2005 年 11 月 4 日
日本環境法律家連盟 (JELF)
理事長 弁護士 藤原猛爾
事務局長 弁護士 籠橋隆明
2005 年 10 月 29 日、日米安全保障協議委員会(2+2)において、辺野古浅瀬と大浦湾にまたがる区域に普天間代替施設を建設することで合意した。この代替施設計画は辺野古湾、大浦湾両海域の良好な自然破壊を招くばかりでなく地域社会に深刻な公害をもたらすものである。日本環境法律家連盟( JELF )は本件計画を直ちに撤回し、そもそもこの地域に代替施設をもちこむ計画そのものを放棄することを強く求めるものである。
また、代替施設建設のために公有水面埋立免許その他開発に必要な権限を沖縄県から取り上げ国の権限とする特別措置法を設ける計画であるとの報道がされている。これは地方自治を保障する憲法に違反するものであり、このような計画は断じて許すことはできない。
JELF は全国約 500 名の弁護士で構成される環境保護団体である。日米政府はSACO合意にて辺野古海域に普天間基地代替施設を建設することを計画していたが、この海域はジュゴンに象徴される自然度の高い環境であることから、 JELF はこれまで同海域における米軍基地建設の中止を求めてきた。沖縄のジュゴンは世界的には北限の個体群であり、現在では辺野古海域を中心に沖縄本島周辺にわずかに生息するのみとなり、極めて深刻な絶滅の危機にさらされている。沖縄のジュゴンは日本においては種の保存法、文化財保護法によって保護の対象となっている。また、国際的にみても保護の対象とするべきであることから米国においても米国種の保存法 ( Endangered Species Act : ESA )によって絶滅危惧種として保護され、米国文化財保護法 ( National Historic Preservation Act : NHPA ) でも保護されている。 IUCN (国際自然保護連合)は日本のジュゴン保護を勧告し、( 2000 年および 2004 年の世界自然保護会議)、 UNEP も 2002 年報告書でも沖縄近海におけるジュゴン保護の緊急性を指摘した。SACO合意に基づく米軍基地建設は沖縄のジュゴンの生息に対して重大な脅威を与えるものであるため、私たちは米国環境法律事務所アースジャスティス ( Earthjustice ) と共同して沖縄のジュゴン保護を求めて NHPA 根拠に米国連邦地方裁判所に提訴し、現在審理中である。
ところで、今回の2+2協議では日米両政府は新基地建設区域を辺野古海域リーフ上の区域から変更し、キャンプシュワブ基地内の敷地を中心に辺野古側、大浦湾側に延びる全長約 1800m (滑走路約 1600m )の基地をあてがうことで合意した。しかし、今回の計画は依然辺野古側リーフに埋立部分がさしかかるほか、これまで計画されてこなかった大浦湾側までも延長する内容となっている。既に我々が繰り返し指摘しているように辺野古側は沖縄ジュゴンにとって必要不可欠なえさ場である海草群落が豊かに展開している。一方、大浦側にもウミヒルモなどと貴重な海草の群落があるほか、沖縄独特の美しいサンゴ礁が存在する。目視例から言えば大浦湾はもっともよくジュゴンが目視される区域であり、それはジュゴンウォッチングが観光資源となるほどのものである。今回の合意案は IUCN 勧告に見られるような環境保護を求める内外の世論を考慮すれば到底許されないというべきである。 JELF は日米両政府対して直ちに本合意を撤回して、この区域に普天間代替施設を建設することを永遠に放棄することを求める。
米国政府はこれまで米国議会において望まれない地域には米軍は行かない旨繰り返し断言している。今回協議によって合意して新代替施設計画は地元名護市、沖縄県はもとより、広く名護市民、沖縄県民の反対するところである。地元は新計画を望んでいない。望まれない地域には米軍は駐留しないというのであれば、米軍は本件大隊施設に対して駐留してはならないのである。
ところで、日本政府は今回のプランに合わせて特別措置法を設け、環境影響評価法、公有水面埋立法、建築基準法など開発に関わる権限を沖縄県から国の権限に移すことがもくろまれている。地方分権の流れに基づき開発に関わる許認可も多くが地方の権限に移されてきたが、特別法でそれ奪うというのは地方分権の流れに真っ向から反するものである。憲法は地方自治の本旨に基づき地方自治体の自治権を認めているが特別措置法の存在は憲法が地方自治制度を定めている精神を踏みにじるもので到底許されるべきではない。また、沖縄県のそれも辺野古地域のみに当てはめる法律を作るというのであれば憲法 95 条の住民投票の要件が当然満たされなければならない。それを地方に権限を与えたのであれば開発は進まないと考えの基に特別法が考えられているとすればそれは憲法 95 条趣旨に反するものと言わなければならない。沖縄県は先の戦争で誤った国政策の犠牲となった。特別措置法は今また国家政策の犠牲を沖縄県民に求めるものであって、政府の意向は余りにも沖縄県民を侮った態度であると言わざる得ない。もし、日本政府がこのような特別法を検討しているならば、日本環境法律家連盟はこのような誤った政策には断固として反対するものである。
以上
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