日本環境法律家連盟2003年度活動方針・活動報告

[トップページに戻る]2003.04.20更新


日本環境法律家連盟とは 

活動方針・活動報告

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2003年度活動方針                       2003年の活動報告<活動方針の下にあります>

 

連盟の設立趣旨について
 1) 環境的正義
   日本環境法律家連盟は設立当初から環境的正義を基本理念に活動を進めてきた。
   環境問題は個人の尊厳を維持するために不可欠な人の環境が侵害される時に生じる社会問題である。そこでの解決の基準は個人の尊厳を基本にした憲法の理念でなければならない。同世代間あるいは未来世代間との公平、社会の持続性、自然界との共生の思想は全て個人の尊厳とその実現の課題として理解される。法の支配実現を任務とし、その実行力を持つ我々法律実務家は環境保護運動に取り組む必然性を持っているし、環境保護運動の最前線に立つ必然性を持っている。また、法の支配が社会的な少数派のために機能しなければならないことを考えれば私たち弁護士が在野の立場に立って市民運動とともに活動を進めていくことがきわめて重要である。
   私たちは多くの市民、多くの弁護士の支持を得て活動するのであるが、会費及び募金は我々の環境的正義実現のための活動に対する対価として理解される必要があるしその目的に添って使われなければならない。
 2) 公害問題、原子力問題
   日本環境法律家連盟は自然保護問題を重要なテーマとして活動してきた。連盟の立場は自然保護を中心にその関連ある環境問題を取り扱っていこうというものであった。公害問題や原子力問題については連盟としてはこれまでそれほど重視してこなかったのが実情である。しかし、水俣病が不知火海の広範な自然破壊から始まったように現実にはその峻別 は不可能である。また、連盟では現実には公害問題や原子力問題も徐々に取り扱いつつあるし、多くの会員がそれらをテーマに活動を進めている。世界各国の法律家による環境NGOでは多様な環境問題を同時に扱っている。そこで、連盟も自然保護と他の問題はとりわけた区別 をすることなく扱っていっていく。

1.  裁判、行政などの新情勢と課題

 1) 訴訟などの事件
  現在各地で展開されている訴訟その他の事件は次の通り。
  @ 自然保護
     ダム:川辺川訴訟、諫早湾「自然の権利」訴訟、よみがえれ有明訴訟、苫田ダム訴訟、永源寺ダム訴訟、徳山ダム訴訟、相模大堰訴訟、
        八場ダム監査請求事件
     道路:やんばる訴訟、高尾山「自然の権利」訴訟、日高縦断道路事件、
    その他:中部国際空港事件、神戸空港事件、馬毛島「自然の権利」訴訟、泡瀬干潟埋め立て事業事件
  A 都市問題
     景観:国立市マンション事件、小田急線高架認可の取消請求訴訟、豊郷町住民訴訟、名古屋環状2号線事件、など
  B 有害廃棄物問題
     ガス化溶融炉事件、杉並病事件など

 2) 行政・裁判所をめぐる情勢
   国立市マンション事件、小田急高架事件、豊郷町事件、もんじゅ事件、ぽんぽん山ゴルフ場事件など行政に対してきびしい判決が相次いでいる。一連の判決の動きは決して個別 の裁判所の個性が生み出した特殊な事例と見るべきではない。例えばもんじゅ事件に示された原告適格の拡大の流れは都市計画法、森林法に関する新判例でも示されているように定着した流れになりつつある。
   こうした裁判所全体の流れはけっして大きいとは言えないが市民社会にふさわしい新しい流れができつつある。無駄 な公共工事による自然破壊に対する批判は国民的規模で広がっている。裁判所の一連の流れはこれらの社会情勢とは無関係ではない。
   今年度は熊本県川辺川ダム訴訟、岐阜県徳山ダム訴訟、有明訴訟仮処分が判決を間近にひかえ大きな山場を迎えている。日本環境法律家連盟としてはこれらの訴訟を支援し、さらに今日の公共事業政策を環境保護に向けた方向に転換させるべく行動することが求められている。
   この目的を達成するために、総会時においては諫早において有明海救済をテーマにシンポジウムを開催し、公共事業関連の弁護団交流会を実施する。

 3) 行政訴訟改正問題
   司法改革推進本部では行政訴訟検討会が設けられ行政事件訴訟法改正に向けて協議が重ねられている。第4回検討会では日弁連もヒヤリングを受けている。推進本部では総じて行政事件が市民にとって使い勝手の悪いものになっていることが批判されている。現時点で消費者問題については改善の方向は見られるものの環境問題分野については行政事件手続きの改革は及んでいないのが現状である。そこで、日本環境法律家連盟としては環境NGO、環境的市民が利用しやすい行政事件手続きを目指して活動を展開する。また、緊急に敗訴者負担制度への取り組みを行う(各弁護団から意見書を集約し4月中にアクセス検討会へ送付)。


2. 公共工事をめぐる問題点

 1) 公共事業に対する連盟の基本的政策をどうするか。
   公共事業に関する問題は次の点に集約される。
   @ 自然保護、文化財保護などの環境アセスメントが不十分であること。
   A 費用対効果のバランスが著しく崩れたものであること。
   B 市民参加が担保されていないこと

 2) 環境アセスメントの課題について
   環境アセスメントについては共通した問題点がいくつかある。
   @ 非科学的な事実調査
     調査期間、調査実施方法が不十分であるため当該開発予定地の実体が把握されず重要な種について欠落があったり、過小評価があること。
   A 非科学的な実体評価
     現地の野生生物などについて事実を過小に評価したり、開発による影響を過小に評価すること
   B 代替措置に対する過大な評価を行うこと。
   C 参加手続き、情報公開手続きの欠如

 3) 費用対効果の不均衡
   @ 費用対効果分析
     諫早干拓事業、徳山ダム開発、永源寺ダム開発に見られるように費用対効果 が著しく不均衡な開発が進められ多くの自然が失われている。費用便益に対するバランスが事実の問題として追及される必要がある。
   A 費用対効果の不均衡と違法性
     費用便益分析について永源寺ダム事件判決は事業者の裁量性を大幅に認めた。これをいかに打開するかが現在の課題である。費用便益に関する訴訟としては現在ヤンバル訴訟、徳山ダム訴訟、苫田ダム訴訟、諫早湾「自然の権利」訴訟、高尾山「自然の権利」訴訟があるがこれらの裁判情報を積極的に交流し、費用対効果 と違法性の関係、その立証手段について検討を進めていく。
   B 費用対効果不均衡追及の手段

 4) 人格権に基づく差し止めの課題について
   東京大気汚染訴訟については差し止めは認めなかったがこれまでの大気汚染訴訟の流れは人格権にと基づく差し止めを認めつつある。廃棄物最終処分場、焼却場などの一連の廃棄物処理場事件については人格権に基づいて差し止めを認めるはかり処分決定、判決があいついでいる。さらに国立市マンション事件は景観的利益などを認める画期的な判決であった。
   小田急事件、もんじゅ事件などは行政訴訟であるが、いずれも人格権的利益を根拠に原告適格を認め、その利益を守る必要があることから行政処分の取り消し、あるいは無効確認判決を行った。
   このように、人格権、環境権の権利としての確かさが増している状況にある。この分野の理論的検討及び裁判交流も進めていく。

3. 有害廃棄物汚染
   廃棄物問題ではガス化溶融炉対策が重要な課題となっている。全国各地で焼却場によるダイオキシン汚染などが問題になったことを受けて政府は中間処理場の広域化、公共化政策を打ち出した。ダイオキシン対策が徹底できるよう高度技術下の大型焼却場にて集中処理することによりダイオキシンなどの大気汚染対策を進めていこうとしている。ガス化溶融炉はこうした政府の政策にそって登場した「次世代炉」である。これについては従来の焼却場差し止め訴訟のようにダイオキシンの危険性を訴えるだけでは勝利が難しい状況にある。
   ガス化溶融炉は大量のゴミ発生を前提とする炉であるため、大量生産・大量 消費型社会に対応した焼却炉である。また、どの自治体も廃棄物処理場を大型公共工事としてとらえ、規模の大規模化のためにゴミ発生の将来予測を過大に行う傾向にある。加えて、利権とも関連して汚職、談合の問題が多く指摘されている。ガス化溶融炉についてはこうした問題に焦点を当てて戦いを進めていくことが重要である。
   日本環境法律家連盟は廃棄物処理問題についてもゴミ弁連と連携をはかりながら活動を進めていく。土壌汚染対策法をめぐる問題に関しても意識を高めていく。

4. 国際活動について

 1) 2002年度の連盟の取り組み
   @ 日韓共同セミナー(8月 公害弁連・グリーンコリア・JELF)
   A リオ+10(9月)ヨハネスブルグサミット
   B WTO問題
   C パプアニューギニアツアー(11月末-12月初旬)
   D カナダ先住民セクウェップムゥ サンピークス事件

 2) 情勢
   グローバリゼーションに対する途上国の危機意識からWTO政策は地域合意形成を重視せざる得なくなっている。WTOを実現するために地域的な経済統合を射程に入れた2国間投資協定が進められている。2002年11月のASEAN+3(日本、中国、韓国)では自由貿易協定を含む提携実現に向けた処置」を10年内に実現することが確認されている。
   国際的な視野で環境問題を見た場合貧困が環境破壊を招いていることは明らかである。地域の自治、途上国の自律なくして環境問題の解決はあり得ない。WTOに象徴される「自由化」の本質は多国籍企業の国際活動の自由であり、投資の自由である。国際的な自由化の流れは現実には途上国や途上国内の地域社会の自律的発展を阻害するものとなる。日本環境法律家連盟ではWTOに反対し、地域の自治、途上国の自律を原則とした持続的社会をめざす政策を支持していく。

 3) 連盟の方針
   連盟は国際的に連帯して多国籍企業などによる環境破壊に反対していく。とりわけ、日本企業による環境破壊に反対する。消費国として環境問題に責任を果 たせる国家の実現を目指す。
  @ 連盟大阪事務所を開設し、アジア・太平洋環境法律家センターを立ち上げる。
     対象例:日本、韓国、台湾、パプアニューギニア、インドネシア、マレーシア         その他東南アジア諸国、インド、中国(?)
     活動:電子メールを使った相互交流、電子メールによるアニュアルレポート。
        2004年度国際的集会など(補助金を利用するか)
  A 自由化問題に対する政策の立案
  B アジア・太平洋地域を中心とした法律家のネットワーク
  C 途上国の自然保護運動・環境保護運動に対する支援活動

5. 組織活動について
 1) 総論
   連盟の会員数は正会員が416人(発足時約160名)、修習生会員、一般の購読会員を数えれば558名(2003年2月19日現在)の会員となり、予算規模も年間867万円程度(繰越金100万円を入れる)にまで成長している。2003年度はさらに発展させるために地域の拠点を作ることと、会員の拡大が課題となる。
 2) 環境と正義
   発足以来機関紙「環境と正義」を発行し、専門的情報と環境訴訟情報の相互交流に役立ち、高く評価されている。2002年度には連盟は組織的な安定を得つつあると評価した。今期は「環境と正義」編集委員会を発足させ、専門家、活動家などを招いて「環境と正義」編集について意見をうかがっていく。
 3) 弁護士会員拡大について
   日弁連、単位弁護士会、弁護団を中心に会員拡大を推進する。今期目標を520名とする。
 4) 学者会員拡大について
   法科大学院が始まるに当たって、選択科目に環境法が含まれている各大学に対して購読を呼びかけていく。さらに、学生たちにも購読を求めていく。
   推薦状を取り付ける。
 5) 市民会員の拡大について
   環境的正義を守るNGOであることを宣伝して市民サポーターを作っていく。市民向けの会員証を作成してはどうか。連盟独自で集会、シンポをひらいたり、依頼関係のある団体に加入を呼びかける。
 6) 連盟大阪事務所について
   大阪に連盟の事務所を開設する。連盟の事務所では国際問題を扱うとともに、連盟の理論センターの役割を果 たす。大阪を中心に有志から資金を募り専従スタッフを雇っていく。

6. 人事
  理事長   藤原猛爾
  副理事長  菅野庄一、中島嘉尚
  理事    池田直樹、籠橋隆明、國宗直子、薦田哲、迫田登紀子、嶋田久夫、谷脇和仁、
        西田隆二、野呂汎、原田彰好、廣田次男、村田正人、渡邊正臣
  新理事   市川守弘
  
  監事    鷲見和人

 

 

 2003年活動報告

1/11     第3回全国事務局会議(名古屋)
1/25-26   「自然の権利」基金共催 
       『あらためて、「自然の権利」を考える』シンポジウム (東京)
2/1       理事会 (大阪)
3/22     学生対策『明日の法律家講座』(名古屋)
4/5-6     第8回 総 会+『よみがえれ有明!』シンポジウム+諫早湾現地視察 (長崎)
4/17     JELF機関誌編集会議 (東京)
7/18     第4回全国事務局会議 (東京)
7/19-20   第4回環境サマーセミナー (東京湾三番瀬)
7/26-31   ジュゴン裁判第1回サンフランシスコ・オークランドミーティング
8/29-30   理 事 会+第3回全国公共事業・ダム訴訟交流会 (近江八幡)
9/25           (現地時間)沖縄ジュゴンNHPA訴訟提訴 
11/23-27   ジュゴン裁判第2回サンフランシスコ・オークランドミーティング


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