1 化学物質の規制を求めて
最近、子どもの頃に比べて、野山を歩いても飛んでいる虫が少なくなった、そんな印象を持ったことはありませんか?レイチェル・カーソンが1960年代初頭に「鳥たちはどこへ行ってしまったのか。春が来たが、沈黙の春だった。」(『沈黙の春』)と予言した状況がいつの間にか徐々に身近に広まっているのです。ネオニコチノイド系農薬によると思われるミツバチの大量死が一時世界的にニュースになりましたが、化学物質による環境汚染は静かな時限爆弾として今も進行し、生物濃縮を通じて、私たちの食の安全をも脅かしています。
日本でも1990年代後半に、身近なゴミ焼却場起因のダイオキシン類など環境ホルモン(外因性内分泌かく乱化学物質)による環境汚染がマスメディアでも大きく取り上げられて社会問題化し、議員立法によるダイオキシン類対策特別措置法などにもつながりました。
しかしその後、「環境ホルモンから騒ぎ」などといった産業界側からの反撃もなされて、法的規制はほとんど進んでいません。逆にテレビでは大量の殺虫剤・殺菌剤の宣伝広告が垂れ流しにされています。また、カメムシ対策などのため、ネオニコチノイド系農薬の使用がそのまま続いています。
他方、その間に欧州連合(EU)では、農薬や家庭用品に使われる殺虫剤・殺菌剤に対する内分泌かく乱化学物質の規制が進められてきました。またアメリカでもネオニコチノイド系農薬の使用の制限が行われています。
虫や鳥たちの沈黙が私たちに警告を与えているとするなら、私たち法律家が市民や科学者とともに声を上げる必要があります。化学物質汚染による生物多様性の喪失を防ぎ、子どもたちの未来を守るため、化学物質の規制強化を求めていきます。
2 私たちにできること
(1)化学物質規制のための国会議員や政党への働きかけ(ロビーイング)
(2)化学物質過敏症についての調査や裁判
(3)職場での化学物質曝露による発がんについての労災申請や訴訟
(4)消費者団体との連携による化学物質に関する食品安全・適正な表示に関する規制強化の運動や訴訟