Mail Magazine for L.S. students issued by JELF
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■□■ ECO Tama ■□■ 12号  2007.10月〜2007.12月
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*JELF は、法的手段によって環境保護運動を進める、全国約500名 の弁護
 士によって構成されている環境保護団体です。
 ECO Tama=「エコ たま」とは、エコロジー・ロイヤーのたまごたちという
 意味。環境問題に対する関心を共通項として集まった仲間の情報交流メルマ
 ガです。 ECO Tamaは、ロースクール生の皆さんに有用な情報を提供するため
 JELFから無料でお届けします。

*ECO Tama は、3ヶ月ごとにお届けします。

*ECO Tamaの購読申し込み、JELFへの連絡・お問い合わせは
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までお願いします。

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□■□ CONTENTS □■□

□ 沖縄ジュゴンNHPA訴訟結審
  
□ 司法試験合格者が語る環境法の重要論点 〜廃棄物処理法(廃掃法)について〜

□ 環境被害救済と予防に関する日中韓国際ワークショップが開催されました!

□ 新61期合格者企画 修習生、ロースクール生の参加大歓迎♪
  〜「日本環境法律家連盟(JELF)合格祝賀講演会」のご案内 〜
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□■□沖縄ジュゴンNHPA訴訟結審 □■□

絶滅危惧種である沖縄ジュゴンの生息地に米軍普天間基地代替施設の建築が計
画されていることに対し、米国の国家史跡保存法(National Historic Preserv
ati on Act) によるジュゴンの保護を求め2003年に提訴された「沖縄ジュゴ
ンNHPA訴訟」が、9月17日サンフランシスコ連邦地裁で結審した。本訴訟
は、2003年秋に米国防総省(the Department of Defense)を被告として提訴され
た。

JELFを含む原告は、普天間飛行場の移転計画の見直し、少なくとも、ジュゴンを
保護するための方策がとられるまでの延期を求めている。

DoDはこれまで、「辺野古への基地建設は日本政府の都合であり、アメリカ側に
責任はない」と主張してきたが、今回の最終弁論では、「日本との共同作業」で
あるとの認識を示した。裁判官は、「米国の関与があるのなら、日本の法的手続
きとは別に、アメリカ政府が自主的な環境調査を行うべきでは」と指摘した。
DoDに対しジュゴン保護を厳格に求める判決が言い渡された場合、辺野古沖での
基地建設に影響がでる可能性もある。


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□■□司法試験合格者が語る環境法の重要論点
           〜廃棄物処理法(廃掃法)について〜
            新60期 合格者 □■□

1 はじめに
 廃掃法は,環境法の法律の中でも,特に特徴的な制度が多い法律だと思います。
それだけに,各制度についてしっかり理解し,整理しておかないと,どんな場合
にどんな制度が問題になるのかごっちゃになって,混乱するおそれがあると思い
ます。それに,これまでの試験の問題を見るかぎり,多く出題されている法律で
あるという意味でも,重要視する必要があると思います。

2 特徴的な制度について
 1で述べたように廃掃法には特徴的な制度がいくつかありますが,それらにつ
いて理解すべき点は以下のところだと思います。
@ どういう制度か
 例えばマニフェストなら,排出事業者が運搬,処分を委託する時に管理票を渡
して,後でその写しが戻ってこなければ適切な措置を行うことを要求される制度
…という具合に,制度の内容の基本的な理解がまず必要になります。
A どういう場面で,使われる制度か
 これは,特に紛争解決の場面(訴訟のほか,行政サイドからのトラブルへの
対応)で問題になります。なお,使われる場面を考える上では,後述4のフロー
チャートによる廃掃法の制度の全体的な理解も必要と思います。
B なぜそのような制度ができたのか。(歴史的な経緯,制度ができるきっかけ
となった事件・判例の把握)
 廃掃法の場合,改正が頻繁で,また改正の原因になったような事件も多くあ
るので,そういった法の成立・改正についての経緯もある程度しっかり押さえて
おく必要があると思います。うろ覚えだとごっちゃになって危険です。
C その制度に問題はないか(今後の課題)
 廃掃法は改正を重ねて新たに発生している問題に対応していこうとする性格が
強く,今後の課題への対処が問われることもあると思います。
D 制度と環境法の基本原則との関係
 例えばマニフェストについて,排出事業者責任と汚染者負担原則の関係等。
この関係性は,教科書を読んでいても案外見えない気がするので,基本原則と個
々の制度の関係ということを意識的に考えておく必要があると思います。
 以上のB〜Dは主に政策上の問題です。政策論も環境法では問われるので,こ
の辺りの議論も忘れずにおさえる必要があると思います。

3 廃掃法で特に問題となりそうな点
ア 廃棄物の定義
 おから事件は必ずおさえておくべきでしょう。
イ マニフェスト
 制度の改正の経緯や,マニフェスト制度によって誰がどのような責任を負う
のか,といったところは十分理解しておく必要があると思います(第1回新司
法試験の問題参照)。
ウ ミニアセス
 これに関しては,環境影響評価法,環境影響評価条例との関係も同時に問題
になってくることに注意が必要です。
エ 情報開示・提供に関する制度
 上記イ,ウ以外にもいくつかあります。また,情報開示内容についての今後
の課題が,政策論上問題になる場合もあると思います。
オ 一般廃棄物と,産業廃棄物による規制内容の違い。 
 細かく違いを対比するまでの必要はないと思いますが,それぞれでどのよう
な規制が行われているのか,大まかにはおさえておくべきだと思います。
カ 処分場の区分
 最終処分場について,安定型,管理型,遮断型の区分の問題があります。ま
た,処分場に絡んだ判例が多くあることにも注意が必要でしょう。
キ 監督措置
 措置命令についてマニフェストとの関連性があること,緊急代執行が認めら
れること,といった辺りが特にポイントではないでしょうか。

4 全体的な把握(制度の全体的把握と,条文の全体的把握)
 以上の個別の制度を覚えることだけに集中しすぎると,それらについて,制度
全体の中の位置づけがわからなくなりかねません。そうなってしまうと,いざ問
題に接したときにあの制度って一体どの場面で使うんだっけ?などと悩んでしま
い,問題にうまく対処できないおそれがあります。ですので,個別の制度が廃棄
物処理法全体の中でどういう位置づけにあるのか把握する必要があり,その前提
として,廃掃法の全体的な枠組みを理解する必要があります。
 といっても,廃掃法全部の条文を覚えるようなことは無理があります。そこで,
環境法ケースブックやプレップ環境法にも載っている,フローチャートによる廃
掃法の仕組みの理解が有用だと思います。
 なお,そのほか制度の全体的な把握に関わり,どの制度に関する条文がどの辺
りに規定されているかという条文構造の把握もある程度は必要だと思います。条
文構造の把握のためには,やはり環境法ケースブックやプレップ環境法に載って
いる環境法の基本構造を覚えておくとよいと思います。(ちなみに,環境関連法
以外でも,行政関連法の多くは同様あるいは類似の構造を採っているので,この
基本構造を理解しておくと,行政法の問題を検討する上でも役立つと思います。)

5 試験問題の検討
 以上のことを大体把握した後は,ケースブックや過去の司法試験・プレテスト
等の問題を実際に解いてみて,自分の理解が十分かをチェックするとよいと思い
ます。また,問題を解くときは,ゼミを組んで,どういうことが問われているか,
それに対してどう答えるか,ということを他の人と検討してみるとよいと思いま
す。
 環境法は制度の歴史的経緯とか,今後の課題といった政策的な問題が関わった
りして,他の法分野とは毛色の違うところがあるので,以上のようなゼミ等で他
の人の意見も踏まえた多面的な検討をせず,他の法分野と同じ発想で解答を書い
ていると,出題意図とはかけ離れたことを書きかねないと思います(この辺りは,
僕の実体験に基づいた感想です。僕は一人で勉強を進めた結果,試験本番で今ひ
とつ何を書いてよいのかわからずじまいでした…。)。

6 おわりに
 以上いろいろと書いてきましたが,僕の場合,環境法の勉強を本格的にやり始
めたのがだいぶ遅い時期からだったこともあり,以上に書いたことを十分やりき
れなかったところがあります。また,周りに環境法の選択者もいなかったため,
どう勉強すればいいか相談することもままならず,かなり悩んだこともありまし
た。ですので,勉強を進めていく際には,ゼミを組み,勉強会の日程を決めて計
画的に,またいろいろ議論したり相談したりしながら勉強していくことを強くお
勧めしたいと思います。


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□■□環境被害救済と予防に関する日中韓国際ワークショップ □■□
 
 2007年8月24日、25日、日本弁護士会館において、「環境被害救済と予防に関す
る日中韓国際ワークショップ」が開催された。日中間のワープショップはこれが
四回目で、日韓の間でも数回開催されたが、三国間で開催されるのはこれが初め
てである。
 
 韓国側からは学者、弁護士、環境運動家を含む11人が参加し、中国側からは学
者、弁護士、被害者を含む16人が参加した。
 
 参加者達は、各自自国で問題になっている環境訴訟および環境問題を取り上げ、
その概況を紹介した。各国が現在直面している環境問題はそれぞれであるが、環
境被害者を救済しようとする弁護士、活動家の熱意は同じであることを痛感した。
特に中国の場合、特殊な社会制度の中、政治が司法に干渉し、司法が法律とおり
に行われていないなど、他国では考えられないさまざまな支障が生じている。そ
の中、少数ではあるが政府と戦う環境活動家が現われていることは、時代の進歩
であるといいうる。
 
 ワークショップにおいて、日本と韓国がアスベストに関する報告をした。日本
のアスベスト被害の問題がその賠償をめぐる議論になっている現在、韓国では、
アスベストの問題が今年7月初めてテレビによって報道され、国民の関心を引いて
いる。韓国では学校、地下鉄を含むあらゆる公共施設においてアスベストを使用
しているにもかかわらず、アスベストの被害を考慮せずに、再建築のための解体
作業が行われているのが、現状である。一方、中国ではアスベストの被害がまっ
たく認識されておらず、アスベストを生産する工場も未だに多数存在している。
 
 日本で問題となった環境被害がアジアの他の国で広がる前に、このようなワー
クショップを通じて事前に予防策を取り、日本の教訓を外国で生かすのが重要で
あると思われる。今回のワークショップもこのような使命を果たしたと思われる。
 
 春になると、中国からの黄砂が日本、韓国に飛来し、毎年黄砂問題に関する対
策を取るよう、中国政府が非難を受けている。中国が「世界の工場」であるかぎ
り、莫大な生産に伴う環境の破壊も不可避である。そのため、環境の問題を国で
区切るのではなく、各国の人々が協力し合って解決しなければならないと思われ
る。
 
 現在、韓国では、緑色連合、環境運動連合、民主社会のための弁護士の集まり
など、環境保護団体が韓国の環境改善のため努力を重ねている。中国の主な環境
保護団体は、中国政法大学公害被害者法律援助センターであり、5、6名の弁護士
が所属し、全国の環境紛争の救済にかかわっている。これらの環境保護団体のさ
らなる活躍に注目しながら、次回の日中韓ワークショップでのすばらしい報告を
期待する。


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□■□ 新61期合格者企画 修習生、ロースクール生の参加大歓迎♪
     「日本環境法律家連盟(JELF)合格祝賀講演会」のご案内 □■□

 新61期予定の皆さん、司法試験合格おめでとうございます!
 環境法律家連盟では、下記のように、東京と名古屋で、新61期の皆さん向けに合
格祝賀シンポジウム「弁護士として環境事件に取り組む」を行います。ぜひご参加
ください。当日は環境問題に関わっている弁護士が参加して、皆様に実務家として
環境事件に取り組む際の醍醐味や経験をお話しさせて頂きたいと思います。
LS生のみなさん、現修習生のみなさんも参加出来ます!

                記

講演会in東京 ===========================
日時:10月27日(土)14時〜16時
場所:全水道会館 小会議室 
講師:弁護士 籠橋隆明(愛知県弁護士会・日本環境法律家連盟 事務局長)
  「沖縄ジュゴンNHPA(米国・文化財保護法)訴訟と今後に向けて」
(交通のご案内)
●JR水道橋駅東口下車徒歩2分
●都営地下鉄三田線水道橋駅 A1出口 徒歩1分
東京都文京区本郷1−4−1
電話:03−3816−4196

講演会in名古屋 ==========================
日時:10月27日(土)14時〜16時
場所:名古屋第一法律事務所 会議室 (予定) 
講師:弁護士 村田正人(三重県弁護士会・日本環境法律家連盟 代表理事)
  「石原産業フェロシルト不法投棄事件をめぐって企業の環境コンプライアンス
を目指す」
(交通のご案内)
●地下鉄桜通線「丸の内」下車、3番出口より1分。または
  エレベーターで地上へ出てすぐ右
●地下鉄鶴舞線「丸の内」下車、2番出口より3分
名古屋市中区丸の内二丁目18番22号
三博ビル3階 会議室
電話:052−211−2236

参加される方は、差し支えなければ、住所、電話、お名前をご記入の上、
jelf@green-justice.com宛にご連絡下さい。もちろん、当日参加もOKです!
                                                                      

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□ ECO Tamaは、ロースクール学生の皆さんとの双方向マガジンを
  目指しています。ぜひ、ご意見ご感想、実務家への質問等、また、
  自主ゼミ・勉強会等の案内等お知らせ下さい。
  
jelf-osaka@green-justice.com


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  jelf-osaka@green-justice.com
  まで、お名前、学校名、学年をお知らせ下さい。
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