2008年度 日本環境法律家連盟(JELF)小豆島総会

                   事務局長  籠橋隆明


1. 2007年度の活動

4/14   JELF総会 in 大阪
5/26   60期 実務修習生企画 in瀬戸(フェロシルト現場視察)
5/31-6/2 白神山地視察ツアー
6/23   環境サマーセミナー in 下北沢
10/5   JELF拡大理事会&森林シンポin 北海道
10/6-7  えりも伐採林の視察
10/26  修習生 大阪企画(環境派弁護士として生きる:村松弁)
10/27  修習生 東京&名古屋 同時開催企画 
        東京:ジュゴン訴訟(籠橋弁)

        名古屋:フェロシルト訴訟(村田弁)

2. 連盟の設立趣旨について 


   日本環境法律家連盟は法によって環境保護運動を進めていくという我が国でもユニークな立場に立つ環境NGOである。
   JELFのよって立つ理念は環境的正義である。環境問題は個人の尊厳を維持するために不可欠な人の環境が侵害される時に生じる社会問題である。そこでの解決の基準は個人の尊厳を基本にした憲法の理念でなければならない。同世代間あるいは未来世代間との公平、社会の持続性、自然界との共生の思想は全て個人の尊厳とその実現の課題として理解される。法の支配実現を任務とし、その実行力を持つ我々法律実務家は環境保護運動に取り組む必然性を持っているし、環境保護運動の最前線に立つ必然性を持っている。また、法の支配が社会的な少数派のために機能しなければならないことを考えれば私たち弁護士が在野の立場に立って市民運動とともに活動を進めていくことがきわめて重要である。

 

3. 公害訴訟


   大気汚染分野では川崎、西淀、尼崎、名古屋南部といくつかの事件が訴訟の勝利をふまえて、まちづくりなど市民の側からの都市設計の課題に取り組んでいる。基地裁判関係については新横田基地訴訟、新嘉手納爆音訴訟、普天爆音訴訟などが提訴されている。これらの問題点は被害を認定しながら差し止めに至らない現状や、米国を被告とした場合の主権免責の課題が存在している。

 

4. 廃棄物問題など


1) 廃棄津物処分場事件など
   循環型社会の流れが徐々に定着している。廃棄物処分場事件については広域化、公共工事化による廃棄物処分場が一応の完成を見たと言える。産業廃棄物処分場等についても管理強化の流れが進み,廃棄物処分場事件は大幅に減少しており,住民運動の戦いも難しくなっている。焼却場などの中間処理施設,最終処分場についても技術的な問題点,事業者のあり方の問題点,手続上の問題点が総括されるべきである。特に情報公開,アセスメントなど破棄物処分場などの政策についての考え方を弁護士としても明確にされなければならない。


2) 土壌汚染
  a) 土壌汚染については各地で問題になりつつある。廃棄物最終処分場後に住宅などが建設され,地下の廃棄物により汚水,悪臭,有毒ガスの発生,地盤沈下,資産価値の低下など問題になっている。これらについては処分場の閉鎖が古い時期に行われているため責任者が明確でなかったり,除斥期間,時効などの問題が生じている。関係者に対する責任の根拠も明確ではない。土壌汚染対策法の射程範囲も十分検討されているとは言えない。土壌汚染に対する取組は緊急の課題である。
  b) 廃棄物事業者による不法投棄があとを立たず、また,既存の廃棄物処分場の違法な運用も少なくない。不法行為に対する市民監視システムの充実が必要になっている。これらについての民事制裁制度などNGOの権限を強化する施策が必要である。


3) 有害化学物質汚染
   化学物質の汚染が地球規模で広がり、次世代や自然環境に対し、目に見える深刻な影響を与えつつある。多様で広範囲に及ぶ化学物質については全ての化学物質に対して科学知識があるわけではない。EUでは予防原則に基づいた政策が進められつつある。日JELFとしても化学物質対策を進めるNGOと連携して行動する必要がある。

 

5. 都市問題
   国立マンション事件判決により都市景観が国民の具体的利益となりうることが示された。こうした中,持続社会としての都市をいかに考えるかが重要な課題となっている。都市を商業、産業の中心部として機能するわけであるが、都市が市民の居住空間、生活空間として機能するための総合的政策や、コミュニティとしてのアイデンティティを確保できる政策が求められている。こうした市民を中心とした都市政策を実現する上で必要な都市政策決定過程に対する市民参加の課題はJELFがとりくべき課題として今後進めていく。

 

1) 自然環境問題

  a) 生態系の保全
    野生生物の保全はその生息区域の保護の問題でもある。森林,河川,湿地,海洋と様々な形で野生生物の生息区域が破壊されている。JELFではこれまで,北海道や沖縄県の森林破壊,利根川水系,木曽川水系などダム開発,諫早湾干拓,泡瀬干潟埋立事件など乱開発に反対してきた。自然生態系保全のためには自然の持つ国民的価値,自然保護団体の公共的役割などを見直し,政策決定過程への国民の参加,さらに個々の破壊を防止するための国民の権限が明らかにされなければならない。JELFでは自然保護訴訟を通じてこうさいた自然生態系保全に対する問題提起を続けていく。
  b) COP10
   2010年に生物多様性条約締約国会議,COP10が名古屋で開催されることが予定されている。2002年のCOP6(ハーグ)では、現在の生物多様性の損失速度を2010年までに顕著に減少させるという「2010年目標」が採択されているが,COP10はこの達成年当たる年である。こうした会議についてはNGOの参加が不可欠であり,NGOによって条約の前進,実効性が図られるといっても過言ではない。JELFとしてもCOP10に積極的に関与していく。

 

6. 地球温暖化問題


1) 地球温暖化(気候変動)を巡る情勢

温室効果ガスが大量に大気に排出されることにより、地球全体が温暖化し、気候システムは大きく変動している。この地球温暖化に伴い、局地的な異常気象が頻発し、氷河が溶け、海水面が上昇し、人間の生活環境や生物の生育環境に悪影響を及ぼしている。
世界の科学者の英知を結集したIPCC(気候変動政府間パネル)第3次評価報告書によれば、全地球の平均気温は20世紀中に約0.6℃上昇し、海水面は約10〜20cm上昇した。また、IPCC第4次評価報告書は、このような地球温暖化の原因が人為的活動であることはほぼ確実であるとし、2100年までに気温は2〜4.5℃上昇すると予測している。
こうした気候変動がもたらす負の効果は計り知れない。今日、地球温暖化問題は人類上げて取り組まなければならない重要課題となっている。

2) 地球温暖化問題に対する国際的取組みと日本の責務
地球温暖化防止対策は、気候変動枠組条約(1992年5月採択、1994年3月21日発行)と京都議定書(1997年12月採択、2005年2月16日発行)で設定された枠組みのもとで進められている。京都議定書ではこれまで大量の温室効果ガスを排出してきた先進国に対して2008〜2012年の間の排出量につき具体的な数値目標(先進国全体で5%)を定めた削減義務を負わせ、日本国は1990年比で6%削減する義務を負うこととなった。ところが、2005年の温室効果ガス排出量は1990年比で8.1%増加しており、このままでは、削減義務を達成することは到底不可能な状況となっている。

3) 我が国の地球温暖化問題に対する対策は地球温暖化対策推進法(2005年6月17日公布、翌2005年4月1日施行、以下「温対法」という。)の基に実施されている。温対法では温室効果ガスとして、二酸化炭素など6つの温室効果ガスを定め、その全てを対象にした取組を促している。既に我が国は工場・事業場を対象とした「エネルギーの使用の合理化に関する法律」(以下「省エネ法」という)が制定され、省エネルギー政策が実施されてきたが、同法も京都議定書発効に伴い改正されている。こうした地球温暖化問題に対して,キャップ&トレードによる排出規制が国際的流れであり,我が国だけがこれから取り残されようとしている情勢である。JELFでは気候ネットワークと共同して,キャップ&トレードを導入する新立法を目指して活動する。

4) 2003年CO2排出量の占める比率は、産業部門38%、エネルギー転換部門7%、運輸部門21%であり、その合計は66%を占め、企業の責任は大きいことがわかる。これに対して日本政府は自主的取り組みの奨励、誘導的な政策に終始し、直接的な規制を行っていない。これに対して、排出量の実効性ある規制が必要である。JELFとしては企業に対する直接規制を求めて公害調停などの法的手段などを考慮した運動を展開する。

 

7. 国際環境問題
1) 経済のグローバリゼーションの進展は多国籍企業による投資の自由を保障するものであることが明らかになっている。自由経済の名のもとの多国籍企業の活動の自由は国際的な貧富の格差を固定し、拡大するものである。環境問題は持続的社会の中で解決されなければならないものであるが、経済のグローバリゼーションは持続的経済を発展させようと言うローカルな努力を阻害するであろうし、途上国による自律した経済を作り上げる努力阻害することになる。ようと言う国際的な視点で見るならば貧困が途上国の環境を悪化させ、地球規模の環境的危機を引き起こしていることを考えれば、現在進行している経済のグローバリゼーションが地球環境に対し悪影響をもたらす危険性を持っていると言える。
   こうしたグローバリゼーションの流れに対し、個人の尊厳を価値観の中心に据えた国際的な市民運動が展開している。世界のあらゆる個人やコミュニティーが持続的な社会で平和で自由に生活できるよう求める運動が進められている。こうした社会は環境問題だけではなく、ジェンダーや貧困、少年問題などあらゆる国際的な人権活動の連携によって実現されるべきである。

2) 我が国では国際的事件として、コトパンジャンダム事件、沖縄ジュゴン訴訟がある。コトパンジャンダム事件は日本のODAによってインドネシアに建設されたダムによって多くの住民が劣悪な環境下に移住させられた事件でODAの貸し手側である日本国政府を相手に国賠請を提訴している。これは国際援助がそこに住む具体的個人の幸福のために行われるべきであるという原則を示す事件として重要である。また、沖縄県辺野古沖に建設予定の米軍基地に反対して、JELFは米国環境法律事務所、アースジャスティスと共同して行政訴訟を展開している。日米の弁護士が共同して環境を守る活動をする点で新しい展開を含んでいる。

3) 以上の認識の下にJELFでは国際的事件を支援するとともに、世界各地の法律家と相互に情報・意見を交換して連携をはかっていく。特にアジア・太平洋地域の環境派弁護士と連携をはかっていく。
   昨年度は青法協人権研究交流集会が実施され、ビルマ、フィリピン、インドネシアの法律家との交流にJELFとしても積極的に関わっていった。これらの交流方法についてインターネットによる国際会議、外国人活動家の招待などJELFは新しいノウハウを蓄積すると共に、これらの国の人権活動家との交流も進めることが出来た。
   今期は8月に日弁連、日本環境会議などが主催する日韓中環境事件交流会が実施される予定であるが、これに対して公害弁連、JELFも開催に向けて共同する方針である。これをきっかけに日本、韓国、中国、香港、台湾など東アジア圏での相互交流の機会を作り上げていく。

4) 具体的には次の通り。
  @ 中国,韓国の環境派弁護士との連携の強化。
  A アジア環境ジャーナルの発行

 
8. 環境コンプライアンス
1) 環境問題に対する注目度の上昇に伴い、企業コンプライアンスの課題として考えられなけばならないとされるようになりつつある。環境コンプライアンスの欠如が市民社会にとっても、企業自身にとっても大きな損失をもたらすことはこれまでの公害事件や廃棄物事件が物語っている。JELFにおいても、今年度は環境コンプライアンスの確率に向けて企業に対する啓蒙活動を実践していく。

2) 環境コンプライアンスは企業の自主的努力のみによって確立することはない。何らかの外部的統制が不可欠である。それは行政による統制もあるが、市民によって当精査されていくことが必要である。将来的政策課題として市民による環境的統制制度、例えば民事罰金制度や、市民による是正請求制度、企業情報の公開制度が確立していく必要がある。さらに、株主代表訴訟の活用も追及されるべきである。
   今期、フェロシルトをめぐる株主代表訴訟が提訴される予定であり、JELFの重要課題としてとりくんでいく。また、原発問題や欠陥商品問題など株主代表訴訟が活用できる範囲についての研究も不可欠である。

3) 海外進出企業と環境コンプライアンス
   日本の多くの企業がアジア地域を中心に企業進出を果たしている。とりわけ中国への進出は著しい。中国は現在深刻な環境問題に直面しており、今後統制が強化されると考えられる。企業にとっても中国を始としたアジア諸国進出に際しては環境コンプライアンスが確立することが不可欠である。JELFでこうした海外進出企業に対する啓蒙活動も推進していく。

 

9. 環境行政訴訟の課題 
1) 行政訴訟を取り組む意義
   現代社会では公共の意味は多様に存在する。NGOは在野の立場から公共的役割を担い活動する。JELFも在野の法律家による環境保護団体として環境問題を法的正義によって解決することをめざしている。実際、JELF会員を始めとした環境派弁護士は政府や自治体と対峙することで運動を前進させ我が国の多くの環境を守ってきた。
   しかしながら、我が国においてはNGOの公共的地位について明確な政策に欠ける。その中でもNGOの地位を強化するため政府や自治体の政策について誤りがある場合にそれを是正するための法的手段を創設、強化することが求められている。

2) 行政事件訴訟法をめぐる動き
  a) 原告適格をめぐる動きと課題
    特に新行政事件訴訟法施行以降、原告適格拡大の動きができている。小田急事件最高裁判決はアセスメント条例までも法的な利害関係判断に際しての考慮するべき法に加えていることを考えれば今後さらに原告適格の枠組みは拡大する可能性があると思われる。しかしながら,現状では生命身体の利益を中心に原告適格が考えられており,欧米に比較して必ずしも広いとは言えない状況である。今後、行政事件の課題は原告適格をいかに拡大させていくかは依然重要な課題である。特に団体訴権の導入は最も重要な課題である。

  b) 行政裁量をめぐる動き
    行政訴訟,住民訴訟,国賠訴訟について,行政裁量の壁が大きく立ちはだかっている。諫早湾干拓事業に伴う住民訴訟判決はその典型である。行政裁量の問題については行政事件訴訟法の改正など立法問題の外に,そもそも裁判官のあり方そのものが問われなければならない。判検交流の問題など改めて司法の行政よりの姿勢が問題にされなければならない。

 

10. 訴訟支援について
1) 無駄な公共工事による自然破壊があとを絶たない。昨年度までは、それを変えようと言う流れが定着しつつあると分析した。例えば永源寺ダム事件の勝訴判決は行政事件に関する一連の流れを印象づけるものであった。しかしながら訴訟の現状は依然きびしいものがると言わなければならない。

2) 環境訴訟の相互交流、相互支援
   全国的にみて重要とされる事件については、総会、理事会などにあわせた拡大弁護団会議あるいは当該事件をテーマにしたシンポジウム、集会などを実施して全国的な交流を進めて裁判の前進を勝ち取る必要がある。
   また、第1回弁論、最終弁論、証人尋問、検証など事件のおおきな節目に合わせた応援活動も求められる。昨年度については高尾山「自然の権利」訴訟の結審を迎えるに当たってJELFに対して応援弁論の要請があった応えられなかった。

3) テーマごとの訴訟交流
   また、ダム、道路、森林政策など重要事件をテーマに問題を提起し、交流を進めることも重要である。ダム開発は脱ダム宣言以来の流れがあったが、その流れの勢いは勢いを減少させている。しかし、八場ダム事件、設楽ダム事件などダムを反対運動もねばりづよく進められている。永源寺ダム事件や徳山ダム判決などいくつか重要判決があったが、その教訓は必ずしも交流されていない。こうした、テーマごとの弁護団の相互交流も進めていく必要がある。

4) 「自然の権利」基金
   「自然の権利」基金は訴訟支援のために市民が寄付などを行うための団体である。現在会員数は1200名を越え、年間400万円前後、自然保護関連訴訟のために資金援助を行っている。事実上、JELFが環境訴訟の情報センターとして訴訟を支援する、弁護団を呼びかけていく一方で、「自然の権利」基金がその資金を提供していくやりかがた事少しずつではあるが定着しつつある。例えば、泡瀬干潟訴訟は沖縄県の運動と「自然の権利」基金が相互に資金を提供して100万円以上の裁判費用を準備したし、基金からは毎年30万円から50万円の資金提供を可能とする体制ができている。今後、「自然の権利」基金との連携を強化し、環境訴訟を支援する体制を充実させていく。

 

11. 修習生
1) JELFでは、修習生のための企画を様々行っている。近年ほぼサイクルが確立してきた。
 @ 北海道、東京、名古屋、大阪、福岡に司法試験合格者のための企画を行う。
 A 前期修習の早い時期に修習生のためのシンポジウムを実施する。
 B 実務修習期に可能な限り各実務地において修習生企画を行う。

 C 後期始まった頃に修習生を対象とした環境セミナーを実施する。
   しかし、新司法試験制度が始まり、ロースクール学生出身者で修習生が構成されること。前期修習が無くなること、後期修習が短縮してプログラムが厳しくなり、修習以外の活動が困難になるだろうと見込まれることからこれまでと全く異なった制度が必要になる。
   ロースクール出身の修習生と、旧試験合格の修習生があり、修習が重なり合う結果修習生対策が難しくなっている。

2) しかしながら、修習生中に環境問題への関心は高い。特に環境法が司法試験科目になったことで全国ロースクールに環境法が設置される傾向にあり、環境法を学んだロースクール生は増加する傾向である。こうした実情を理解し、修習生対策について基本的な戦略、方式を確立していく。特に前期修習がなくることによって修習生の世代意識が希薄化して共同して社会的事件や社会問題に取り組む気風が同じく希薄化していくと予想されるためそれへの対処も必要である。

3) 全国的に修習生の就職難がある。環境問題の取り組みを志す修習生が増えているにもかかわらず、それに対する受け皿は不足している。JELFとしてはこうした環境問題を志す修習生の受け入れ事務所を拡大していくと共に、環境問題に関心の高い弁護士の独立支援活動を行う。

 

12. 法科大学院について
1) 法科大学院での連盟の課題は次の通りである。
   @ 環境的法律家の養成
   A 環境法分野の発展
   B 環境運動に対する法的アドボカシーセンターの実現

2) 上記の実現のために実施する活動は次の通り。
  @ 環境法教育プログラムについての発展
    現在、日弁連環境法部会を中心に教材を制作した。これを充実させて、各大学に影響力を持っていく。
    環境法教育のあり方についての学会のようなものを作り、教室での教育内容、教育j方法、とくに動機付けをどのように与えるかについての研究会を作っていく。
    資金については補助金などを獲得する方法を考える。
  A エクスターンシップ、インターンシップの活用
    法科大学院によっては、学生を法律事務所に派遣して法律実務を体験する機会を与えている。これは法曹への動機付け及び実務学習を目的とするものであるが、その際に環境事件と接する機会を確保することやあわせてJELFの紹介を行う必要がある。また、JELF自体、インターンシップなどを受け入れていくことが求められる。
  B ロークリニック、アドボカシーセンターへの展開
    法科大学院に付属して法律事務所を開設する大学がある。こうした事務所では一般事件の外に生きた事件を扱い、学生の法曹への動機付けを獲得することを目的とする。米国ではロークリニックが社会的事件を積極的に扱い、学生の教材としている例がある。同様に我が国の法科大学院においても、ロークリニックを設立して社会的事件、環境事件を取り上げる制度を作り上げる必要がある。

3) 環境法の司法試験科目化の課題
   環境法は新司法試験の選択科目となった。このことは環境法の発展にとって重要な一意味を持つが、一方で論点主義に陥ることで、環境法教育が本来目指すべき内容が湯気米良れる危険がある。これらの司法試験化した成果を維持しつつ、環境法律家への動機付けを与える教育の実現が求められる。JELFは司法試験化という新たな局面を前提に環境法教育のあり方を提案する。

4) 法科大学院での会員拡大の戦略
   会員を拡大して統一規格を実施して世代意識、帰属意識を作っていくことが必要である。法科大学院合格者がそのまま修習生会員となっていき、さらに弁護士会員となることをめざす。
  @ 宣伝方法
    ポスター、無料メールマガジンなどを通じて実施。環境事件情報、司法試験情報を伝えるとともに、当事者、現場を紹介できることをアピールして法科大学院に紹介してもらう。
  A 企画
   ・春、夏など院生の比較的余裕のある時期をねらって事件紹介を企画を実施する。
   ・事件企画を行う。
  B 法科大学院教員を通じた活動

 

13. 連盟大阪事務所

1) 大阪事務所のJELF内での位置づけについて
   2004年4月1日よりJELF大阪事務所が発足した。名古屋事務所と大阪事務所と機能分担するという関係が進んでいる。本来,大阪事務所では、@事件配転センター、A国際センター、B環境法教育の3分野を受け持って活動を進めることが目的としていたが,現在では名古屋,大坂がさらに有機的に連携して活動を進めている。現在,大坂が受け持っている作業は次の通り。
   @ 「環境と正義」,DTP
   A 地球温暖化プロジェクトへの参加
   B 沖縄ジュゴン「自然の権利」訴訟支援
   C 日韓中,環境派弁護士との交流
   D アジアジャーナルの発行
   E ロースクール生向け無料メールマガジンエコタマ発行

2) 大阪事務所の課題
   大阪事務所については,大阪の弁護士を中心に自主的に活動することが望ましい。そのために大阪事務所の予算を独立させている。今後,大阪の弁護士を中心に大阪事務所の活動のあり方が検討されるべきである。

 

14. 予算など

1) 決算の特徴
  a) 支出について
   @ 昨年度同様は経費節減を徹底し、一定の黒字を実現することができた。
    ・機関誌輸送費のコストの低減
    ・機関誌と各種通信を同封することで送料などの費用を削減した。
    ・「環境と正義」についても必要以上に発行しなかった。
   A シンポなどについては会計を独立させ、参加費を徴収した。
   B 修習生対策費について費用配分を見直し、活動を充実させている。
   C スタッフの活動に伴う費用が使われている。
  b) 収入について
    収入についてはグリーンズはE&J法律事務所の事務所後援会で、後援会費の一部がJELFに支払われている。名古屋E&J法律事務所からのこうした収入が無くなっている。事務委託費用はJELFの事務局が一部法律事務を行うことの費用である。本来の委託費用から言えば高めであるため、事実上E &J法律事務所がJELFの費用を持ち出す結果になっている。

2) 予算の特徴
  @ 収入について
   a) 会員増加を前提としないで予算を組んでいる。従って、増加分を繰り越しとして計上できる。
   b) 寄付金はないものとしてあつかった。
  @ 支出について
   a) 今期は名古屋E&J法律事務所からの援助はないものとして扱った。
   b) 現状では人件費分が赤字となっているが,繰越金より支出することとした。
   c) ボーナス分を計上しておらず,カンパでまかなう予定である。
   d) 大阪事務所費用を計上した。

 

15. 2008年度人事
1) 
代表理事:村田正人
副代表:藤原猛爾、菅野庄一
理 事:市川守弘、広田次男、嶋田久夫、薦田哲、中島嘉尚,野呂汎、原田彰好、籠橋隆明、樽井直樹、池田直樹、赤津加奈美、関根孝道、国宗直子、谷脇和仁、西田隆二、岡島実
監事:鷲見和人

2) 常任理事制度
   藤原、村田、池田、籠橋、あと大阪で少人数でインターネット会議を行う。