災害と環境
1 環境の変化と災害の拡大
ゲリラ豪雨、地震、火山の噴火など自然災害のリスクが高まっています。災害そのものは避けられません。しかし、乱開発による土砂災害など、自然災害による被害を拡大する「人災」の火種が各地で目に付くようになってきています。
たとえば、奈良県五條市では、市道と農業用水路脇に、残土が山積みされ、雨が降るたびに泥水が流入し、土砂で水路が遮断されました。通学の高校生が残土の山を見上げてびくびくしながら市道を通行していました。
私たちは、地元の「いのちの水を守る会」からの委任を受けて、残土業者と五條市を相手取って、残土の撤去、市道の安全性確保、農業用水を保全するよう奈良地裁に仮処分を申請しました。同時に、森林法の許可なく行われた違法な残土処分場を放置している奈良県行政の是正を求めました(行政事件手続法36条の3による「処分等の求め」の手続)。残土の崩落や流出から、農業用水と通行の安全を守る活動を続けてきました。
宝塚市では、急斜面地に危険な二段擁壁の設置を許可した市の宅地開発の違法性を争い、裁判を提起しました。そこでは宝塚市に対して、斜面地の安全性を確保するための宅地造成法上の改善命令を、業者らに対しては斜面地の安全対策を求めました。
このように災害の防止においては、行政の姿勢がきわめて重要です。災害から命と暮らしを守るために、行政法を活用して監督行政の強化を目指しています。
「災害と環境」というテーマのもと、より安全・安心な社会を作る活動を広げてまいりますので、土木工学の専門家や技術者、そして人災の防止の活動をされているNPOや市民の方々とのネットワークづくりにご協力ください。
2 扱うテーマや事件
(1)急斜面地などでの危険な宅地開発への反対運動支援や訴訟を行います。
(2)建築基準法違反の違法建築の告発や行政への除却命令の要請等を行います。
(3)残土処分場の開設反対や既存の処分場からの残土の崩落や汚染の防止対策に取り組みます。
(4)採石場その他による森林の違法伐採や砂防法違反の調査(情報公開)や対策(行政権限の発動要請など)に取り組みます。
(5)道路、トンネル、河川堤防などの都市インフラの老朽化や未整備と安全性の確保について取り組みます。