軍事基地にかかわる環境問題は、安全保障論議の「厚い壁」によって長年にわたって解決が阻まれている分野です。早くから被害の訴えがあった航空基地騒音については、1975年に小松基地について飛行差止訴訟が提訴されて以来、横田、厚木、嘉手納、普天間、岩国と相次いで提訴されました、しかし、被害は今この瞬間にも続いているのに、司法は何らこれを差し止める手段を認めていません。

 近年は、騒音以外にも米軍基地における環境汚染が次々と明らかになっています。基地内の廃棄物や航空機燃料などによる土壌汚染、水質汚染は深刻です。ところが、日米地位協定により基地内の管理権は全面的に米軍に委ねられているために、地元自治体が立入調査をすることも自由にできません。日米両政府は、2015年に環境補足協定を締結し、米軍による環境基準の遵守や自治体の立入などについて合意しましたが、実効性についてはまったく担保がありません。

 新たな米軍基地建設による環境破壊も重大です。沖縄では、極めて貴重な生態系を有しており、また絶滅危惧種のジュゴンが棲息している辺野古大浦湾を埋め立てて航空基地を建設する計画が進められています。また、その北に位置する東村高江地区周辺では、世界的にも稀少な亜熱帯照葉樹林であるやんばるの森にオスプレイパッドを建設して、騒音をはじめ新たな環境問題をひきおこしています。これらの建設計画の過程では、わが国の環境影響評価手続が極めて不十分であることも露呈しました。

 安全保障を口実とした貴重な自然環境の破壊をやめさせ、軍事基地に「法の支配」を及ぼし、自然環境と市民生活を守る取り組みが求められています。