目ですから、環境法の
授業が充実しているロースクールは少ないですし、また、独学で学ぼうにも
教材が充実しているわけでもありません。
そのため、勉強会で行われている合格者の方の講義はとても参考になると
思います。環境法は、他の科目と異なって、政策論や勝ち目のうすい法律構
成などを考えさせられる珍しい科目なので、コツをつかまないとどうにもな
らない部分があります。
しかし、勉強会では合格者ならではの視点を学べます。コツをつかむため
の得難い機会です。正直、「この話無料で聞いて良いのか?」と思ったほど
です。
また、第1回、第2回とも、環境事件に取り組んでいる弁護士の方の素晴ら
しい講演を聴けて、環境法を学ぶためのモチベーションが上がりました。環
境法選択者が、「将来こうなりたい」と思う理想の弁護士に出会えます。
勉強会では、合格者や環境弁護士と直接話せる時間も設けられていますか
ら、環境法に興味がある方、環境法の勉強に行き詰まっている方は、是非一
度参加してみてはいかがでしょうか。

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◆前回と同様、東京と大阪の2会場同日開催となった今回の勉強会は、環境問
題に取り組む弁護士による環境事件最前線の話あり、新司法試験も意識した解
説講義あり、受験体験報告あり、懇親会ありという盛り沢山の内容でした。
夏休み前にもかかわらず、今回も多くの参加があり、両会場とも盛況となりま
した。遠く九州・広島・名古屋といった遠方から駆けつけた人や、環境訴訟の
最前線の話に興味をもつ社会人の方の参加もあり、環境問題に対する関心の広
がりを実感します。終了後のアンケートによれば、「環境法に興味を持った」、
「共に学ぶ多くの仲間を知り励みになった」、「早く実務で活躍したいと思っ
た」等々の好評価を多数いただくとともに、ほとんどの方から「次回もぜひ開
催して欲しい」との声が寄せられました。
次回の開催も予定していますので、今回参加できなかった皆さんも、次回の勉
強会には是非ご参加ください!


JELF大阪支部事務局

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◇◆◇JELFからのお知らせ◇◆◇     
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□■□JELF大阪支部例会&第7回信託相続勉強会 □■□ 

JELF大阪支部では、他のNGOやNPOと連携して,相続や信託を通じ
て財産を社会貢献に役立てたいと考える人々をサポートするプロジェクトを準
備中です。 
そこで、このたび、大阪支部会員の皆様にお集まりいただき、本プロジェクト
についての御説明と進捗状況の御報告のため、大阪支部例会を下記のとおり開
催いたします。
また、例会にあわせて、第7回・信託相続勉強会を開催します。
今回のテーマは、遺言書作成時の問題点の検討で、本プロジェクトの重要な部
分であるだけでなく、日常の実務にも役立つ部分が多いと思われます。
事前の準備は不要ですので、あわせてご参加をお待ちしております。

◆日時  2010年9月16日(金)19:00〜
◇場所  あすなろ法律事務所会議室
◆テーマ 遺言・遺贈実務研究会
(相続プロジェクトにおける遺言書作成の考察)
担当;藤原  航?? 弁護士(堺筋共同法律事務所)
梅本 章太 弁護士(浅田法律事務所)

※JELF例会終了後に勉強会を行います。申込等は不要ですが、JELF会
員以外の方は、準備の都合上、事前に事務局までメールにてご一報ください。
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□■□JELF大阪ホームページを開設しました□■□

このたびJELF大阪支部では、以下のとおりホームページを解説する運びと
なりました。今後はウェブ上でもJELFの最新情報を掲載していく予定です
ので、ぜひともご活用くださいますようお願いいたします。
また、JELF本部のホームページも、これまでどおり引き続きよろしくお願
いいたします。

JELF大阪支部ホームページアドレス  http://www.jelf-osaka.com/
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□■□2010年司法試験合格者企画(予告)□■□

今年もやります。秋の恒例企画!
詳細については、決まり次第、ECO Tama臨時号にてお知らせします!

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・‥… あとがき …‥・
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JELF大阪支部の入居している法律事務所には、この夏、多くのロースクール
修了生や法学部生の方が来ています。
皆さんに共通するのは、その向学心の強さと優秀さで、前向きなパワーには圧倒
されっぱなしです。
新司法試験の合格発表も間近に迫っていますが、ロースクール修了生の皆さんに
は、合否にかかわらず、環境法で学んだスピリットを社会に役立てて欲しいと願
わずにはいられません。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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□ ECO Tamaは、ロースクール学生の皆さんとの双方向マガジンを
目指しています。ぜひ、ご意見ご感想、実務家への質問等、また、
自主ゼミ・勉強会等の案内等お知らせ下さい。
jelf-osaka@green-justice.com

□ 購読者募集中!お友達にもECO Tama をご紹介下さい!
購読の申し込みは、
jelf-osaka@green-justice.com
まで、お名前、学校名、学年をお知らせ下さい。

□ 配信停止をご希望の方は、お手数ですが
jelf-osaka@green-justice.com
までご連絡下さい
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発行: 日本環境法律家連盟(JELF)大阪支部事務局
大阪市中央区淡路町3丁目3番10号 チクマビル3階
弁護士法人あすなろ あすなろ法律事務所内
E-mail: jelf-osaka@green-justice.com
URL : http://www.jelf-osaka.com/
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