第1 環境問題をめぐる情勢
1 安倍自公政権の下での政治状況
2013年度の総会では、安倍内閣が発足し、国土強靱化の名の下で大型公共事業の推進、原発再稼働・新設への転換、辺野古基地建設の強行、TPPへの参加、地球温暖化対策の無策など「環境政策の分野でも以前の自民党政権下の政策に完全に復帰するという事態が生まれている」と分析した。また、安倍首相が憲法改正を目指していることについても、環境保護団体として改憲の動向に対決していくことを確認した。
その後自公政権は、2013年7月の参議院選挙でも勝利し、衆参両院での多数を握った。そして、安倍内閣は、衆参両院での多数を背景に、反動的な政策を強行している。
環境政策の分野でも、「アベノミクス」の一環として大型公共事業を進めようとしている。エネルギー・環境政策2012年夏の国民的議論で「原発ゼロ」を求める国民の声が圧倒的多数を占め、民主党政権も不十分ながらも「2030年代の原発ゼロ」という脱原発方針を掲げていたが、安倍内閣の下では、「エネルギー基本計画」原発を「重要なベース電源として引き続き活用していく」とし、「必要とされる規模を十分に見極めて、その規模を確保する」とすることが議論されており、原発の再稼働、原発の増設・新設を含めた推進政策が打ち出されようとしている。普天間代替施設である辺野古基地建設についても、安倍政権は積極的に推し進める姿勢を示し、沖縄県知事に辺野古受け入れを強要させ、名護市長選挙で示された名護市民の移設反対の意思にもかかわらず、埋め立てを強行しようとしている。また、安倍政権が参加を表明したTPP(環太平洋経済協力協定)は関税の全廃と非関税障壁の撤廃を目指すTPPに参加することで農業への打撃、ISD条項(投資家対国家条項)などを利用した環境規制への攻撃などによって環境問題の後退が懸念される。地球温暖化対策についても後退した姿勢を示している。
JELFは、自民党政権下で、環境保護に対立する政策が全面的に展開される中で、改めて、無駄な公共工事が自然生態系や地域のコミュニティーを破壊するものであること、電力会社などエネルギー部門に排出者としての責任があること、気候変動問題は国際的な不公正の問題でもあること、基地問題は騒音、水質汚染、自然破壊、地域文化の破壊など基地に伴う深刻な人権問題であり、環境問題であること、原子力に依存しないもう一つの社会をつくることが焦眉の課題であること、そして人々の権利と憲法を擁護することを原点として、環境問題に取り組むことを決意する。
JELFは、権利、公正といった憲法上の原則を提示して環境問題の取り組むべき指針を提示していく。
2 東日本大震災
1) 2011年3月11日に日本の太平洋三陸沖を震源として東日本大震災が発生した。マグニチュード9.0の震度及び地震後の巨大津波が東北地方太平洋岸を中心に未曾有の被害を生んだ。発生から2年以上が経過しているものの、被災地での復旧・復興は遅れている。そればかりか、人と海との関係性を分断し、地域社会としての持続性を破壊する大規模防潮堤の建設が計画されるなど東日本大震災の教訓を踏まえない公共事業が展開されようとしている。私たちは再度日本の社会のあり方を見直し、あらたな地域づくり、まちづくりのあり方について提起していかなければならない。
2) JELFはこれまで、「持続性」の考えを重視して活動を展開してきた。
生物の多様性にあっても、コミュニティーの持続性を実現することが生物の多様性を維持することにつながるとの考えのもとで運動を展開してきた。廃棄物処理についても、循環社会の実現のためにはコミュティーそのものが廃棄物を抑制するとともにコミュニティーそのものが循環社会を実現することが必要であることを提起してきた。都市にあっては、コンパクトシティの考え方から歩いて住める都市を検討した。
その他、JELFの政策は常にコミュティーの持続的な発展の考えを中核にしたものであった。
3) JELFは、東日本大震災からの復旧・復興に関しても環境問題の視点から意見を持ち、行動することが求められる。
第2 各分野のとりくみについて
1 原子力問題
1)はじめに
3年前の3月11日、東日本大震災、そして福島第一原子力発電所で原発事故が発生し、大規模な放射性物質の放出により、何十万という人が住み慣れた故郷を追われた。
JELFでは、この福島原発事故を教訓とし、同事故被害者の被害回復に取り組むと共に、二度と同じ過ちを繰り返さないため、全ての原発の即時廃止を求め、原発の新規建設を許さないための運動を支援・展開していくという方針を定め、活動してきた。
しかし、昨年2013年度以降、第二次安倍政権は経済最優先の政策を打ち出し、原発再稼働に向けた動きが加速化している。これは、福島原発事故の反省という姿勢とは逆行するものである。また、核の軍事利用の危険も無視できない。JELFでは、引き続き、このような政治の状況に危機感を抱き、これに抵抗し、様々な活動を行っていくことが大きな課題となる。
福島原発事故の被害回復を求める訴訟・運動については、事故から3年が経ったことで、各地で完全賠償を求める訴訟が提起され、全国的なネットワークが構築されており、成果が見られる。このような完全賠償を求める訴訟団と、脱原発を目指す世論・運動とが連携していくことが今後の課題である。
また、脱原発の問題は、エネルギー問題そのものであるから、自然エネルギー・再生可能エネルギーについての知見を深めていく必要がある。特に、JELFとしては、自然エネルギー・再生可能エネルギーを通しての地域の主体性の復活、生物多様性といった視点から、地域経済に密着した形での自然エネルギーについての政策形成に寄与し、そういった地域の支援を進めていく。
2)被害賠償への取り組み
福島原発事故の被害回復を求める訴訟・運動については、福島、千葉、首都圏を初めとして、被災地から全国に避難した避難者等を原告として、各地で被害の完全賠償を求める訴訟が提起されている。各地の訴訟については、全国的なネットワークが構築され、損害論や責任論についての議論が交わされており、成果が見られる。JELFとしては、会員が全国の被害賠償弁護団に所属し、活動することで、原発事故被災者の被害賠償への取り組みに協力していく。
しかし、被害賠償を求める弁護団の全国的連携はあるものの、原発事故被災者と脱原発を目指す世論・運動との連携はそれほど意識されていないとの見方もあるところである。脱原発実現のためには被災者の被害賠償の動きとの連携が不可欠であり、そのような視点から、本年度JELFとしては、日弁連、自由法曹団、青法協その他脱原発を目指す法律家の諸団体と協力しつつ、原発事故の被害者と脱原発の運動を結びつけるようなシンポジウムの開催等の取り組みを検討していきたい。
3) 原発の再稼働について
原子力規制委員会は、2013年に新規制基準を施行した。新規制基準の施行後、全国各地の16基の原発について新規制基準への適合性の申請がされ、原発の本格的稼働が現実的なものとなっている。しかし、福島第一原発事故の原因も解明されておらず、事故の教訓が生かされているとは到底いえない新規制基準を前提とする原発の再稼働は問題である。新規制基準は、事故原因の解明が不十分なままでシビアアクシデント対策も不十分であるという問題がある。
JELFは、新規制基準に強く反対し、政府および各電力会社に対して、原発を再稼働しないよう強く求める。
4) 持続可能性社会について
2013年の原発を巡る状況は、福島第一原発事故の現場が未だ混迷を深め、汚染水はコントロール不可能で放射能の恐怖は消えない状況であり事故の影響が深刻であること、使用済み核燃料等の高レベル放射性廃棄物の最終処分場の建設については全くめどが立っていない状態で処分のあてのない放射性廃棄物を増やしてきたこと等、原発に依存するエネルギー政策の破綻が明らかになっている。このような状況は、持続可能性社会と相容れないものである。
JELFは、持続可能社会の実現に向けて、原発に依存した社会から脱却し、持続可能な社会の実現を目指し、原発依存社会から脱却を目指す活動を支援していく。また、原発依存社会からの脱却には、地域住民たちが主導で枯渇しない自然由来のエネルギーを自給的に利用することが重要であり、これらを実現する活動も支援していく。
2 気候変動
1)情勢
2013年9月5日に発表されたIPCC第5次報告書は、温暖化は95%以上の確率で人為起源だといえ「疑う余地がない」、1880年から2012年の間に世界の平均地上気温は0.85度上昇した、海水の温度が上昇しており、酸性化も見え始めている。陸氷は減少傾向にあり、北極海の氷は激減、海面は1901年から2010年の20年間で19センチ上昇した等の結論を述べている。
このように気候変動を巡る情勢は厳しさを増しているが、これに対応する目立った成果はない。
2013年11月、ワルシャワでCOP19が開かれたが、かろうじて次のステップを決めるに留まり、具体的な成果は乏しい。また、日本は、COP19開催中に京都議定書の基準年よりもCO2の増加となる「削減」目標を発表し、各国からの批判を浴びた。
2)シロクマ裁判の状況
10電力会社及び電源開発を相手方としてCO2排出削減を求めた公害調停の申立ては2011年の第1陣、2012年の第2陣ともに却下されたことから、同年5月11日、却下処分取消訴訟を提起した。
原告は、シロクマ、JELF、ツバルオーバービュー、ツバル人18名を含む48名(シロクマは分離の上、却下)。
最大の争点は、気候変動が環境基本法における「公害」に該当するか、及び調停による解決可能性があるかである。
現在、立証準備に入っており、名古屋大学大学院環境学研究科高村ゆかり教授、NPOツバルオーバービュー代表理事遠藤秀一氏、ツバル人原告タレシ・シンキャン氏、JELF理事長籠橋隆明の陳述書を提出した。
3)今後の展開
現在、脱原発を口実に、CO2を大量に排出する石炭火力が推進されかねない危険な状況にある。持続可能な発展のためには、「原発ゼロ」を前提とし、さらに化石燃料への依存からも脱却し、CO2の大幅削減を早期に実現しなければならない。
JELFとしては、シロクマ裁判に全力を尽くすとともに、NGO等との連携をさらに強化し、運動を活発化させ、気候変動対策の緊急性を地道に訴えていく必要がある。
3 公共事業
1) 2013年は、東日本大震災の復興事業に加え、安倍政権が「アベノミクス」三本の矢の一つとして公共事業による財政出動を景気対策と位置づけたこともあり、公共事業費が増大した1年であった。12月には、ほぼすべての野党が反対する中、国土強靭化基本法が成立し、「国土強靱化」と称して、高速道路や巨大港湾など新規の大型開発事業に多額の予算が投入されている。2020年の東京五輪開催もその追い風となっており、2008年に中止された関門海峡道路などの「6海峡プロジェクト」も調査開始・協議会立ち上げなどの動きがあるなど、大規模開発も予定されている。現在の人口減少、財政状況の厳しさ、既設施設の老朽化と施設の更新費用の増大、緑地の継続的な減少といった問題がある中で、公共事業を推進していこうとする動きには環境、及び国民経済に与える影響を無視している点で大いに問題がある。
2) 以上のような公共事業の過剰な推進を規制し、あるいは問題点をチェックするための法的な仕組みは、現状では極めて不十分である。
まず、行政自身による規制の仕組みとして、政策評価法による事業再評価、審議会などへの諮問の手続きがあるが、現在のところ機能はほとんどしていない。審議会の会議の公開、委員の利益相反禁止などを規律する法律も未だに存在しない。
次に、国会や自治体における予算審議でのチェックが考えられるが、予算審議は一括審議が多く、個別事業への予算配分(箇所付け)が明らかにされないため、特定の事業に対するチェックが十分行われていない。
国民自身の手によるチェックの方法としては、まず情報公開手続きが考えられるが、温暖化防止情報公開訴訟の事例のように、非開示情報に該当すると判断されて必要な情報公開が阻まれることも多い。また、環境アセスメント手続きで意見を述べる方法が考えられるが、法律によるアセスの手続きは公聴会の制度がなく、条例でもその点の制度整備が不十分な事例が多いなど、実効性あるチェックを行えるだけの仕組みが整っていない。辺野古埋め立て事業のように環境NGOの重要な意見を無視して不適切な方法で進められた環境アセスメントについて、環境NGOが訴訟を提起するような仕組みがないと、住民参加は形骸化するばかりである。
一方、各種の行政訴訟・住民訴訟等による問題ある公共事業の差止めを求める動きは続けられており、泡瀬訴訟、鞆の浦景観訴訟、よみがえれ有明訴訟など事業の推進を食い止める画期的な判決を得られる事例も見られるようになっている。しかしながら、原告適格や行政裁量論の壁の厚さから、成果が得られる事案は依然として少なくとどまっているし、泡瀬の事案では事業の計画内容の変更がされたうえで再度工事が始まってしまうなど、一度勝訴しても完全に公共事業を食い止めるまでにはなお至らない事案も生じている。
3) 以上のような現状を踏まえ、必要性がない公共事業を実効的に規制するためには、事業内容のチェックのための仕組みを抜本的に改正することが必要である。そこで、日弁連は、2012年6月、「公共事業改革基本法(試案)」を公表した。このような抜本的な改革を求める法改正を求めつつ、個別の現実に生じている問題への対処として、裁判等の法的手続きに積極的に取り組み、原告適格や行政裁量論の壁に立ち向かい、また仮の義務付け・差止の訴え及び執行停止等の手続きを活用するなどして、事業を早期に停止させるための試みを続けていくこともまた、引き続き必要である。
4 生物多様性に関する問題
1) 2014年度の活動方針
2013年度の方針を踏襲し、以下の取り組みを推進する。
@ 開発行為に対する「回避→低減→代償措置」の提唱
我が国の生物の多様性減少の大きな要因として、開発行為による自然破壊があげられる。開発行為による生物多様性の破壊、減少については、まず、影響の回避、低減が図られなければならない。しかしながら日本では、本来、回避、低減の検討の後に検討されるべき「代償措置」について、本来的意味合いから離れ、代償段階のみがミティゲーションであるかのように宣伝されている。
JELFでは、引き続き、日弁連とともに、ミティゲーションについて、どうあるべきかについて議論を深め、発信していく。
A 無駄な開発行為からの生物多様性の影響の回避、低減
JELFでは、ダム、原発など大規模かつ無駄な公共工事(開発行為)に対しては、裁判等を通して、開発行為の差し止め(回避)ないし計画変更(低減)を迫っていく。この場面では、とりわけ、行政訴訟における原告適格・処分性の拡大、裁量統制に関する判例の前進を勝ち取ることが重要な課題である。
B 開発行政に対する住民参加の推進
泡瀬干潟訴訟、よみがえれ有明訴訟などによって、公共工事の民主的統制が、生物多様性保全に不可欠な関係にあることが明らかにされてきた。JELFでは、生物多様性保護政策に対する市民参加のシステムの実現をめざして政策提起を行っていく。
C 生物多様性国家同戦略を担保する法的統制、環境アセスの実効性の確保をめざして政策提起を行う。また、近時頻発している、開発推進側によるいやがらせ訴訟に対する、対抗運動を展開する。
D その他
生物多様性条約第12回締約国会議(10月6-17@韓国)への参加
2)2013年度の成果
@ 開発行為に対する「回避→低減→代償措置」の提唱
2013年11月8日、委員の多くがJELF会員である日弁連公害環境委員会(自然保護部会)主催で、シンポジウム「生物多様性オフセットの意義と問題点」を開催した。同シンポジウムでは、田中章氏(東京都市大学環境学部環境創生学科教授)より記念講演「生物多様性オフセットとは何か その実現に向けての課題」をいただき、国内外の視察調査報告などを行った。100名ほどの弁護士、市民、行政担当者(環境省、愛知県)が参加した。
オフセットに対しては、それが開発の免罪符になるという否定的な見方もあるが、開発によって失われる、あるいは、オフセットによって回復される生態系の生産活動の質的量的評価の手法についての具体的な論議と実践の契機となるという意味で、肯定的に検討すべきであろうとの到達を得た。
A 無駄な開発行為からの生物多様性の影響の回避、低減
ア 滋賀・丹生ダムの建設中止
2014年1月16日、日経新聞が、滋賀・丹生ダムの建設中止を報じた。同ダムは1968年に建設省(現国土交通省)が予備調査を始め、96年までに住民の移住が完了した。だが淀川下流の水需要が減って利水の目的が変わり、09年に計画が凍結されていた。国が事業の必要性を検証していたダムは全国に83カ所あり、20カ所が中止を決定しているが、本ダムのように建設予定地の住民が移転を終えたダムで中止の方針を決めた例は少ない。今後、国土交通省が住民の意見聴取などを経て方針を正式に決めるという。このような動きは、歓迎される。
イ JELF会員が原告等代理人として、大型公共事業に反対する裁判等が進行した。
設楽ダム訴訟(住民訴訟・上告中)、八ッ場ダム訴訟(住民訴訟・東京高裁)、成Pダム訴訟(住民訴訟・秋田地裁)、天草・路木ダム訴訟(住民訴訟・熊本地裁)、新内海ダム(事業認定取消等・高松地裁)、上関原発訴訟(埋立免許取消等・山口地裁)、白保・新石垣空港(事業認定取消訴訟・東京高裁、収用裁決取消・那覇地裁)、第二次泡瀬干潟訴訟(住民訴訟・那覇地裁)、命の森やんばる訴訟(住民訴訟・那覇地裁)、北見モモンガ訴訟(住民訴訟・札幌地裁)、馬毛島(漁業被害原因裁定・公害等調整委員会、入会権確認・鹿児島地裁) 等
ウ なお、上記のうち、2008年に、総会が行われた新内海ダム(香川・小豆島)は完成し、2013年4月25日、竣工式が執り行われた。
B 開発行政に対する住民参加の推進
ア 赤江浜海岸づくりフォーラム
2009年に宮崎県と住民の間に和解が成立した赤江浜ウミガメ裁判* は、同年5月以降、年1回、「赤江浜海岸づくりフォーラム」を開催し、宮崎県、学識経験者、地元住民、海岸利用者(主にサーファー)、関係行政機関などが参加して、海岸利用のあり方について協議し、一定の成果*2を上げている。
C その他
ア 2013年10月、生物多様性条約第12回締約国会議(COP12)の準備会合「SBSTTA17(日本名称:第17回科学技術助言補助機関会合)」と「8jWG8(第8条j項の運用に関する第8回作業部会) 伝統的知識、ABS関連」にJELF事務局が参加し、世界、ことに、アジアの環境NGOとの関係を深めた。
5 沖縄の米軍基地と環境問題
辺野古基地問題(沖縄の自然環境)
1) 情勢と課題
2012年12月に自民党が政権復帰したことにより、辺野古基地建設について情勢が大きく変わり始めた。防衛省沖縄防衛局は2013年3月22日に、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設先とする同県名護市辺野古沿岸の公有水面埋立承認申請を沖縄県に対し行った。そして、同年12月27日に沖縄県知事が同埋立を承認した。これにより、2014年3月ころには政府が辺野古基地建設工事ためのボーリング調査が開始される可能性がある。
同承認に対しては、2014年1月15日、辺野古周辺の住民ら194人が原告となって辺野古埋立承認取消訴訟が提起された。また、JELFとしては、上記工事着工を阻止するため、2014年3月ころに、アメリカの弁護士と協力し、政府が当該工事を着工するために必要な米軍の立入許可の差止め手続(以下、「インジャンクション」という。)をアメリカの裁判所において行う予定である。そのため、2013年11月9日、アメリカの弁護士サラ・バート氏を招き、沖縄においてシンポジウム「基地建設を阻止するぞ!〜米国・沖縄ジュゴン「自然の権利」訴訟〜」を開催し、同訴訟をもって辺野古基地建設を阻止する旨の決議が採択された。
辺野古沿岸部においては、新基地建設のための環境影響評価が行われたが、その内容は環境アセスの名に値しないものであり、むしろ、辺野古沿岸部での基地建設が重大な自然環境破壊をもたらしかねないことを示している。
爆音をまき散らし、周辺住民の人権侵害を今も続けている「世界一危険な基地」普天間基地は、即時に閉鎖撤去すべきである。しかし、この普天間基地の機能を辺野古地区へ移設したとしても、普天間基地の人権侵害状態を辺野古地区へ移転することになるだけであり、何らの問題解決にはつながらない。しかも、まともな環境アセスも行わずに辺野古沿岸部に新基地建設が強行されれば、ジュゴンをはじめとする貴重な自然環境も破壊されることは明白である。
普天間基地は即時閉鎖・撤去するとともに、辺野古沿岸部にも国内のどこにも「代替施設」となる新基地を建設させるべきではない。そのために、JELFは、環境面における対等な日米関係を実現することで普天間基地における人権侵害状態を解消し、辺野古沿岸部への新基地建設を阻止することを引き続き取り組んでいく。
2) 2013年度の活動
@ JELFは2013年度次のような活動方針を掲げていた。
ア 政府が辺野古基地建設工事に着工するのを阻止するため、インジャンクションをアメリカの裁判所において行う。
イ 引き続き、ワシントンポスト紙への意見広告などを行うNGOグループであるJUCON(Japan-US Citizens for Okinawa Network)と連携し、沖縄米軍基地問題についてのアメリカ国内での運動の可能性を協議する。
A 2013年度活動は次のようなものであった。
ア インジャンクションをアメリカの裁判所において行うため、2013年11月9日、アメリカの弁護士サラ・バート氏を招き、沖縄においてシンポジウム「基地建設を阻止するぞ!〜米国・沖縄ジュゴン「自然の権利」訴訟〜」を開催した。
イ JUCONと連携し、上記インジャンクションの手続を開始するにあたってJUCONからジュゴン弁護団に対して90万円を超える金額が寄附された。なお、同手続については自然の権利基金から97万円、ヘリ基地反対協議会から5万円の寄附も同弁護団に対しなされている。
3) 2014年度活動方針
@ 政府が辺野古基地建設工事に着工するのを阻止するため、アメリカの弁護士と協力し、インジャンクションをアメリカの裁判所において行う。
A 引き続き、JUCONと連携するとともに、沖縄米軍基地問題についてのアメリカ国内での運動の可能性を協議する。
第3 法曹養成問題
1 はじめに
2006年に新司法試験が始まり、その選択科目として環境法が採用されてから7年が経った。その間、環境法を専門的に学ぶ法科大学院生、さらに環境法を選択科目として選んで新司法試験に合格した弁護士が着実に増えつつある。しかし、一方で、法科大学院によっては教師や学習教材、授業数が不足し、学習支援体制が不十分である等の理由により、環境法自体には興味がありながら選択科目にはあえて選ばない学生が出てしまうケースも生じている。このような状況もあって、司法試験選択科目の中で、環境法の選択者及び合格者数は下から2、3番目の位置にあり続けており、司法試験受験者全体の割合から考えれば、環境法を学ぶ学生の数は伸び悩んでいる。このため、どの法科大学院にもいきわたる形での環境法の教育・学習支援体制の整備と充実が課題となっている。
そこで、JELFでは、環境法に興味をもつ学生が、専門的に環境法を学び、また試験に合格した後も引き続き環境法の問題に専門的に取り組めるようにするための支援を行ってきている。特に最近の取り組みとしては、2008年度より論点表作成会議を発足して、学習支援のための論点表作成の取り組み等を行ったり、2010年度からは環境法の勉強会を行ったり、日弁連主催の環境法サマースクールの際に懇親会を開催したりして、環境法に興味を持つ学生、修習生、若手弁護士の交流も図っている。
他方で、政府の法曹養成制度改革顧問会議によれば、選択科目を廃止することが検討されている。この点については、「2年以内に結論を得る」(2013年7月16日の法曹養成制度関係閣僚会議決定の「法曹養成制度改革の推進について」)こととされており、予断を許さない状況である。仮に、選択科目そのものが廃止ということになれば、環境法に興味をもつ学生が減少し、又、興味を持つ学生も環境法を本格的に学習する機会を失うことになる。従って、環境法律家の育成に与える影響は著しく大きく、これを阻止するため、JELFとしての対応が必要となる。
2 2013年度の活動総括
1) 2013年度活動目標
2013年度は、2012年度までに実施した環境法勉強会の結果を踏まえ、引き続き環境法の勉強会を実施するとともに、環境法の勉強支援のため、最近の法改正の状況も踏まえて、論点表の改訂を行うことなどを目標とした。また、若手弁護士による合宿を行うことを目標とした。
2) 2013年度活動実績
2013年3月には、東京・大阪で勉強会を開催し、東京では58名、大阪では29名の人が集まり、盛況だった。アンケートの結果も好評価であった。
加えて、8月31日・9月1日に東京で日弁連が主催する環境法サマースクールが開催されるのに合わせて、懇親会を開催した。
また、7月19〜21日には、若手弁護士・修習生8名で山口県上関において、JELF若手合宿を開催し、現地の方との交流を深めた。
更に、10月から11月にかけて全国各地(東京・名古屋・大阪)において、合格祝賀記念勉強会を実施した。
年末12月14日には、名古屋・大阪同日開催で、法科大学院生・修了生向けの答練も実施し、30名以上の学生が参加した。
選択科目廃止問題に関しては、JELFとして「司法試験選択科目制度の存続を求める意見書」を執行し、選択科目制度の存続を強く訴えた。
3 2014年活動目標
2014年度は、2013年度までに実施した環境法勉強会の結果を踏まえ、改めて環境法の勉強会を実施するなどしていきたい。具体的には、春の直前勉強会、夏のサマースクールに合わせた忘年会、JELF若手合宿の実施、年末の答練等を例年通り実施すると共に、論点表をよりコンパクトなものに要約していく作業を、プロジェクトチームを作って進めていく。
第4 JELFの組織・財政について
【組織財政】
1 2014年1月末時点での会員数は503名。
会費負担の大きさからの会費未納、退会が続いている
複数口を納入していただいた会員からも納入口数の削減の申し出が出ている
年会費1万2000円は高いとの指摘もある
2 決算について
弁護士会員の会費収入の推移
赤字決算に
3 予算について
@ 会費収入については、前年度の収入を前提とした
A 支出については可能な限り縮小した
B 前年度並みの会費収入を前提とすると、繰越金を使い切るような事態に陥る
4 組織拡大について
@ LS生、修習生会員の拡大を引き続き追求する
A 日弁連公害環境委員会、各単位会の公害環境委員会で中心的に活動している若手弁護士の中にJELF未入会者が多く取り残されており、各地の理事が働きかけをする
退会者に対して再度の働きかけを行う
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