Mail Magazine for L.S. students issued by JELF
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■□■ ECO Tama ■□■ 10号   2007. 4月〜2007.5 月
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*JELF は、法的手段によって環境保護運動を進める、全国約500名 の弁護
 士によって構成されている環境保護団体です。
 ECO Tama=「エコ たま」とは、エコロジー・ロイヤーのたまごたちという
 意味。環境問題に対する関心を共通項として集まった仲間の情報交流メルマ
 ガです。 ECO Tamaは、ロースクール生の皆さんに有用な情報を提供するため
 JELFから無料でお届けします。

*ECO Tama は、隔月間でお届けします。

*ECO Tamaの購読申し込み、JELFへの連絡・お問い合わせは
jelf-osaka@green-justice.com
までお願いします。

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□■□ CONTENTS □■□

□ ECO Tama 環境法セミナー
  環境法の試験対策について

□ 自然の権利 ウミガメ裁判の現地検証

□ ECO Tamaリクルート・ナビ〜就職活動体験記

□ JELF からのお知らせ

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□■□ECO Tama 環境法セミナー 
   環境法の試験対策について □■□

                    弁護士・関西学院大学教授 池田 直樹


受験生にとっては、時間が限られてきた現在においては、「ヤマ」は何かを一番知りたい
ところであろう。ただ、@環境法のヤマは元々限られている(ので、いくつかがヤマだと
いえばどれかは当るか、かするはず)、A新司の問題は、ヤマ張りだけでは対応できない
(テーマや論点があたっても問題の出し方はいろいろある)と言わざるをえない。そのこ
とを前提にしつつ、かつ何ら責任を負わないと断ったうえで、私ならここに備えるという
主観的なコメントを述べておく。
昨年の問題の1番は、近年の環境政策上の最大の具体的な問題の一つである「不法投棄」
の抑制というテーマで、その中でも「委託責任」を取り上げていた。内容的には、問題の
所在(なぜ排出者の委託時の責任が問題となるのか)をおさえたうえで、条文をきちんと
説明できるかどうか(改正法の趣旨と具体的内容)が問われた。
他方、2番は、事例問題における救済手法を問うという形式で、環境法の基本理念である
環境権や人格権という「環境公法」「環境私法」を横断するど真ん中の問題が出された。
おそらくこのような傾向は今後も続くと思われる。すなわち、試験の題材(テーマ)とし
ては、近年立法や判例で動きがあるトピック性のある分野と、環境法の基本理念が問われ
るような伝統的な分野、問いの手法としては、環境政策の歴史的展開をもとに条文の基本
的な理解を問うような問題と、具体的な紛争を通して環境法の基本理念の応用を問う問題
であろう。昨年の問題でも、不法投棄をテーマとしつつ、具体的・複雑な事例問題を通し
て解答させるやり方もできたし、環境権をテーマにとしつつ、たとえば環境基本法や環境
基本計画の歴史的変遷を問う方法も考え得るように、テーマと問い方の組み合わせによっ
てさまざまな問題を作ることができる。また、2問ともトピック性のある分野から選ぶこ
とも当然ながらありうる。
トピックという点でいえば、「循環型社会」とそれに対応する「拡大生産者責任」は絶対
的なヤマであるし、「地方分権化」に対応する「自治体環境行政=環境関連の条例」も重
要である(試験委員の北村先生は「自治体環境行政法第4版を昨年出版されている」)。
「地球温暖化」は問題にしにくいのであるが、環境政策を問う問題として出題される可能
性はある(地球温暖化対策としてどのような環境政策手法が取られようとしているのかを
大まかに押えておく必要がある)。よりオーソドックスや分野では、大気汚染の移動発生
源(自動車)の規制(東京大気汚染訴訟や東京都のディーゼル車規制などが近年のトピッ
ク)、土壌汚染で土壌と地下水が同時に汚染される場合(マルチ・メディア汚染)などが
狙われやすい。これに共同不法行為論を加味すれば、救済方法を問う事例問題となりうる。
理念側からアプローチすれば、「予防原則」は環境法全体を横断的に見渡させるキーとな
りうる。予防原則は、外来種規制、生物多様性、地球温暖化、化学物質汚染など最近のト
ピックに重ねることもできる。「拡大生産者責任」は循環社会の法に主として関わるが、
化学物質の事前規制(試験範囲では必ずしも入らないが)にも関わる重要な原則である(大
塚先生が論文を書いている)。具体的な制度設計に直結するので(Pという製品の回収義務
を法的に生産者に課すかどうかなど)、問題としてはさまざまなバリエーションで出せる。
試験が迫ってくる中で、今後は短答対策にも時間を割かざるをえず、選択科目に時間は割け
ないであろう。今さら分厚い教科書を読むことは勧められない。自分のノートないし論点表
(なければ教科書の細目次や「ケースブック環境法」(有斐閣)の設例のキーワード)など
を手がかりに、基本理念を再度押えたうえで、その具体的な条文上での表れを司法試験六法
で確認する作業が必要だろう。そのうえで、条件があれば、数回程度、時間を区切った答案
練習(各学校の定期試験、予備試験、過去の試験問題を入手したり、上記「ケースブック環
境法」や松村他「ロースクール環境法」の各章末尾の問題などがある)を行うに超したこと
はない。
体力勝負の面もあるので、健康管理は重要である。皆さんのご健闘をお祈りします。

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□■□自然の権利 ウミガメ裁判の現地検証 □■□

                        弁護士 樽井直樹(愛知県弁護士会)

1 鹿児島県奄美大島の大和村戸円沖で海砂採取が続けられていることから、戸円浜、ヒエ
ン浜の2つの砂浜が後退し、ウミガメが産卵できなくなっています。このような状態をなく
すた
めに、砂採取会社を相手に砂利採取の差し止めを求めているウミガメ裁判で、2006年11月16
日と17日の両日、現地検証が行われました。
 久しぶりに訪れた奄美は、本土の肌寒さとは無縁な暖かさ、すばらしい秋空が私たちを迎
えてくれました、が、実は奄美は、今年に入ってまだ台風に襲われておらず、3ヶ月近くも
雨が降っていないという異常気象が続いていたようです。
2 さて、検証は、裁判を担当する鹿児島地裁の裁判官3名全員が参加。
 まず、1日目は、鹿児島地裁名瀬支部に集合。戸円に向かって出発し、途中2つの海岸を
参考のために視察しました。特に、国直(くになお)海岸はヒエン浜と同じくサンゴに由来
する白い砂でできた砂浜、健全な砂浜が存在しているところでは、浜と陸地との境にアダン
林がしっかりと形成されるという奄美独特の景観が生まれることを確認しました。
 その後、戸円集落に。原告を代表して松浦仙勇さんが裁判官に訴え。その後、被告側の要
望に従って戸円上流部の砂防ダムを検証。戸円浜を見た上で、採取した砂を引き上げるスト
ックヤードなどを検証しました。
3 2日目は、最大の問題地であるヒエン浜。
 ヒエン浜は、かつては白い砂が広がっていました。ところが、近年みるみる砂が減少し、
浜は小石やサンゴの欠片で埋め尽くされています。しかも、砂浜が後退したことによりアダ
ン林の根元が露出、部分的にはアダン林が破壊されているところもあります。奄美では、ア
ダン林が、浜と陸地の自然の境界として、防風、防潮、防砂の機能を果たしています。ここ
ヒエンでも同様で、アダン林の陸側にはソテツ畑などが切り開かれてきました。ところが、
無惨にもアダン林が破壊され、後背地の農地にも砂や海からのゴミが直接吹き寄せるように
なってしまっています。私たちは、ヒエンの砂浜の後退が海砂利採取に起因することを重点
的に解明してきました。
 ヒエン浜は、全長1キロメートルほどの砂浜ですが、裁判官は2時間以上にわたって、ヒ
エン浜の全域を歩いて調査、さらに後背地の原告が所有する農地の惨状にも目を通しました。
また、原告の一人が、今年の夏にヒエン浜の自宅前にウミガメが上陸し、産卵のために穴を
掘ろうとしたが、砂地が少ないためそのまま引き返していったことなどを説明しました。
 その後、漁船を借りて海上から採取現場を視察し、検証を終えました。
4 2日間にわたった検証では、多くの原告や支援者が駆けつけましたが、被告側も砂利採
取に同意を与えた漁協関係者などを動員し、砂浜の後退と砂利採取が無関係であるかのよう
に印象づけるために腐心していました。
 しかし、ヒエン浜の砂浜の後退、アダン林の荒廃は急速に進んでおり、胸が痛むものでした。
 裁判所も、この惨状をしっかり見てくれたと確信しています。

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□■□ECO Tamaリクルート・ナビ
              〜就職活動体験記 □■□

                       弁護士 吉江 仁子(59期)


 59期の頃と、新司法修習を受けられる方とは、だいぶ、状況が違っているので、
そういうものとしてお読み下さいね。
 さて、私が就職を意識して、自覚的に就職活動を始めたのは、実務修習に入って
からです。第1クールが弁護修習だったので、事務所訪問の情報も多く、機会があ
れば、せっせと訪問していました。最後は2事務所で迷って、第2クールの途中で、
決心して、内定を頂いきました。内定を頂いたら、ほっとしました。同期の中では
、早い方でした。多くは、第2クールの後半から第3クールの前半ころに決まって
いたようです。
 現在の事務所に決めた理由は、いわゆる社会派の困難な事件、事務所としてのス
キルの拡大、経営の安定など、様々な課題に挑戦し続けているボスの魅力と事務局
の雰囲気の良さからです。あと、小さい事務所なので、私も一緒に事務所を作って
いけそうだという期待が持てたことも、大きいですね。勤務して2ヶ月ほどですが、
今、満足しています。
 アドバイスというほどのことは、何も言えませんが、私は、合格直後から、合格
者向けの勉強会に出たり、法律事務所に遊びに行って弁護士の先生のお仕事を拝見
したりしていました。そこでできた人脈は、就職活動をする上で、とても役に立ち
ましたし、現在の業務でも、とても役に立っています。ですので、皆さんにも、一
つ一つの出会いを大切にしてして頂けたらと思います、

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□■□JELFからのお知らせ□■□

1. 今期合格されたみなさんのご連絡をお待ちしています。日本環境法律家連盟では
 修習生向けのJELFガイダンスを予定しています。
 氏名、Eメールアドレス、住所、電話番号、出身法科大学院などをお知らせください。

2. 是非とも、JELF修習生会員にご参加ください。修習生会員は入会金2000円のみで、
 修習終了まで会費を支払う必要はありません。
 既にロースクール会員の皆さんは、申し込みいただければ、引き続き修習生会員に
 なれます。
 この場合には入会金は必要ありません。

3. このメールをお知り合いの合格者に転送して頂くようお願いします。

□新60期 環境法律家連盟(JELF)実務修習企画
 環境法律家連盟では、下記のように新60期の皆さん向けに実務修習企画を行います。
 ぜひご参加ください。当日は環境問題に関わっている弁護士が参加して、現地視察と併
 せて法律実務についてもお話しさせて頂きたいと思います。

 日時;5月26日(土)午後より (予定)
 場所;瀬戸市フェロシルト不法投棄現場 を視察 

 集合場所・時間等は未定です。参加希望の方は、必ずJELF事務局にご連絡下さい。

  日本環境法律家連盟(JELF)事務局 (名古屋E&J法律事務所内)
  T:052-528-1562  F:052-528-1561  E-mail: jelf@green-justice.com


  詳細は追ってお知らせいたします。


□ ECO Tamaは、ロースクール学生の皆さんとの双方向マガジンを
  目指しています。ぜひ、ご意見ご感想、実務家への質問等、また、
  自主ゼミ・勉強会等の案内等お知らせ下さい。

jelf-osaka@green-justice.com


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  まで、お名前、学校名、学年をお知らせ下さい。



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