『環境と正義』から
インターネットトピックス 総集編
これまでに『環境と正義』に掲載された原稿をまとめました。
注目Webサイトの紹介コラムです。
2004.09.28更新
1号(創刊号・1997年4月1日発行)
なし
2号(7月号・1997年6月18日発行)
なし
3号(8.9月合併号・1997年8月8日発行)
「レインフォリストアクションネットワーク」 籠橋隆明(名古屋弁護士会)
4号(10月号・1997年9月25日発行)
「コスタリカ」 籠橋隆明(名古屋弁護士会)
5号(11月号・1997年10月25日発行)
「グリーンパーティ」 籠橋隆明(名古屋弁護士会)
6号(12月号・1997年11月25日発行)
「EARTH FIRST!」 籠橋隆明(名古屋弁護士会)
7号(1.2月合併号・1998年1月25日発行)
「ラムサール条約会議」 籠橋隆明(名古屋弁護士会)
8号(3月号・1998年2月25日発行)
「@igc」 籠橋隆明(名古屋弁護士会)
9号(4月号・1998年3月25日発行)
「Food and
Agriculture Organization of the United Nations」
籠橋隆明(名古屋弁護士会)
10号(5月号・1998年4月25日発行)
「AGAINST"SOEHARTO'S"DICTATOR PAGE」
籠橋隆明(名古屋弁護士会)
11号(6月号・1998年5月25日発行)
「EARTH ISLAND INSTITUTE」 籠橋隆明(名古屋弁護士会)
12号(7月号・1998年6月25日発行)
「INTERNATIONAL RIVERS NETWORK」 籠橋隆明(名古屋弁護士会)
13号(8.9月合併号・1998年7月25日発行)
「Forests,Trees and
People Programme & Network」 籠橋隆明(名古屋弁護士会)
14号(10月号・1998年9月25日発行)
「CIEL」 籠橋隆明(名古屋弁護士会)・高田しのぶ(名古屋E&J法律事務所)
15号(11月号・1998年10月25日発行)
「National Wildlife Federation(全米野生生物連盟)」
籠橋隆明(名古屋弁護士会)
16号(12月号・1998年11月25日発行)
「Sea Shepherd Conservation Society」
籠橋隆明(名古屋弁護士会)
17号(1・2月合併号・1999年1月25日発行)
「世界銀行 The World Bank」 籠橋隆明(名古屋弁護士会)
18号(3月号・1999年2月25日発行)
「Earthjustice Legal Defense Fund」
籠橋隆明(名古屋弁護士会)
19号(4月号・1999年3月25日発行)
「Papua New Guinea Rainforest
Campaign」 籠橋隆明(名古屋弁護士会)
20号(5月号・1999年4月25日発行)
「WTO」 籠橋隆明(名古屋弁護士会)
21号(6月号・1999年5月25日発行)
「シエラ・クラブ」 籠橋隆明(名古屋弁護士会)
22号(7月号・1999年6月25日発行)
「Darwin Awards」 籠橋隆明(名古屋弁護士会)・高田しのぶ(名古屋E&J法律事務所)
23号(8・9月合併号・1999年7月25日発行)
「Dolphin Circle」 森 弘典(名古屋弁護士会)
24号(10月号・1999年9月25日発行)
「The Women's
Environment & Development Organization(WEDO)」
籠橋隆明(名古屋弁護士会)
25号(11月号・1999年10月25日発行)
「The
Women's Environment & Development Organization (WEDO) 2
Kenyan
Ecologist Beaten As She Attempts To Plant Trees」
籠橋隆明(名古屋弁護士会)
26号(12月号・1999年11月25日発行)
「Smithsonian
Institution - The Conservation and Research Center」 森 弘典(名古屋弁護士会)
27号 (1,2月合併号・1999年12月25日発行)
「THE GOVERNMENT OF TIBET IN EXILE」 森 弘典(名古屋弁護士会)
28号(3月号・2000年2月25日発行)
「THE STRUGGLE FOR EAST TIMOR」 籠橋隆明(名古屋弁護士会)
29号(4月号・2000年3月25日発行)
「RAYMOND COMMUNICATIONS 」 森弘典(名古屋弁護士会)
30号(5月号・2000年4月25日発行)
「Enviro Link 」 籠橋隆明(名古屋弁護士会)
31号(6月号・2000年5月25日発行)
「Roger Beer's ENVIRONMENTAL
LITIGATION PAGE 」 森弘典(名古屋弁護士会)
32号(7月号・2000年6月25日発行)
「CENTER FOR HEALTH,ENVIRONMENT
AND JUSTICE」 籠橋隆明(名古屋弁護士会)
33号(8,9月合併号・2000年7月25日発行)
「NATURAL RESOUCES DEFENCE COUNCIL」
「The Environmental Law Institute」
「The Center for International
Environment Law」 森弘典(名古屋弁護士会)
66号(12月号・2003年11月25日発行)
「United Nations Postal Administration」 田宮代子(JELF事務局)
67号(1,2月合併号・2003年12月25日発行)
「World Social Forum」 稲垣仁史(名古屋弁護士会)
68号(3月号・2004年2月25日発行)
「GREEN ACTION」 三石朱美(JELF事務局)
69号(4月号・2004年3月25日発行)
「Bush Greenwatch」
稲垣仁史(名古屋弁護士会)
70号(5月号・2004年4月25日発行)
「カメムシ写真館」
金岡繁裕(名古屋弁護士会)
71号(6月号・2004年5月25日発行)
「セイブ・イラクチルドレン・名古屋」
「アッバース&ドクターズ・プロジェクト」
田巻紘子(名古屋弁護士会)
72号(7月号・2004年6月25日発行)
「ゲゼル研究会」 稲垣仁史(名古屋弁護士会)
■インターネットトピックス
1号(創刊号・1997年4月1日発行)
休載
2号(7月号・1997年6月18日発行)
休載
3号(8.9月合併号・1997年8月8日発行)
「レインフォリストアクションネットワーク」
籠橋隆明(名古屋弁護士会)
http://www.ran.org/ran/index.html
日本本籍の多国籍企業が、アジアや南アメリカ、シベリアなどで多くの原生林の皆伐を進めていることは、ご存知の方がほとんどだろうと思う。熱帯雨林を初めとした原生林伐採については、世界の様々な国で運動が展開され、国際的なネットワークもできあがっている。環境NGOたちは、伐採問題に立ちふさがる南北問題に目を向け、世界銀行など世界の経済秩序に対し、影響力を与えつつある一方、破壊を進める多国籍企業に対し、批判のための様々なキャンペーンを展開している。このホームページはアメリカのNGOの運動が中心であるが、世界各地で展開している原生林保護運動のホームページとリンクし、この運動の国際的連帯の要の一つとなっているホームページである。ブラジル、パプアニューギニア、カナダ、シベリアなど各国で深刻な問題が引き起こされているが、その状況や運動の実情などがこのホームページを足がかりにすれば、知るきっかけをつかむことができるだろう。現在三菱が国際的批判の的になっていることをご存知だろうか。このホームページからはこの三菱に対する、キャンペーンの様子も紹介されている。国際的な森林問題にとりくむ弁護士必見のホームページである。
4号(10月号・1997年9月25日発行)
「コスタリカ」 籠橋隆明(名古屋弁護士会)
http://swissnet.ai.mit.edu/cr/index.html
コスタリカという国をご存じだろうか。南アメリカの小国だが、内政不安定な南アメリカ諸国にあって、コスタリカは抜群の治安を誇ることで有名だ。ついでながら、戦争放棄も憲法で定めているというのであるからすごい。さて、今回のウェッヴサイトはコスタリカの自然環境のみならず、政治体制も含めて総合的に紹介されているものである。
コスタリカは平和な国ということを対外的にもアピールする国で、自然環境を国の重要な産業政策の一つとしている。そのため、世界各国の環境NGOも持続的発展のモデルケースとするため、さまざまな試みを行っている。このサイトには、コスタリカの熱帯特有の美しい森林や野生生物の写
真が掲載されているほか、コスタリカでの快適な生活や、楽しみ方が、もちろん原生的自然の中での快適な生活や楽しみのことであるが、エッセイ風にまとめ上げられている文書も掲載されている。筆者が大木のウロ野中に入り、ウロの中から顔だけ出している外真があるが、こけむした樹木に顔が出ている様は、まるで,森のもののけが地下から這い出たかのようで、度肝を抜かれる。
5号(11月号・1997年10月25日発行)
「グリーンパーティ」 籠橋隆明(名古屋弁護士会)
http://www.rahul.net/greens/
エコロジストとは言っても、ヨーロッパとアメリカとでは環境問題の取り組みのスタイルに違いを感じている人も少なくないであろう。ヨーロッパでは緑の党に見られるように、環境NGOが自治体のレベルから国家のレベルまで議会に進出して前進を図っているのに対し、アメリカ環境NGOはロビイングや、訴訟、直接行動に力を入れている。今回のホームページはアメリカ緑の党のものであるが、この政党は余り日本では紹介されていないように思われる。この政党はヨーロッパの緑の党とほとんど思想を同じくし、北米全体に活動を展開している。前回の大統領選挙ではラルフネーダーを候補者として戦ったというのであるから、いい加減なものではない。この党の特徴は組織なき組織という点である。ローカルなさまざまな運動が「10の価値」(Tem
Key Values)を一致点にして自主的に結集していくという考えをとっている。10の価値の中には環境の価値はもちろん、草の根民主主義、社会正義、フェミニズムなど社会的な価値が掲げらている。従って、その政策は環境問題のみならず、社会福祉、労働問題、マイノリティの課題とおよそ社会的正義にかかわるすべての課題が取り上げられている。草の根民主主義を積み上げて、地方を変え、さらに国政を変えようという彼らの姿勢には共感できるものがある。このウェブサイトではグリーンズの政策や北米の環境問題に対するさまざまな課題が紹介されている。
(籠橋)
6号(12月号・1997年11月25日発行)
「EARTH FIRST!」 籠橋隆明(名古屋弁護士会)
http://www.hrc.wmin.ac.uk/campaigns/ef/pubs/aulat.html
今回はアースファーストのウェブサイトを紹介する。非暴力直接行動についてはグリンピースが有名であるが、グリンピースは現代社会におけるマスメディアの重要性を考えて、直接行動を専らメディア対策と位
置づけている。彼らの本質は組織的な行動であり、専門性の高い情報の提供にある。一方、アースファーストは直接行動を身上とするグループである。彼らのホームページにはネイティブアメリカンの石斧とモンキーレンチがクロスしたロゴが登場する。彼らはアースファーストという言葉が思想の表現であり、組織の名称ではないことを強調する。彼らには思想はあるが、組織はない。アースファースト!の「!」が不可欠であると述べている。ホームページ冒頭にはハードロックの歌詞のような詩が掲げられ、"My
heart is crying.My spirit is on fire"と叫んでいる。その過激な心情から推察できるように、彼らの直接行動は半端ではない。彼らは行動のないキャンペーンを断固排除する。彼らは水没させられようとするダム湖の底に自らの体を鎖で縛りつける。自然破壊を招く森林伐採に対しては、樹木に鉄の杭を打ち込み、チェーンソーを破壊する。彼らにとって地球が第一であり、人間の作った秩序はその次なのだろう。彼らは"We
are howling out of cages"であり、"If you want entertainment and flashing lights,go
build fire and find some freinds to dance with"なのだ。彼らの情報交換フォーラムの題名は"DO
OR DIE"なのだが、これには直接行動の大好きな私でも、ああ怖いと思わずつぶやいてしまう。(籠橋)
7号(1.2月合併号・1998年1月25日発行)
「The Ramsar Convention on Wetlands ラムサール条約会議」 籠橋隆明(名古屋弁護士会)
http://www.iucn.org/themes/ramsar/index.html
今回のホームページはラムサール条約会議のものだ。ラムサール条約はイラン、ラムサールで締結された湿地の保護に関する内容を定めている。これは主には野鳥の保護を考えているが、湿地に生息する野生生物保護もこの条約の目的となっている。ラムサール条約登録湿地としては釧路湿原が存在する。諫早湾は広大でかつムツゴロウに限らず多くの野生生物にとって意味があるのだが、登録湿地ではない。おかしいぞ。
ともかく、ホームページでは現在105カ国の国が参加し、895カ所の湿地が保護の対象となっているということだ。このウェッブサイトは膨大なページ数にのぼり全部はとても紹介することはできず大まかな紹介しかできない。ともかく、このウェブサイトを読んでいて感じることは条約会議に集まる人たちがNGOの価値を認め、誰でも受け入れようとするアットホームな雰囲気を持っていることだ。ウェッブサイトには第7回会議の様子も詳しく報告されていて締結国の政府の代表のみならず多くのNGOが世界各地から集まってきている様子が写
真入りで紹介されている。ここにはラムサールフォーラムというのがあり、"The Ramsar
Forum is pleased to invite all interested persons to join Ramsar Forum・・・・”とあり、E-mail(ramsar-mgr@indaba.iucn.org.)を送れば、ラムサール条約会議に関する情報が送ってもらえる。ラムサール条約会議に参加したNGO、市民らは最初は変な人たちが集まっているし、どこで何を議論しているかわからないのだそうだ。しかし、だんだん慣れてくるとたくさんの人たちがかかわっていることが分かってくると言う。NGOの連帯というのはそういうものだ。(籠橋)
8号(3月号・1998年2月25日発行)
「@igc」 籠橋隆明(名古屋弁護士会)
http://www.igc.org/igc/
インターネットを使って社会問題に関するホームページを探したことのある方であれば、”@igc”のロゴを見たことがある人も少なくないと思う。igcは正式にはInstitute
for Global Communicationsといって、社会問題のためにウェブサイトを提供するプロバイダーだ。@
igcのホームページを覗くと5つの窓がある。Peace net(平和),Eco net(環境),Conflict
net(討議・連帯),Labor net(労働),Womens net(女性)、と5つの分野に分かれている。
それぞれに興味深いのであるが、地球の絵が示しているEco netのページをクリックすると@igcを利用しているNGOたちのネットワークのリストが登場する。エコネットはa decade
of support for ecological sustainability and environmental
justice ということで、環境と調和した持続性や環境的正義の擁護を目的としている。ここではさらに検索欄があって、例えば Africaの項をクリックするとAfrica
Onlineが登場する。さらに、ガーナの項をクリックすれば、ガーナの環境問題のホームページが登場し、ガーナとFAOが262,000ドルの国土資源管理プロジェクトに合意した記事が掲載されている。検索欄で法律家のネットワークを検索するとアフリカで環境正義のために活動している法律家NGOのネットワークも登場する。インターネットの国際的で専門性高い情報はこうして手に入れる。(籠橋)
9号(4月号・1998年3月25日発行)
「Food and Agriculture Organization of the United Nations」 籠橋隆明(名古屋弁護士会)
http://www.fao.org/default.htm
Food and Agriculture Organization of the United Nations(FAO)は現在174ヶ国及びECで構成され、1500名の専門家スタッフをかかえる国連最大の組織となっている。世界の環境問題は農業問題や人口問題を避けて通
ることはできない。FAOはこの問題に対し、信じられないほど大規模な統計的作業を実施し、持続的農業政策を実現するための戦略、政策を各国政府に提案している。前回のトピックスで紹介したガーナの記事はこのFAOとガーナ政府との農業政策の合意が紹介されていた。ところで、このFAOのウェッブサイトには”Legal
Highlights"というページがあって、FAOのリーガルオフィスからのニュースが紹介されている。彼らは食料農業問題を”humanity's
freedom from hunger"ととらえ、それらは社会的文化的権利の課題であるという。ウェッブサイトでは南アフリカ、マレーシアでの実践例が紹介されている。(籠橋)
「FAOも法的戦略を重視し法律部門を設けている。」
10号(5月号・1998年4月25日発行)
「AGAINST"SOEHARTO'S"DICTATOR PAGE」 籠橋隆明(名古屋弁護士会)
http://www.geocities.com/CapitolHill/6270/
今回は環境問題とは関係ないホームページの紹介です。
インターネットは従来のメディアとは全く異なった媒体であると言われている。
よいホームページができあがれば、個人の開設したホームページであっても全世界からアクセスしてくれるし、費用もかからないですむ。組織化されたメディア社会にあって、ある意味では個人の復権という側面
もあるだろう。当然のことながら、インターネットの社会では徹底した表現の自由が可能であり、法律も含めて統制というのはなかなか難しくなってしまう。H画像がインターネットでもてはやされてしまうのも仕方がないことだ。
ところで、今回のホームページはアンチ「スハルト」キャンペーンのホームページである。アジア太平洋資料センターの機関誌にたまたま目を通
していたらこのホームページの紹介がしてあった。ご存じ通りインドネシアは政情不安定で、スハルトの独裁に対して様々なキャンペーンが繰り広げられている。言論の統制下にあっても、ホームページは健在である。私はこのホームページを開設した団体がどのような団体であるかはよく分からないのだが、こうした、少数派、言論弾圧を受けている団体が持つことのできるメディアとしてもインターネットは有益なのである。国境のないこと、統制がなかなか困難であることはH画像のようないかがわしい情報も流通
してしまうのであるが、草の根の情報も流通する。スハルトの写真にNOと赤字で示している写
真も全世界に流通させることができる。
インドネシアの環境NGOは欧米の強力な環境NGO等の資金的な協力もあって、日本の環境NGOよりもはるかにしっかりしている。私はあるインドネシアの環境NGOのメンバーに話を聞く機会に恵まれたことがあるが、彼女らは「インドネシアでは環境問題を扱う以上、国軍と対立してしまう、できたら対決は避けたかったが、私たちは避けることができない問題として国軍と向かい合うことにした。」と述べていた。彼女らのホームページも探せば出てくるのかもしれない。(籠橋)
11号(6月号・1998年5月25日発行)
「EARTH ISLAND INSTITUTE」 籠橋隆明(名古屋弁護士会)
http://www.earthisland.org/ei/
今回はアース・アイランドを紹介しよう。アース・アイランドは1982年にデビット・ブラウワー(David
Brower)によって創設された。ブラウワーこそアメリカ環境保護運動のカリスマ的存在の一人だ。彼は元来はシエラクラブ所属の登山家であり、生粋のミュアー主義者である。彼はロビイングを重視し、様々な奇抜なアイデアでシエラクラブの運動をリードしアメリカ社会に大きな影響を与えてきた。その後、シエラクラブの理事を事実上解任されたのであるが、1969年には「地球の友」を創設している。この「地球の友」はこの機関誌の環境NGO紹介欄で紹介しているが、現在世界で最も会員数の多い環境NGOに発展している。その上、このアース・アイランドを創設したのであるから驚きだ。ホームページによるとアース・アイランドは「行動は必ずや官僚主義に先んずる」(action
should take precedence bureaucracy)を信条としている。現在、熱帯雨林保護、海洋生物保護、など30のプロジェクトを持ち、アースアイランドニュースを発行して世界各地のローカルな環境問題を取り上げている。また、環境NGOに対する組織的支援を行い、一度支援する事が決定されると、その環境NGOには専門家が派遣されアースアイランドが持っている組織力をそのまま利用できるという。シエラクラブ、地球の友、それぞれに決定的な影響を与え続けてきたブラウアーさんの組織ですから、きっとすごい援助が得られるのでしょう。思わず、日本環境法律家連盟も支援を受けてみようかなどと思ってしまう。(籠橋)
12号(7月号・1998年6月25日発行)
「INTERNATIONAL RIVERS NETWORK」 籠橋隆明(名古屋弁護士会)
http://www.irn.org/
アメリカには国際的な活動をするNGOが多い。INTERNATIONAL RIVERS NETWORKもその一つだ。ホームページを開くと世界地図が広げられ、彼らが応援している開発反対運動が紹介されている。ミャンマー、タイ、ベトナム、インド、南アフリカでの乱開発の実情、反対運動の進展、読者への行動提起と続き、ウェッブサイトはインターナショナルな雰囲気にあふれている。 ところで、経済活動に伴う不利益を社会的弱者に押しつけていくところに環境問題は発生する。そのため、環境問題は民主主義の課題を避けて通
ることができない。今回紹介のウェブサイトはそのことを明確に認識しているようだ。ホームページには「自由ビルマ」(FREE BURMA)の部屋が設けられ、それをクリックするとアウン・サン・スチーさんの状況や、議会の意向を無視して活動する開発省の問題点が指摘されている。FREE BURMAではカレン族などミャンマー国内の少数民族が居住する地域(Tenasserim area)で進められている天然ガスパイプラインのプロジェクトに対して反対運動を展開している。このプロジェクトはフランス、アメリカ、英国、など先進国の石油メジャーらが共同で進められ、日本からは日本石油が加わっていると記されている。
ミャンマー政府の全面的な後押しを受けているこのプロジェクトでは、熱帯雨林の破壊をもちろん問題であるし、テリトリーの分断の問題も指摘している。そのほか、少数民族の強制移住、強制労働(写
真)、などにも紙面をかなり割いている。ウェブサイトには鎖で繋がれている人の写
真や、僧の姿をしたおそらく抵抗運動を進めている少数民族の人々の写真が添えられている。FREE BRUMAの締めくくりは次のようになっている。
Burma is ruled by illegal military regime called the State.(籠橋)
13号(8.9月合併号・1998年7月25日発行)
「Forests,Trees and People Programme & Network」 籠橋隆明(名古屋弁護士会)
http://www-tree.slu.se/index.html
このウェッブサイトはスエーデン大学農学部、地域開発研究所、国連食料農業機構(FAO)などがジョイントして運営している。世界各地で実践されている森林政策、環境政策の紹介交流が主な役割である。既にお気づきのことと思うが、このインターネットトピックスのコーナーでは主にはアメリカのNGOの紹介が中心となっているが、その国際性には目を見張らされる。各地域の連絡先の欄を見ると、ヨーロッパ、アフリカ、北アフリカ、アジア、太平洋地域などのメンバー連絡場所が示され、さらにアフリカの欄を探っていくと、エチオピア、ケニア、タンザニア、ウガンダと細かくなっていく。ホームページの冒頭にはネパールで実践されている"Wsrkshop
for Women Professyonal in Community Forestry"に関する記事があることや、タンザニアの"The
Case of Mgori Forist"に関する記事があることを紹介し、「ロンゴロンゴの声」のページではタンザニアのマサイ族の人々が、鉱山開発やツーリズムなど商業的開発によって、自分たちの土地を失ったとしている。おそらくマサイ族の人々が次々と自分たちの境遇を訴えたのであろう、そうした人々一人一人の顔写
真がここでは紹介されており、人々と森林の関係を具体的に表現されている。もちろん、アメリカのウエッブサイトにもつまらないものある。おそらく当初は鳴り物入りで始まったのであろうがほとんど更新されている様子がないまま放置されているものも少なくない。世界の人々と交流し、あたかも国際会議が日常的に実践されている例も少なくないのである。日本ではこのような国際会議の場としての利用は少ないように思われる。しかし、我が連盟もは近々国際部会を発足させて、インターネットを活用した国際会議に参加する予定である。
14号(10月号・1998年9月25日発行)
「CIEL」 籠橋隆明(名古屋弁護士会)・高田しのぶ(名古屋E&J法律事務所)
http://www.econet.apc.org/ciel/
アメリカ環境保護運動は絶えず世界に目を向け、自分たちの知識と経験を国際的な環境保護運動に役立てようとしている。こうした傾向はアメリカばかりではない。日本の環境NGOも国際的な環境保護運動の潮流の中で自分たちの活動を位
置づけていくことも必要なことだ。というので、今回はCIELを紹介します。
About CIEL:
The Center for International Environmental Law (CIEL) is a public interest,
not-for-profit environmental law firm founded in 1989 to bring the energy and
experience of the U.S. public interest environmental movement to the critical
task of strengthening and developing international and comparative environmental
law, policy, and management around the world.
CIEL's goals:
to solve environmental problems and promote sustainable societies through the
use of law, to incorporate fundamental principles of ecology and democracy into
international law, to strengthen national environmental law systems and support
public interest movements around the world, and to educate and train public-interest-minded
environmental lawyers.
CIEL's program areas include Global Commons, Biodiversity and Wildlife, Trade
and Environment, International Financial Insitutions, and Policy Analysis and
Capacity Building. CIEL's work covers more than 60 countries on six continents,
with emphasis on the Western Hemisphere, Central and Eastern Europe and the
Newly Independent States, and Asia.
「CIELは、アメリカが環境保護運動で培きた力と経験と生かして、国際法、国際政策を強化し発展させること目的に設立された非営利の公共的ローファームである。CIELに所属する弁護士や経営学の専門家たちは、各国の環境法や環境保護運動の強化のために全面
的な支援活動を展開している。また、アメリカ大学ワシントン法律学校における共同研究と教育プログラムの指導も行っている。さらに、発展途上国や経済が過渡期にある国を中心に、非政府組織や国際機関、政府と共に、世界中で仕事をしている。その仕事は、6つの大陸の60カ国以上に及んでいる。」(籠橋・高田)
15号(11月号・1998年10月25日発行)
「National Wildlife Federation(全米野生生物連盟)」 籠橋隆明(名古屋弁護士会)
http://www.nwf.org/index.html
NWFは米国最大の環境NGOである。これまでいろいろNGOを紹介してきましたが、このNWFはあまりメジヤーなので紹介したくなかったという本音でした。全米ライフル協会というハンティングのNGOとも仲がいい。設立は大恐慌の嵐吹き荒れる1936年だ。全米に500万人の会員を持ち、米議会に大きな影響力を持つ。銀行まで変革の対象にしちゃうなんて、そのメジャーぶりは次の記事の紹介からもうかがわれよう。
Multilateral development banks wield significant over developing country governments
and disburs the bulk of development funding. We were oneof the founders of the
citizens campaign to reform these official banks,pressing them to reduce the
social and environmental harm caused by many of their loans. Major reforms have
been won in recent years, and we have now turned to the task of applying these
reforms to private commercial and investment bannks who have recently taken
ovear the leading role in development lending Check out the following reports:
多国間の開発銀行は発展途上国の政治に大きな影響を及ぼし、開発投資の大部分を担っている。我々はそういった公の銀行を改革するための市民運動を創設し、それらの銀行に働きかけて多大な貸し付け金によってもたらされる社会的・環境的損害を減らすようしきりに促している。主要な改革は近年成功しつつある。そして我々は今や開発貸し付けにおいて主導的な役割を担いつつある民間の営利銀行や投資銀行にもそれらの改革を適用するという仕事にとりかかっている。
16号(12月号・1998年11月25日発行)
「Sea Shepherd Conservation Society シーシェパード協会」 籠橋隆明(名古屋弁護士会)
http://www.seashepherd.org/
シーシェパード協会は1977年に世界の海洋性野生生物を保護するために設立された。創立メンバーのポールワトソンは、グリンピースのone
of the original founding fathersで、その行動が過激過ぎてグリンピースに飽き足らなくなり
dirct action or ganizationということで、この協会を設立したそうだから、その行動も半端ではない。違法操業を行うスペインの捕鯨船を爆破して沈没させているし、アイスランドでも同じことをしている。最近では日本や台湾の流し網を切っているそうだ。海洋生物、特に海洋哺乳類に対する人類の行為は時には目を覆いたくなるようなひどい仕打ちをしているが、彼らの行動は神をも畏れぬ
人間の非道を懲罰するという素朴な共感に支えられている気がする。しかし、このウェッブサイトを見る限りは国際的なルールなどの維持、強化や海洋生物の調査、報告にも熱心なようだ。このコーナーでも紹介したアースファーストなどは私の目から見るとテロリストで訳の分からない連中なのだが、シー・シェパード協会や、最初ころに紹介したことのあるレイフォリスト・アクション・ネットワークなどは直接行動にたえず別
の計算、つまりメディアを引きつけ社会的に影響力を持たしていく計算がたえず働いているところに、どうも食えない連中と言うしたたかさを感じてしまう。NGOというと日本では素朴なシロウト集団のイメージがつきまとうが、本当はプロ集団としてのしたたかさが必要である。そんなときに、即効的な直接行動を選ぶか、長期にわたる目に見えない影響力を重視するかは難しい問題となる。
17号(1・2月合併号・1999年1月25日発行)
「The World Bank 世界銀行」 籠橋隆明(名古屋弁護士会)
http://www.worldbankTokyo.or.jp/obgroup/hon_flame.htm
今回紹介のウェブサイトは世界銀行である。世界の貧しい国々は世界銀行から金を借り多額の債務の返済に苦しんでいる。世界銀行と言うと南北問題悪玉
の親分のようなイメージを受けている人も多いだろう。本当に先進国はこうした世界銀行などの金融システムを利用して世界を支配しているのだと思う。それだけに債務の問題は南北問題を解決する上で非常に重要な課題となる。世界銀行なんかと言ってほっておいたら悪者が更生のチャンスもなく悪くなっていくのだろう。こんなことを意識してかしないかは分からないが最近の国際的NGOは世界銀行に対するロビイングを強化している。そして、このウェブサイトを除くと、持続的発展の必要性、自由貿易制度の下で発生している公害輸出の問題点に触れられているのであるから、やはり更生の努力はしてみるものだと思う。このサイトを見る限りは、世界銀行はNGOとの共同行動を重視し、少数民族や女性の疎外された人々のためにTHEBANKは政策を考え出し、実行するとしている。この変動は環境NGOが世界銀行にかかわり始めたこの10年ぐらいのことであり、私はつくづく世界のNGOはしたたかなものだと感心してしまう。
18号(3月号・1999年2月25日発行)
「Earthjustice Legal Defense Fund (ELDF」 籠橋隆明(名古屋弁護士会)
(URL紹介はありません)
日本環境法律家連盟結成に当たって私たちはサンフランシスコにあるNGOをいくつか訪問した。そうしたNGOの一つにSierra
Club Legal Defence Fund(SLDF)があった。SLDFはELDFとなった。一般
市民の会費によって運営されている公共的法律事務所と言うのは私たちがそれまで知っていた法律事務所とは全く異なったイメージであり、私も含めてそこに居合わせた多くの弁護士が特別
な印象を受けた。また、環境問題に対して訴訟という戦術をとるNGOが市民の支持を得てNGOとして存続すると言うのも私たちが日本で実現しようとしているNGOのあり方に示唆を与えるものであった。私たちは日本に帰り日本環境法律家連盟を結成した。その結成の日にはSLDFの代表が講演した。
ポームページにはELDFの活動紹介が次のように記載されている。簡単な英語なので全文紹介する。ELDFは自然保護事件のみならず、公害事件も取り扱い、さらに国際的な法的戦略についても論議している。法律事務所を環境NGOととらえる米国ならではのことかもしれない。しかし、日本の公害事件はその事件に価値を認める市民によって支えられている。
日本環境法律家連盟も徐々に公共的法律事務所創設に向けて動いてもよいのではないか。
abaut us
Earthjustice Legal Defense Fund, formerly the Sierra Club Legal Defense Fund,is
the law firm for the environmemt. For more than a quarter century,the Legal
Defense Fund has represented hundreds of environmental clients,large and small,
without charge.
When reason and persuasion fail to protect the environment, the Legal Defense
Fund goes to court to safeguard public lands, national forests,parks and wilderness
areas; to reduce air and water pollution; to prevent and to achieve environmental
justice.
19号(4月号・1999年3月25日発行)
「Papua New Guinea Rainforest Campaign」 籠橋隆明(名古屋弁護士会)
http://forests.lic.wisc.edu/pngforest.html
今回はパプアニューギニア関連のホームページを紹介します。
世界には川の保護を求めるネットワークであるとか、森林保護を求めるネットワークであるとかいろいろ存在する。驚いてしまうのは、いったいどこから情報を入手するのだろうと思われるような記事があることだ。1998年7月号で紹介したINTERNATION
RIBERS NETWORKでは世界の河川問題、それもメコン川とか、ガンジス川とかアマゾン川とかの問題を取り上げて最新の情報をホームページで提供している。ビルマの奥地で少数民族がガスパイプライン麹のために強制労働させられているという記事などはどうやって手に入れるのだろうと感心してしまう。今回紹介のパプアニューギニアのホームページはGAIA
Forest Conservation Archives の一室に紹介されたウェッブサイトである。
このガイア何とかというホームページにも世界のいろいろな森林問題が紹介されているので面
白いが、とりあえず、Papua New Guinea Rainforest Campaign News Archives 紹介いたしましょう。
パプアニューギニアはご存知の通り極楽鳥の住む楽園のイメージを掲げている人も多いかと思う。熱帯のこの島は旧大陸と、新大陸が交わり進化論を考える上でも大変興味深い地域であると言うことだ。極楽鳥がいるわ、トリバネアゲハがいるわ、ほ乳類では有袋類も生息している。進化論の巨匠と言えばチャールズダーウィンさんだが、それと同じぐらい巨匠のアルフレッド・ラッセル・ウォーレスさんという方がいたのだが、彼もパプアの森からは学問上の深い啓示を受けている。多くの民族が混在し、文化人類学的にも興味深い地域であることにも関心をそそられてしまう。戦争のことに関心がある人はラバウルなどを思い浮かべるかもしれない。
しかし、豊かなパプア・ニューギニアの森林もまた、文明の餌食になろうとしていることをご存知だろうか。この地には先住民らが多様な文化を持ちつつ自然との調和を心得て生活してきたのであるが、文明がもたらした法律は彼らを必ずしも守ってはない。土地の所有権は彼らにあっても、伐採権は分離して商社の手に落ちていく。彼らを長く養ってきた森林はわずかなお金で売り渡され、森林は文化と共に失われていくのである。
ホームページにはパプアニューギニアの森林伐採に関する最新情報が啓示されている。また、お金が森を奪う一こま漫画や、美しい森や、様々な文化を持つ先住民のことが写
真で紹介されている。熱帯雨林が皆伐されてまるはだかにされ、赤土が河川に流入している様子などには心が痛められる。森林を失わせ得る犯罪とも言うべき行為に多国籍企業が関与している。日本本籍の企業も例外ではない。
20号(5月号・1999年4月25日発行)
「WTO」 籠橋隆明(名古屋弁護士会)
http://www.wto.org/
今回はWTOのウェッブサイトを紹介しよう。日本環境法律家連盟では神奈川の薦田
哲先生、東京の小島延夫先生を中心に国際部を発足した。国際部では当面WTO問題を取り扱うことになっている。
WTO(世界貿易機関:World Trade Organization)はウルグァイ・ラウンド交渉の
結果1994年に設立が合意され、1995年1月1日に設立された。自由貿易を基本とした国際
貿易ルールを実施するために設けられた機関である。ジュネーブに本部を置き、閣僚会議が最高意思決定機関である。今年の閣僚会議は11月30日から12月3日まで米国シアト
ルで実施 される予定である。自由貿易に関するあらゆる項目が議論され、その趨勢は世界の経済
体制、政治体制に大きな影響を与えると考えられている。
さて、今回のウェッブサイトですが、環境保護政策が自由貿易を規制するから緩和し
ろとの圧力かかっていることはご存じのことと思います。世界の原生林の保護運動の活
動家は目下WTO問題に大きなエネルギーを注いでいます。また、国内にあっては農産
物輸入の自由化が大きな争点となり政府も世界(米国)の圧力に抗しきれないのが実情
ですね。 このウェッブサイトでは包括的な課題を抱えるWTOらしく、ホームページ
には実に多様な課題が掲げられています。もちろん注目すべきはEnvironmentです。こ
こを見る限り 、WTOはそれなりに環境問題を忘れてはいないようです。"Background
to WTO work on trade and environment"を覗いてみると、WTOの基本的政策は"Earth
Summit"
の成 果の上にたっており、環境資源の保全のための国際的努力や持続的発展の実現が自由で
公平、包括的な貿易体制のキーポイントであるということのようです。"WTO Menbers
believe that work in the WTO on contributing to build a constructive relationship
between trade,environment and sustainable develpment needs to continue."と いうこと
で努力していきたいと言うことです。
ついでながら、WTOではNGOとの交流にも力をいれているようです。ウェッブサ
イトには"RELATIONS WITH NGOS"というサイトがあり、そこではNGOとの交流をCivil
Societyとの交流ととらえ、"..NGOs,which we fully expect will offer inportant
benefits for all parties concerned"と期待されているようです。
21号(6月号・1999年5月25日発行)
「シエラ・クラブ」 籠橋隆明(名古屋弁護士会)
http://www.sierraclub.org/
今回はシエラクラブの紹介をいたしましょう。
シエラ・クラブは山岳愛好家らによって1892年に始められた。ジョン・ミュアーの自然保護思想を組織の考えとし、シエラネバダの美しい自然景観を守るために運動を展開し、現在では全米に支部を持って、国内の様々な環境問題に取り組んでいる。裁判を自然保護運動に利用することも珍しくなく、1969年後半から、1972年にかけて彼らが進めたミネラルキング渓谷事件は、環境利益を基礎に原告適格を認めさせ連邦最高裁の判例を変更させた事件として有名である。
ちなみに、この裁判は奄美大島の「自然の権利」訴訟のモデルとなっています。
さて、シエラ・クラブの運動は、従来、白人のしかも男性の運動であると批判された。ミュアーの思想が男女の別
なく広く支持されていることや、シエラ・クラブの古い写真に女性が多く登場していることからみると、そんな冷たい批判などしなくてもよいように思われるが、この問題点は組織内部でもかなり時間をかけて論議をされたらしい。その結果
、シエラ・クラブは環境問題の背景をなす社会問題にも目を向け、環境と人権の課題にも目を向けるようになった。
ホームページをのぞくと、"Human Rights & theEnvironment"というページが設けられており、そこには、シエラ・クラブは環境上の権利は人権問題と直接結びついていると信じていると記載されている。ケニヤではグリーンベルトムーブメントという運動があり、失われれた緑を取り戻す運動があるが、これが地域の自治を活性化させてきたことや、地域住民との民主主義的な要求と結びついていることから、その活動家は政府により拘束され、弾圧の対象となっている。シエラ・クラブは人権と環境との結びつきをこのように説明するのである。
ホームページには環境的権利と市民の権利という論文があり、冒頭部分はジョン・F・ケネディの次の言葉が引用されている。
"Those who make peaceful revolution impossible will make violent revolution
inevitable."
シエラ・クラブは環境保護運動を平和的革命とも暴力的革命ともとらえていているのではないだろうか。(籠橋)
22号(7月号・1999年6月25日発行)
「Darwin Awards」 籠橋隆明(名古屋弁護士会)・高田しのぶ(名古屋E&J法律事務所)
http://www.darwinawards.com/
環境問題を取り扱う上では自然科学的情報が不可欠であるが、文科系の法律家にはこうした情報をどこから入手して良いか分からないことが多い。朝日新聞社が出している雑誌「サイアス」は環境派弁護士にとっても有益な雑誌だ。今年の6月号では「笑い」をテーマに特集が組まれており面
白い記事が多い。その中で、今回紹介のダーウィン賞のホームページが紹介されてあった。これは馬鹿げた死に方をしたニュースを人類の遺伝子プールに寄与したとして表彰するというものである。エコロージーとはあまり関係ないが、こんなHPもあるのだということで紹介する。いささか悪趣味だが、それでも1999年には82万人のアクセスがあるぞ(高田・籠橋)。
Dum Dum Boutique
1999 Darwin Awards Nominee
Confirmed True by Darwin
(10 April 1999, New York) Terrence Adams accidentally hanged himself on Saturday
when his sweater tangled around his neck as he tried to break into a clothing
boutique. The 55 year old Brooklyn burglar was attempting to enter the shop
from the roof by bending back bars on the window. When he jumped into the store,
his sweater caught on the twisted metal and strangled him. He was found dead
at the scene on Saturday morning.
In honor of his misadventure, residents of the Flatbush neighborhood have suggested
that the Dum Dum Boutique be renamed the Dumb Dumb Boutique.
ダム・ダム・ブティック
1999年ダーウィン賞ノミネート。
(1999年4月10日、ニューヨーク) テレンス・アダムズは土曜日、ブティックに押し入ろうとして、来ていたセーターが首にからまり、思わぬ
自殺となった。その55歳のブルックリンの泥棒は、窓の格子をねじ曲げて、屋根から店に入ろうとした。店の中に飛び込んだとき、自分のセーターがねじれた金具にひっかかり、窒息死したのだ。彼は土曜日の朝、その場所で死体となって発見された。
彼の災難を記念して、フラットブッシュ近隣の住民たちは、ダム・ダム・ブティック(Dum
Dum Boutique)という店の名を、愚かなブティック(Dumb Dumb Boutique)と変えてはどうかと提案した。
23号(8・9月合併号・1999年7月25日発行)
「Dolphin Circle」 森 弘典(名古屋弁護士会)
(URL紹介はありません)
最近やたらと「癒し」という言葉を耳にします。そう言えば、坂本龍一のピアノ曲がCDの売上ナンバーワンになったとか。あくせくと働いても、景気はなかなか好転せず、ふと自分の生活を振り返ってみるとむなしくなり、癒されたくなるのではないでしょうか。
そんな癒されたい人にとってとっておきのウエッブサイトをお知らせします。ドルフィン・サークルです。
私自身イルカが好きなので、引き寄せられるようにウエッブサイトにコンタクトしました。
すると、まずWelcome to the Healing World of Dolphins!「イルカの癒しの世界へようこそ!」の文字が目に飛び込んできました。イルカと「癒し」とどういう関係があるのだろうと興味深く読み進めると、The
Dolphin Circle exists to increase your awareness of dolphins and the world of
marine mammals.Our special focus is on the influence the dolphins may have on
emotional and physical healing.「ドルフィン・サークルは、イルカや海に住む哺乳類の世界をもっともっと知ってもらうためのサークルです。このサークルは、イルカが人間の心身の癒しに与える効果
に注目しています。」と書かれています。その後の部分も読んでいくと、どうもこのサークルは、私たちに野生のイルカに会ったり野生のイルカと一緒に泳ぐツアーを企画していて、そのような経験を通
して私たちに癒しの機会を与えてくれるようです。
We have just a few spaces left on the August trip.Please let us know immediately
if you want to join us,so we can reserve your space on the boat.This is an opportunity
you won't want to miss!「八月のツアーはあと若干しか余裕がありません。もし参加したい方はすぐにお知らせ下さい。ボートの席を確保しておきます。この機会を逃してはいけませんよ。」とも書かれています。「癒し」が必要な方は、このツアーに参加されてはいかがでしょうか。私も是非とも参加したいのですが、そもそも癒されるだけの時間的余裕がありません。
24号(10月号・1999年9月25日発行)
「The Women's Environment & Development Organization(WEDO)」
http://www.wedo.org/
表題の通り、このグループは女性の地位向上のために活動する世界各地のNGOを支援している。彼らの活動の基盤は国連であり、その思想的指針は1991年世界女性会議で作成された21世紀のためのブループリントにある。ホームページには「「女性の環境と開発組織」は国連や世界銀行などにおいて、地域的な活動の支援を行ったり、地域的な活動を行うことを通
して平和やジェンダー、人権、環境、経済的正義に関する政策決定に女性が重要な役割を果
たすことができるよう活動する。」とこのNGOの自己紹介を掲載している。平和、ジェンダー、環境、経済的正義などといった言葉は環境NGOのみならず、人権や平和、労働問題を扱うNGOも掲げるようになっており、今や国際的連帯のためのキーワードになっている。このWEDOが掲げる内容も、一見当たり前のように見えるが、実は非常に重要な意味合いを含んでいるのだ。
女性と環境は一体のものとして論じられることが多い。しかし、女性問題と環境問題を結びつけることについて少々強引さを感じている方も多いのではないだろうか。あるグループは母性を強調することで女性こそが環境の問題を真剣にとらえることができるという議論を展開しているがこんな議論はやっぱり無理があると思う。私は女性と環境問題と結びつけるのはやはりどこか無理があると感じてしまう。重要なのは人を取り巻く環境というのは自然環境ばかりではないということである。女性に対する差別
、貧困、など様々な社会的要素が人を取り囲み、人は自己の尊厳を維持できないあるいは抑圧された状態におかれているということを認識することが大切なのではないだろうか。環境は環境で人を抑圧する独自の課題があり、ジェンダーはジェンダーで女性が抑圧されているという独自の課題がある。しかし、課題は結局は一人の人をとりまく状況の切り口でしかない。個人の状況は、特に第三世界では必ずしも良好とは言えない。それは、環境問題の視点からもそうだし、ジェンダーの視点からもそうなのだ。女性と環境の課題はこうした個人を総合的にとらえてみたときに相互の関係が明確になるものだと思われる。
このHPは、こうした総合性という点では非常にすぐれたものだ。ケニアのグリーンベルト運動を展開する女性活動家が逮捕された記事はその典型だろう。今回は紙面
の都合で紹介できないので次回、続きを紹介しますね。(籠橋)
25号(11月号・1999年10月25日発行)
「The Women's Environment & Development Organization (WEDO) 2
Kenyan Ecologist Beaten As She Attempts To Plant Trees」
籠橋隆明(名古屋弁護士会)
http://www.wedo.org/press/wangari_attacked.htm
前回に続いて、WEDOのウェッブサイトから紹介しましょう。
本誌の名前である「環境と正義」と言うのはだてについているわけではない。
environment and justiceと言うのは環境問題を人権問題に結びつけるところに今日の環境問題の最も重要な課題が存在している。公害問題はもちろん、自然破壊の問題も平等や自由、人権といった近代以来の大原則によって解決を図ろうというのが環境的正義の原点である。ところで、振り返ってみれば世の中の社会問題は全てこの平等、自由、人権と言ったテーマで解決が図られるべき事はいうまでもない。人々を取り巻く状況はいわゆる自然環境、安全な環境、生活できる環境と様々有り、それが総合されて初めて個人の尊厳は維持される。環境問題は人の尊厳を実現するための位
置側面でしかないし、女性問題もしかりである。つまり、社会的弱者の尊厳を全うするという点において環境問題も女性問題もその他の社会的課題も共通
の目的を持つことになるのである。もちろん、敵は多国籍企業であり、無秩序な自由競争である。
前置きが長くなったのだが、このWEDOには世界の記事を紹介するコーナーがあって、そこではケニアのWangariMaathaiさんが、警察や暴徒に頭部を打ち据えられるという事件の記事が紹介してある。ワンガリ女史はケニアのグリーンベルト運動のリーダーで、地域に木を植えて、土地の生産性を上げ、地域の自立を促すキャンペーンを行っている。土地に木を植えるだけの運動であれば、こんな事件は起きない。ケニアのグリーンベルト運動は政府に対しても自律的なコミュニティーをつくろうとしており、これが反体制的と疑われ、ついに反体制をきらう政府役人に暴行を受けたというのが今回の記事だ。しかし、明確に人権と環境、女性と環境を結びつけているこの事件は環境問題の中ではけっしてめずらしいものではない。(籠橋)
26号(12月号・1999年11月25日発行)
「Smithsonian Institution - The Conservation and Research Center 」 森 弘典(名古屋弁護士会)
http://www.si.edu/crc/
今回は、スミソニアン博物館の種の保全・研究センターをご紹介します。
スミソニアン博物館は、ワシントンDCにあり、いくつもの建物からなる博物館群です。私も、ワシントンDC滞在中に何度も訪れましたが、そのスケールの大きさのみならず、いずれの博物館も入場料が無料ということに驚かされました。
インターネットでいろいろなウエッブサイトを検索していたら、スミソニアンの文字が目に入りましたので、クリックしてみました。そうしたら、このセンターのウエッブサイトに行き着いたわけです。
読んでみると、「当センターは、生物の多様性の保全を進めることを使命にしています」とあります。そして、「スミソニアン博物館の指令に応じて、当センターは、絶滅危惧種・生息地の調査を通
じて知識を増進させ、高度の教育、専門的訓練、会員拡大を通じて知識を広めています。」と言っています。
そう言えば、ワシントンDC滞在中に、「特にワシントンDCの博物館、水族館などでは、展示だけがなされているわけではなく、実はその博物館、水族館を中心にして研究者、科学者が集まり、調査・研究活動をしている」ということを耳にしました。そして、スミソニアン博物館とボルチモア水族館はワシントンDC滞在中に一度行ってみるといいと勧められました。結局時間がなくて、ボルチモア水族館には行けませんでしたが、スミソニアン博物館には何度も行きました。何度行っても飽きさせないものがそこにあったからです。
さて、話を元に戻して、このセンターのウエッブサイトをさらに見ていくと、サイトマップというのがあって、その中には様々な研究活動、訓練、教育活動などがメニューとして挙がっています。そのうちの教育活動がおもしろそうなので覗くと、去年の2月6〜8日にかけて、スミソニアン、国立動物園、センター長、教員、動物世話係、科学者、環境保護団体、地元学校の校長、科学の先生などの代表者が集まって、環境教育のビジョンを構築するための共同研究会を開いたという情報に行き当たりました。とても興味深い試みですね。
27号 (1,2月合併号・1999年12月25日発行)
「THE GOVERNMENT OF TIBET IN
EXILE」 森 弘典(名古屋弁護士会)
http://www.tibet.com/index.html
京都にチベット料理の店があって、そこはチベット亡命政府への支援活動の拠点となっている。ちなみに、この店はランゼンと名前で、チベット語で自由という意味らしい。これまではチベットで抵抗運動を続けるチベット人や旅行者などからチベットの情報を得ていたが、最近では電子メールやホームページからの情報も多く助かっていると言うことだ。このようにHPは既存のメディアに頼らなくとも情報交換ができるという画期的な役割を持つ。
そこで、今回はチベット亡命政府のオフィシャルサイトを覗いてみることにした。このサイトは通 常のHPに比べると非常に殺風景にできあがっている。いきなり文字ばかりのメニューでできあがっていて、チベット亡命政府に関する多くの情報が整理された形で示されている。中には
Tibet's evironment:A Cruceal issue というサイトがある。
「2000年前からチベットは3つの地域を統治していたが、1949年中国が侵略し占領を始めた。」「自然との調和した生活を営むことがチベット仏教徒の信念であった。」この信念によって守られてきた「チベットの自然は、中国の占領により広範囲に破壊されつつある。」「森林伐採、鉱脈の乱開発、野生生物の乱獲、放射性廃棄物の放置、乱開発による土砂の流出」などが引き起こされている。
チベットはヒマラヤ山脈に区切られた平均3650mを越える高山地帯であるが、多くの固有の野生生物が生息している。あまり知られていないが、2500万haの森林でおおわれ、現在では野生のジャイアントパンダのほとんどがチベットの森林地帯に生息している。この森林地帯に伐採が進められ多くの野生生物の生得地が奪われているほか、土砂の流出による河川の汚濁が問題になっている。チベット高原はインダス川、メコン川、黄河など世界に名だたる河川の源流となっているが、それが森林伐採や鉱山採掘のために汚濁され、下流域に洪水などの被害をもたらしているというのだ。
紙面の都合で詳しく書けないのが残念だが、ダライ・ラマは人権分野のみならず環境保護分野での活躍も理由にノーベル賞を受賞している。
This Peace Plan of His Holiness the Dalai Lama was rejected by China. In 1989,
His Holiness the Dalai Lama was the first person to have his environmental work
cited as a reason for being awarded the Nobel Peace Prize.
28号(3月号・2000年2月25日発行)
「THE STRUGGLE FOR EAST TIMOR」 籠橋隆明(名古屋弁護士会)
http://www.motherjones.com/east_timor/index.html
1999年8月30日、東チモールはインドネシア民兵のすさまじい暴力にさらされながらも圧倒的多数の人々が独立を選択した。今回は東チモール独立運動を紹介したHPを紹介する。
「アムネスティインターナショナルの調査によると、インドネシアの東チモール支配によって、1975年インドネシア侵略以来、20万人の命が奪われた。現在、100年に及ぶ植民地支配の後に、その抵抗運動の力により、東チモールはついに自分たちの運命について声をあげることができた。」と始まるこのホームページはポルトガルの植民地支配、その後のインドネシアによる侵略などの歴史が手短に紹介してある。アメリカやイギリス、オーストラリアも含めてインドネシアを支援を行い、国際的な孤立の中で東チモールの独立運動は何度か挫折の危機にみまわれながらねばり強く運動を継続してきた。ローマ法王の訪問を始めとした、国際世論への働きかけを継続し、東チモールはついに独立を勝ち取ったのである。
メディアでも多く報道されているように、独立を問う住民投票の過程では様々な虐殺、拷問、強迫、ハラスメントなどが行われた。HPにはその様子も紹介されている。国の多くの施設が破壊され、人間的な信頼関係すらも危機に見舞われ、東チモールの人々は現在国の再建にむけて努力が始まっている。憲法起草の準備も始められているそうだ。また東ティモール民族抵抗評議会シャナナ・グスマォンさんの話によると村や地域レベルのコミュニティ強化プログラムを提案していくそうである。
環境問題は国際的な人権問題でもあるし、人権問題の解決無くして環境問題の解決あり得ない。私たち日本環境法律家連盟も東チモールの問題に無関心で通 すことはできない。(籠橋)
29号(4月号・2000年3月25日発行)
「RAYMOND COMMUNICATIONS 」 森弘典(名古屋弁護士会)
http://www.raymond.com/
ご存じのように、1995年に容器包装リサイクル法が制定され、すでに97年度からガラス瓶とペットボトルのリサイクルが実施されていますが、今年の4月からは対象が広がり、紙とプラスチック(レジ袋やトレーなど)についてもリサイクルが実施されます。家電リサイクル法は、1998年に制定され、準備期間をおいて3年後に本格施行されることになっています。
そこで、今回はそのようなリサイクル法についての国際情報に詳しいウエッブサイトである「レイモンド・コミュニケーションズ」をご紹介します。
レイモンド・コミュニケーションズは、1991年に設立されたリサイクル法に関するニュース、分析、予測を提供する団体です。
ホームページによれば、ヨーロッパやアジアでは、包装や多種類の生産物についての「製造者責任」(producer
responsibility)が今や28か国以上で法制化されているようです。15か国では、電池リサイクル法が制定され、12か国では、電化製品の(販売者)引き取り(take-back)が提案されているとのことです。特に、ヨーロッパの状況について詳しく書かれており、ヨーロッパでは、各国は全ての包装物の25〜45%をリサイクルしなければならず、金属缶
についても15%以上はリサイクルしなければならないようです。
欧米諸国の状況とは別にアジア(台湾、日本、中国、韓国)の状況についても書かれています。日本のところを見ると、「日本は、今、包装リサイクル法に取り組んでいるところです。国会は、最近、電化製品やテレビの引き取り義務を法制化しました。」となっています。
このウエッブサイトは1か月おきに全世界のリサイクル法に関するニュースを提供してくれるようです。EU、ドイツ、オーストリアなどのヨーロッパ諸国、日本、マレーシア、シンガポール、台湾などのアジア諸国などのリサイクル法に関するさらに詳しいデータを入手することができますから、皆さんどうぞご活用下さい。
30号(5月号・2000年4月25日発行)
「Enviro Link 」 籠橋隆明(名古屋弁護士会)
http://www.envirolink.org/
インヴァイロリンクを紹介しよう。これは1991年にJosh Knauerさんによって設立されたネットワークで、環境問題を中心的なテーマとして情報を提供している。ホームページの紹介を見ると世界150カ国の数百の組織とボランティアを結びつけていると言うことだ。ホームページにはタイムやニュースウィークなどの有名雑誌がこの団体に対して行なった高い評価を紹介している。EnviroNews,EnviroLink
Libraryなどを見るとかなり充実している。
ためしにESA(ENDANGERED SPECIES ACT:米国種の保存法)を探してみると、一般人にも分かるようにESAが紹介されている(http://www.enviroweb.org/issues/esa/Overview/esa_over.html)。日本にも種の保存法があるが、米国のそれとは著しく異なる。米国種ほ保存法は種の保存の価値を比較できない価値として重視し、連邦政府を始めとした一般
の行為を厳しく監督している。たった3インチ魚が巨大ダム開発を止めてしまった事件はあまりに有名だ。
このウェッブでありがたいのはこの強力なESAに関する米国の論争の一端を知ることができる点だ。たとえば米国太平洋がんのスポッティドオウルというふくろうが絶滅危惧種に指定されて森林伐採による保護が図られているのであるが、一部の新聞記事はフクロウが木材加工産業をだめにしており、ESAは地域のコミュニティのことなど考えていないと報じた。これにたいして、サイトでは「フクロウが大切か、仕事が大切か」という誤った議論が蔓延しているとし、木材産業のハイテク化となま木のままの輸出量
の増加が失業につながったとしている。また、アメリカではオオカミが移入され、生態系のバランスを回復する事業が始まっているが、子どもが襲われるとか、家畜が食べられてしまうなどといった報道がされているようだ。これに対して、サイトではオオカミに関して過去人が襲われたと言う記録は存在せず、過去の記録によると多くの家畜は野犬や飼い犬に襲われていると反論している。
ともかく、大変な情報量なので簡単には紹介できない。アメリカ環境問題を勉強したい方一度のぞいてみてはいかがだろうか。
31号(6月号・2000年5月25日発行)
「 Roger Beer's ENVIRONMENTAL
LITIGATION PAGE 」 森 弘典(名古屋弁護士会)
(URL紹介はありません)
今回は、ロジャー・ビアーズの環境訴訟のページにご案内します。
このページは訴訟や訴訟手続き(法廷および行政手続き)に関する環境問題専門のページです。「環境問題専門」と言うだけあって、このページにはアメリカの環境問題に取り組む方にとっていろいろ有益な情報が載っています。
試しに環境訴訟ファイルというところをクリックしてみました。ここでは、原告適格、成熟性の問題、行政事件記録、市民訴訟条項、市民賠償条項、弁護士費用、環境影響評価などをカバーしているようですが、そのうち私が一番興味がある市民訴訟条項のところをさらにクリックしてみました。
すると、環境訴訟における原告適格についての説明文が登場しました。これによれば、以下の説明は原告適格の典型的な問題に関する入門書であるとのことです。確かにそのとおりで、まず「原告適格とは何か(What
is Standing?)」ということから説明されています。曰く、「アメリカの法学においては、原告適格の概念は、州の司法権に関する訴訟上の限界の一側面
であり、このことは憲法第3条に規定されているのです。したがって、原告適格の問題はすべての訴訟事件で問題となりますが、環境の分野ほど決定的な役割を果
たすことは、他の分野ではめったにない。」とのことです。
そして、「今日でも環境事件では原告適格がないことを理由に門前払いとなることがあるのです。この問題は訴訟の入口の問題としてずっと論じられてきた問題であり、いくつかの場面
で論じられる問題でもあります。」として、そのいくつかの場面の1つとして、市民訴訟条項の説明がされています。「多くの環境法は、すべての人やすべての市民(”any
person ”or ”citizen”)に対して、原告適格を授けています。事実、1970年の大気清浄法(Clean
Air Act)の後に制定されたほとんどの環境法、修正法には市民訴訟条項が含まれています。」とのことです。
このページには他にも絶滅の危機に瀕した種、廃棄物などに関するトピックもあるようなので、アメリカの環境法を研究したいという方にとってはまさに「もってこい」のウエッブサイトでしょう。
32号(7月号・2000年6月25日発行)
「CENTER FOR HEALTH,ENVIRONMENT
AND JUSTICE」 籠橋隆明(名古屋弁護士会)
http://www.chej.org/
アメリカには巨大環境NGOが多数あるが、それだけではない。日本と同じように草の根の運動も粘り強く戦われている。Center for Helth,Environment
and Justice(CHEJ)も草の根のための組織の一つである。
ラブ・キャナルは廃棄物処理場の上に開発された住宅地域であるが、化学物質の汚染によって健康被害がもたらされた。移住が勧告され、小学校は閉鎖された。有名なスーパーファンド法もこの事件がきっかけにできあがった。このコーナーで今回紹介するCHEJはラブ・キャナル事件をきっかけに作りあげられたクリアリングハウスが発展したものである。
クリアリングハウスはさらに発展して今回紹介のNGOとなったのである。
この団体は全米に発生している廃棄物処理場などに反対するコミュニティを援助する。運動の作り方や、運動相互の連絡、科学的専門知識の提供など草の根運動を徹底的に応援する。廃棄物処理場事件に関する草の根のネットワークは日本にもあるが、活動のスタイルは良く似ているものの、組織性はやはりCHEJが進んでいるように見受けられる。
団体名にもあるように、CHEJは environment justiceを信条にかかげる。ラブ・キャナル事件はブルーカラーの多い地域に発生した。廃棄物問題は社会的弱者に集中する傾向にある。ここにおいて環境問題は社会的平等の問題として立ち現れてくる。その解決の指針は「正義」なのだ。また、CHEJの政策は
not in anyone's back yard(だれの近所でも困る)という考えで貫かれている。当初は not in my back yard(自分の近所は困る)という運動はこうして公共的運動に転化していくのであろう。この点でも彼らの考えはアメリカ環境保護思想の重要な系譜を作っていると思われる。(籠橋)
33号(8,9月合併号・2000年7月25日発行)
「NATURAL RESOUCES DEFENCE COUNCIL」
http://www.nrdc.org/
「The Environmental Law Institute」
http://www.eli.org/
「The Center for International Environment Law」
http://www.ciel.org/
森弘典(名古屋弁護士会)
今回は、NRDC、ELI、CIELのホームページにご案内します。
1 NRDCは、今回本編でも紹介していますが、NGO紹介のページ(About Us)(http://www.nrdc.org/)を見ると、「NRDCは法律、科学、40万人以上のメンバーの援助を用いて、この地球上の野生生物、野生の場などを保護し、すべての生物のために安全で健康的な環境を保障しています。NRDCの目的は地球を保護することです。」と書かれています。
NRDCの大きな特徴は、他の団体に比べて訴訟活動を多く行っていることですので、興味深い環境立法(Environmental Legislation)のページに入り込んでみました。ここには、「1970年代に国会はいくつかの注目すべき新しい法律を制定しました。この中には、大気清浄法、水質清浄法、絶滅の危機にある種の保護法などが含まれており、これにより規制をかけた安全対策を確立させ、環境活動家が法廷(訴訟)、交渉のテーブルや環境に優しい安全な市場を活用できるようになりました。NRDCの立法チームはこのような環境法の枠組みを築き上げ保護するのに専念しています。」と説明されています。
2 続いて、ELIですが、これも既に本編でご紹介した環境NGOです(http://www.eli.org/)。
紹介のページには、「およそ30年に渡って、ELIは国内外の環境法、環境政策、環境管理の分野を形作る分野に重要な役割を果 たしてきました。ELIは独立した研究・教育センターとして国際的にも認知されています。」と説明されています。
ELIは前にも申し上げたとおり、研究活動に力を入れているNGOですから、ホームページ上では様々な研究レポートを見ることができます。またセミナー、スタディー・ツアーの案内も興味深いものです。
3 また、CIEL(http://www.ciel.org/)については、以前このコーナーでも紹介されていますが、ホームページを見ていたらインターン・エクスターン制度について説明されているページがありましたので、改めてご紹介しようと思いました。エクスターンというのは就学中フルタイムまたはパートタイムで働きながら環境法の分野の経験を習得するもので、サマー・インターンというのは夏の期間中にフルタイムで働きながら同様に環境法の知識を習得するという制度のようです。どなたか試しにご利用されてはいかがですか。
66号(12月号・2003年11月25日発行)
「United Nations Postal Administration」
http://www.un.org/Depts/UNPA/additional/indart/index2.html
http://www.un.org/Depts/UNPA/index.html(メインホームページ)
田宮代子(JELF事務局)
the United Nations Postal Administration (UNPA)は、国連郵政機構とでも訳せばよいのだろうか。切手発行を通じて人権、環境、絶滅危惧種の保護、そして平和の促進という国際連合の理念を実現することを目的とする。国あるいは特別政治区以外で唯一切手発行を許されている機関であり、発行通貨は米国ドル、スイスフラン、そしてオーストリアシリングの3つとなっている(国連本部がある3カ国の通貨)。
上記URLでは"Indigenous Art"をテーマとして今年1月に発表された新しい切手シリーズが紹介されており、世界の様々な先住民族による作品(織物、鋳物、アクセサリー等)の切手を見ることができる。今回は、ペルー、コロンビア、メキシコ、ブラジル、ボリビア、エクアドル、ベリーズ、グアテマラ、キューバと言ったラテンアメリカとカリブ海地域が中心となっている。
上記のURLを開いていただくと、電子画像のため少々色あせて見えるものの、それでもなお作品の色彩の豊かさに圧倒される。織物などの写真集は何冊も出ているので、興味のある方は是非一度書店で探してみて欲しい。彼らの作品の多くは自然から霊感を受けているといわれるが、その大胆な線と構成から自然界のエネルギーがあふれてくるようだ。
現在の多くの国境は先住民族の部族の違いを考慮せずに引かれ、結果先住民族を衰退に追いやっているといわれる。その国境で区別される「国」が構成する国連から、こうして先住民族文化のすばらしさをアピールするための切手が発行されているのもなんとなく皮肉な話である。
67号(1,2月合併号・2003年12月25日発行)
「World Social Forum」
稲垣仁史 (名古屋弁護士会)
今回紹介するのは、世界社会フォーラム(World Social Forum)のサイトである。
世界社会フォーラム(WSF)というのは、特定の組織や団体ではなく、新自由主義による市場経済のグローバリゼーション等に反対する世界各地の市民運動団体が集結して行う交流集会や討論の場である。このWSFは、市場経済グローバリゼーションによらない、あるべき「もう一つの世界」の提言も行っており、近年、このWSFが社会変革のための極めて有効かつ大きな力になりつつある。
このWSFが開催されるようになったのは2001年からであるが、その胎動は20世紀の終盤から起こっていた。先進諸国が、WTOやMAI(多国間投資協定)等の構想によって、投資や貿易の自由化を開発途上国へも強制するシステムづくりを進めようとしたことに対し、これら自由貿易等がひきおこす様々な弊害、すなわち貧富の固定化や格差の拡大、農民や貧しい国の人民らの仕事や土地の収奪・破壊、環境破壊などを指摘する声が大きくなり、様々な市民運動の取組課題の根本が共通することが意識された。他方でインターネットの発達によって、世界中の市民運動団体の情報交換が密になり、世界中の農業団体、労働組合団体、環境NGO、人権団体等が、個々の垣根を超えて「反グローバリズム」で一致団結を始めた。これら反グローバリズムの市民運動の連帯の力は、1999年のシアトルにおけるWTO閣僚会議に対するデモで一気に活性化した。このような背景から、先進国閣僚による「世界経済フォーラム」に対抗する形で始められた市民運動側の討論集会がWSFである。WSFは2001年に第1回会議がブラジルのポルトアレグレで開催されてから毎年同地で開催されてきたが、2004年のWSFは開催地をアジアに移し、インドのムンバイで1月16日〜21日の6日間開催される。2004年のWSFについては、“WORLD
SOCIAL FORUM 2004”という専用サイトがある(www.wsfindia.org)。
全地球規模のWSFだけではなく、各地域や国ごとの社会フォーラムも頻繁に開催されている。これらの市民運動団体の結集が、2002年〜03年にかけての全世界での反戦運動の原動力にもなっている。社会変革のための現実的な力として、大いに注目したい。
なお、WSFについて日本語で解説するサイトもいくつかあるが、ATTAC Japan(http://www.jca.apc.org/attac-jp/japanese/index.html)や「ヤパーナ社会フォーラム」(http://www.kcn.ne.jp/~gauss/jsf/)などが詳しい。また日本平和学会の現会長でもある北沢洋子さんのHP「北沢洋子の国際情勢、世界の底流」(http://www.jca.apc.org/~kitazawa/)は、反グローバリズム運動の背景や情勢が大変詳しく説明されており、とても参考になる。是非参照されたい。
68号(3月号.2004年2月25日発行)
「GREEN ACTION」
http://www.greenaction.org
(三石 朱美 JELF事務局)
汚染された空気や水が、私たちにどのような影響をもたらすのかを知っている人で産業廃棄物や有害汚染物質が自分の近くにあってもいいと思う人は、おそらくいない。これは、世界中の人が共有するまぎれもない感情だ。
そこで本稿では、カリフォルニア、アリゾナ、ユタなど、アメリカの西部地域を中心に、化学工場や廃棄物焼却場建設の反対運動を支援する団体GreenActionを紹介したい。
ページを開いて、まず目に飛び込むのが活動中の写真だ。GreenActionの基本的な姿勢は、直接行動。従って、活動写真も地域住民がプラカードを掲げてデモを行う姿が中心になる。だが、この写真だけを見て、アメリカには直接行動を行う住民が沢山いるのだと結論づけるのは早急だ。人々が休日を返上してまでデモなどのイベントに参加し、直接行動に踏み出せる様に、GreenActionは、様々な機会を通じて多くの情報を提供しているのだ。
日常的には、ボランティアが、Canvassingと呼ばれる戸別訪問や路上アンケートを行い、地域住民に問題を提起し、ホームページでは、現時点で取り組んでいる課題、勝利の歴史、そしてGreenEnergyの紹介などなど、多岐にわたる情報を発信する。なんと、彼らが活動の中心理念とする「直接行動」を4コマ漫画でわかりやすく伝えるコーナーまであるのだ(URL上記参照)。
ある漫画は、まず政府の代表がやってきて「政府は核廃棄物の処理場をこの地域に建設することを認めた」と宣言する。続く2コマ目、3コマ目。無言の地域住民が徐々に彼を取り囲んでいく。そして最後に「けれど我々は建設させないって決めているんだ!」と反対する声があがり、政府の代表者はとまどいを見せる。漫画の下には、政府には廃棄物処理場の建設をやめることはできないから、人々が学び、まとまらなくてはならないというメッセージがある。「我々には止めることもできるのだ!」と。
そして、もう一つ。GreenActionはBush/CheneyWatchというページでブッシュ政権が行う地球環境とすべての人類にとって深刻な影響をもたらすだろう政策を監視している(URL上記参照)。人々はここから、ホワイトハウスの大統領にメールを送ることもできる。
69号(4月号.2004年3月25日発行)
「Bush Greenwatch」
http://www.bushgreenwatch.org/
稲垣仁史(名古屋弁護士会)
超大国としての圧倒的な軍事力・経済力を背景とした米国ブッシュ政権の独善的な諸施策が地球上の様々な地域に弊害をもたらしている。今回紹介する“BushGreenwatch”は,ブッシュ政権の施策がいかに地球環境に悪影響をもたらしているか,についての情報を広く一般に提供するサイトである。サイトの自己紹介欄(about
us)には「BushGreenwatchは,私たちの環境や公衆衛生に対するブッシュ政権の攻撃に関する,正確で時機を得た情報を提供します。」「私たちは,この政権の政策(一貫して献金企業の利益を公益の上に置いている)によって影響を受ける,極めて重要な環境上・公衆衛生上の問題に関する,メディアの報道や公衆の認識を拡げることに奉仕します」と,このサイトの目的が記されている。
主なメニューとしては,月曜日から金曜日まで毎日1本ずつ配信される“Today's Issue”という論説のコーナー,「注目すべき発言集」「過去の論説集」「プロのジャーナリスト専用の配信コーナー」「情報提供の受付(書込)コーナー」「関連リンク集」などで構成されている。特に,日々の論説の蓄積である「過去の論説」は,カテゴリーによって分類できたり,任意語で検索できるようになっており,データベースとして活用できて便利である。ちなみに,この紹介文を書いている3月10日付けの論説は「米国EPA(環境保護機関)による報告書は,環境的正義(Enviromental
Justice)とは逆のものになっている」というようなレポートであった。JELFのテーマでもある“Environmental Justice”という概念がごく普通に使われていることにも注目したい。
良きにつけ悪しきにつけ今日の世界で無視しては過ごせない米国ブッシュ政権の振る舞いを,「環境」という視点から監視する上で,とても参考になる良サイトだと思う。
70号(5月号 2004年4月25日発行)
http://onjun.fc2web.com/bug-photo.html
金岡繁裕(名古屋弁護士会)
1. このところ、社会派のHPの紹介が続いていましたが、今回ご紹介するのは単なる趣味的なHPです。
知人に昆虫生態学の研究者がおり、それもカメムシの専攻と言うことで、原稿を依頼した経緯があり(これは次号以下で掲載予定です。)、少しインターネットでカメムシについて調べてみました。
例えばカメムシの生態など、普通の人は先ず知らないでしょうし、おそらく、絶滅危惧種のタガメがカメムシ目に属することも知られていない(言われてみるとよく似ていると思いはするのですが。因みに、アメンボの類もカメムシ目に属するらしく、詳細はhttp://www.museum.kyushu-u.ac.jp/SPECIMEN/s_insects1/kamemusi-0.htmlを参照して下さい。)。それというのも、カメムシというと悪臭を放つだけで見た目も麗しくないという印象しかなく、そもそも誰も気にかけないからではないかと思います。
2. しかし、少なくとも後者の点は誤解だと分かりました。
コガネムシと見まがう光沢を持っているものから、テントウムシそっくりな模様のものまで、カメムシはとても多様で綺麗です。是非ご紹介したHPにアクセスして、これを知って頂きたいものです。さして時間がかかるわけでもなく、雑学程度で愉しんで頂けたらと思います。
3. カメムシは約850種もいると言われています。
一般には害虫と認識されているようですが、それは誤りで、益虫と分類されているものもいます。
人に役立つかどうかでの分類には感心しませんが、農水省の研究で「生物農薬」として特許登録がされたカメムシもいるなど、一部では注目されているようです。
カメムシの中には既に絶滅が危惧されているものもおり、たまにはこういった一般的ではない分野にも目を向けると、自然保護の原点に立ち返れるかと、今回少し調べてみて感じました。
71号(6月号 2004年5月25日発行)
http://www.iraq-c.gr.jp/
「アッバース&ドクターズ・プロジェクト」
http://www.iraq-c.gr.jp/al-alip/index.htm
田巻紘子(名古屋弁護士会)
今,イラクから5歳の白血病の男の子(アッバース=アリ君)とそのお母さん(アヌワルさん)が名古屋に来ていることをご存じだろうか。
これは,セイブ・イラクチルドレン・名古屋という小さなNGOが,「劣化ウラン被害に苦しむ子どもを一人でも助けたい」「ヒロシマの国から白血病は治る病気だというメッセージをイラクへ伝えたい」
という思いから,2004年から取り組んでいるプロジェクトである。アッバース君の受け入れにあたっては,名古屋大学病院と同病院医師に多大なご協力をいただいている。同時に,イラクのバグダッドとバスラの若い医師2名も名古屋へ招き,同じく名古屋大学病院に受け入れて頂き,半年間の研修をしている。
セイブ・イラクチルドレン・名古屋は,代表の小野万里子弁護士が2003年2月にイラクへ行き,劣化ウラン被害と経済制裁のために子どもたちが次々となくなっていく状況に「一人の子どもでもこれ以上死なせたくない,助けたい」と立ち上げたNGOである。これまで,3回にわたりイラクへ抗ガン剤等の医療支援を行ってきた。また,2003年夏には東京・広島のNGOと協力してイラクから劣化ウラン被害に取り組む2人の医師(ジャワード=アル=アリ医師,ジャナン=ハッサン医師)を,2004年2月には再びジャワード=アル=アリ医師をそれぞれ招き,イラクでの劣化ウラン被害の実態について話をして頂いた。この講演の様子(2003年夏については一部)はホームページにアップされている。湾岸戦争から数年たって白血病・悪性腫瘍等の発症が増えているが,医薬品不足等のために治療が十分にできない状態であること,症例の調査も十分にできない状態であること等,医師としての切実な訴えに胸が痛くなる思いがする。
さらに,2004年1月にアッバース君と2人の研修医が名古屋に来てからの日々の様子(アッバース&ドクターズTopics),アヌワルさんや2人の研修医から日本の私たちへ向けてのメッセージなどは,「アッバース&ドクターズ計画」のホームページで見て頂くことができる。アヌワルさんからの「もうこれ以上,戦うための道具はいらない,医者と薬を送ってください」というメッセージは今,日本政府が行っている「人道復興支援」がいかに見せかけだけの,まやかしのものであるかということを鋭く問いかける。一方でアッバース君が少しずつ順調に回復に向かっていることは私たちの希望である。一度是非ホームページをご覧頂きたい。彼の目の何と大きくて澄んでいること。こんな彼を白血病で苦しめるようになった責任は誰にあるのだろうか。
この小さなNGOに関わる市民は,日本政府が湾岸戦争・2003年からのイラク攻撃で間接的にあるいは直接的に加害者となってイラクの人たちを苦しめたことに対する償いの気持ちを持ちつつ,同時に自分たちの活動がイラクの人たちから本当に求められている活動だ,ということに確信を持ちつつ,活動をすすめている。イラクの人たちの声に真摯に耳を傾けた,こういう支援こそが今,一番日本に求められていることではないだろうか。
名古屋の活動に引き続き,セイブ・ザ・イラクチルドレン・広島でもイラクの若い医師を招き研修の受け入れが始まった。今後ともこれらのNGOの活動に是非注目し,お力を貸して頂きたい。
72号(7月号 2004年6月25日発行)
「Gesell Research
Society Japan (ゲゼル研究会)」
http://www.grsj.org/
稲垣仁史(名古屋弁護士会)
ここ数年来「地域通貨」が静かなブームとなってきているようである。地域通貨とは、特定の地域や特定の団体構成員間でのみ流通する自主発行通貨である。地域通貨の発行には地域経済の活性化や構成員間の信頼関係の醸成・向上、構成員各自の自己実現などが期待されており、実際に日本各地(世界各地)で様々な地域通貨が発行され、成果を上げつつあるという。
このような地域通貨には、現行の通常貨幣による金融システムに対するアンチテーゼだとか「マネーの暴力」からの防衛装置としての意味合いがあるらしい。すなわち、現行の通常貨幣による金融システムにおいては、もともと労働や物的価値の交換の手段であった「お金」が、「腐らない(減価しない)」「利子を生む」という性質のゆえに、貯め込まれたり、それ自体が商品となって投機の対象とされたりするようになっている。価値交換のための道具であるはずのお金が、少数者のところに偏在して却って本来の価値の流通を滞らせたり、交換されるべき実体的価値から離れて利(お金自身)が利を生むことにより、数字上のお金の価値と実体の価値との間に大きなギャップが生じ、実体に見合わず肥大化した「マネー」が過大なエネルギー消費を強いることになって実体としての地球環境が疲弊していく…などの弊害が生じている。「地域でのみ流通するお金」「利子を生まず、使わないと却って減価するお金」は、そのような弊害をカバーし、地域内での通貨流通を促進するとともに実体に見合った価値の交換を可能にするらしい。
日本では1999年にNHK−BSで放映された「エンデの遺言」という番組が、貨幣の問題や地域通貨に大きく光を当て、ブームの火付け役となった。その番組の中でも紹介されていたが、時間とともに減価する貨幣システムを提唱したのが、20世紀初頭のドイツの経済学者シルビオ・ゲゼルだとのことである。ゲゼルという名は一般には馴染みが薄いが、かのケインズも「将来の人々はマルクスの精神よりもゲゼルの精神からより多くのものを学ぶであろう」と書いているそうである。このような興味あるゲゼルの理論を軸に、地域通貨等について、非常に深く掘り下げた充実した情報が提供されているのが冒頭のサイトである。これからの社会のあり方を考える上でとても大切な考え方が示されているサイトではないかと思う。 弁護士 稲垣仁史 (名古屋弁護士会)
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